都政新報
 
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検証・極秘会議 豊洲新市場土壌汚染(中)


▲高濃度の汚染物質が見つかった豊洲新市場予定地
  

専門家会議の提言にこだわり/遮水壁 もらい公害の懸念


gokuhi■第5回(10月29日)

 専門家会議の提言では、地下水を介して汚染物質を他の地区に移動させないために、遮水壁を街区周縁部と建物建設部の周囲に、不透水層の深さまで設置することになっている。その際、建物下では環境基準、建物以外では環境基準の10倍以下に浄化する。
 ところが、技術会議では、都側が豊洲新市場予定地の敷地全体で、地下水を環境基準以下とする方針を打ち出した。
 委員 今回、地下水はすべて環境基準以下にすることとなった。専門家会議の報告では、建物下に遮水壁を設置するとされているが、あまり意味がなくなったのではないか。
 都側 地下水は、すべて環境基準以下に浄化することを考えているので、建物と建物以外を分けるための遮水壁は必要ないと考えている。
 これにより、遮水壁は街区周縁部に限定。汚染された地下水を敷地内に閉じ込めるという遮水壁の役割は、大きく変わることになる。


■第7回(11月27日)
 市場予定地の敷地内で地下水の環境基準を達成すると、むしろ敷地外のほうが地下水の汚染度が高くなってしまう。
 専門家会議の提言では、東京ガス工場創業時の旧地盤面から2メートル下で地下水位を維持することになっており、敷地周辺部より地下水位が低くなる。このため、そのままでは周辺部から地下水が敷地内に流れ込む。
 委員 周辺の地下水位より低いAP+2メートル(旧地盤面から2メートル下)で管理すると、周辺からの「もらい公害」が考えられるのではないか。
 都側 周辺街区に遮水壁を設けて、水の出入りがないようにする。
 委員 地下水位を保つために揚水するということは、有楽町層を通した水位の上昇や遮水壁の漏れ等を想定しているのではないか。
 都側 ほとんどないと思う。
 委員 地下水を環境基準以下とすると、考え方を変えたことにより、周辺から水が入らないよう、水位はなるべく周辺と同じにしたほうがよいのではないか。
 委員 専門家会議の結論を尊重すると遮水壁は打たざるを得ないが、プラントエンジニアリング的に考えると、水位を上げておいて遮水壁を取り除いたほうが、地下水も浄化されており、自然循環もあるので、利用者側からすると気持ちがいい環境となるのではないか。
 都側 街区周縁を囲む遮水壁は、専門家会議の根幹である。この議論に踏み込むと、専門家会議の提言のレベルを達していないのではないかという批判を受けるのではないか。
 委員からは、周縁部の遮水壁の必要性に疑問を呈する意見が出たが、都側はあくまで、専門家会議の提言を確実に実現することにこだわった。この背景には、技術的な検証以前に、「遮水壁はいらない」という結論に対して、市場関係者や都民がどう受け止めるのかという懸念があったことが、会議録から読み取れる。



経費の安い工法
■第9回(12月25日)
 この会議では、技術会議が選定する技術・工法(案)が議論された。遮水壁については、護岸側で「ソイルセメントに遮水シートを組み合わせた遮水壁」、道路側で一般的な技術・工法と同じ鋼管矢板が採用された。
 委員 道路側と護岸側で遮水壁を変える理由は何か。
 都側 道路側は、新交通、道路構造物に与える影響が懸念されること、6・5メートル程度の自立が必要なことから、剛性の強い鋼管矢板を採用した。一方、護岸のほうはそれほど自立が必要ないので、経費の安いソイルセメントを採用している。
 護岸側に採用された遮水壁は、国内最大規模の新構造遮水壁だという。地下水位は、集中豪雨時に大量に水が流入してもAP+2メートル(旧地盤面から2メートル下)を維持できるよう、専門家会議の提言より20センチ下げた。
 こうして遮水壁は、敷地内の汚染物質を閉じ込める役割よりもむしろ、他の地区からの汚染された地下水の流入、「もらい公害」を防ぐ役割のほうが大きくなったのだ。


 

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