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【多摩】多摩地域ごみ実態調査「さらなる減量へ」


  家庭系ごみ 全市町村で減量

 東京市町村自治調査会は、2009年度の多摩地域ごみ実態調査をまとめた。総ごみ量は114万8410トンで、前年度に比べ3.9%(4万5373トン)の減。また、主に家庭から出る一人1日当たりのごみ量も、全市町村で減となり、平均2.7%(17.8グラム)減となった。景気低迷で消費活動が抑えられたなどの要因も考えられるが、多摩地域では00年度以降、減少を続けており、ごみ有料化や削減に向けた取り組みの成果が伺える。

 総ごみ量が最も少なかったのは小金井市(642.0グラム)だが、ごみの総量は、商業地や大規模事業所が立地する自治体が多くなる傾向がある。このため、各自治体のごみ減量に向けた取り組み効果が表れやすい家庭系ごみの収集量を比較した。この結果、多摩地域の30市町村すべてが前年度比で減となった。
 各自治体のごみ量を少ない順で見ると、上位4位までは前年度と変化がない。最も少なかった西東京市(570グラム)は、08年1月から有料化をスタートし、昨年度はリバウンドも懸念されたが、順位をキープした。しかし、担当課では「有料化導入時より削減幅が小さい。新たな取り組みを進めなければ、さらなる減量化は進まない」と受け止める。
 同市では、今年度も新たな取り組みとして、これまで可燃ごみで収集していた剪定枝や草、落ち葉などを無料収集するモデル事業を開始。また、生ごみの堆肥化を推進する中で、余った堆肥の無料引き取りも実施している。「コストをかけて減量化に向けた大きい事業を行うことは難しい。小さい施策を積み重ねて削減を図りたい」と話す。
 なお、西東京市は小規模事業所が排出するごみを家庭系ごみと別に収集しており、一緒に収集している他の自治体に比べると数値が少なくなる傾向がある。また、小規模事業所のごみは、武蔵野、三鷹、東大和、清瀬、武蔵村山、多摩、羽村の各市も排出量で収集の可否を判断しているが、これら7市は家庭のごみ量程度であれば収集している。この中で、最も少なかったのが多摩市だ。
 同市では、09年度に集団回収を拡大。07年度と比べ、100団体以上が新たに参加した。これにより、可燃ごみに出されていた古紙などが大幅に減った。ごみ対策課では「1団体は1千世帯以上参加するところもあり、影響は大きい」と話す。ほかにも、イベントや祭り会場へのリユース食器の貸し出しも行い、延べ2万7千点を貸し出した。
 引き続き、今年8月からは、ビールなどを6缶にパーッケージする「マルチパック」の回収を開始したほか、古紙を持ち込んでトイレットペーパーなどに交換する「古紙交換市」も実施している。 また今月からは、網製のごみ戸別回収容器の半額補助をスタート。これまで分別が徹底されないケースもあったが、ごみが見える容器にすることで「ご近所の目」も利用した分別の徹底を目指す。
 多摩市も有料化を08年4月から導入。ごみ対策課では「今のところ横ばいで減量しているが、今後は意識も薄れてくる。総合でも多摩地域で一番少なくなるよう取り組みを強めたい」と話す。
 前年度比で減量率が最も高かったのが東大和市。30市町村の平均が2.7%減となる中、7.1%(52.9グラム)の大幅減となった。ただ、同市は家庭ごみの有料化を導入しておらず、唯一、制度的に見直したのが、容器包装リサイクルに伴うごみ分別方法だ。08年度まで地区限定で実施していたが、昨年度から全市展開した。環境課では「見直しにあたり、地域への説明会を実施し、その中で発生抑制を訴えてきたことが一因では」と受け止める。
 また、同市が今後の課題に挙げるのが、10キロ未満まで家庭ごみとともに収集している事業系ごみの処理だ。同様に小規模事業所のごみを収集している他市は有料だが、同市は10キロ未満を無料回収している。ほかに事業系ごみが一部無料なのは東久留米市のみという状況で、扱いについて検討を進めているという。
 このほか、前回調査時には台風被害が重なり、ごみ減量率が0.8%に伸び悩んだ八王子市は今回、3.1%減と堅調な結果となった。「制度の見直し等はないが、台風被害の特殊要因がなくなったことや、日ごろから発生抑制を訴えていることなどが重なったのでは」と捉える。
 昨年度の調査で唯一、前年度比で増だった青梅市も、今回は2.6%の減となった。さらなる減量に向け、10月からは、ごみ袋を10リットル換算で現行の12円から15円に引き上げる一方で、容器包装リサイクルごみの処理手数料を引き下げる。また、家庭からの剪定枝を持ち込んだ場合は無料で処理する取り組みも行う。
 なお、あきる野市、日の出町、檜原村は、家庭系ごみと事業系ごみの区別がないため、一人当たりのごみ量が多くなった。


有料化導入は21市町

 家庭系ごみの減量を進める上で、最も効果が見込めるのが有料化だ。昨年10月に三鷹市、今年2月には府中市が導入し、30市町村のうち3分の2以上の21市町が導入している。家庭系ごみを中心とした1人1日あたりの収集ごみ量が少ない上位10市では、8市が有料化を導入している。
 対前年度比のごみ削減率が30市町村で2番目に高かった三鷹市(4.6%減)は、調査期間で有料回収を行った期間は半年間だったが、その効果が顕著に表れた。ごみ対策課では「この間の対前年度比のごみ量をみると、平均で13.7%の減となり、今年度の調査ではさらに減量となる」と見通しを示す。
 一方で、今後は有料化の1~2年後に減量意識が薄れるリバウンドも課題となる。三鷹市では「市民委員とともに、年に4~5回ほど、ごみ減量のキャンペーンを行っている。今後も駅頭での周知活動など減量に向けたPRを続けていく」と話す。
 同じく昨年度から有料化をスタートした府中市は、調査対象期間が2カ月間のみとなり、削減率は0.5%と30市町村で最も少ない率となった。府中市のごみ減量推進課は「有料化がはじまる直前には、通常の4~5倍の量が出されたことなども影響した」と話す。
 ただ、2月以降は毎月のごみ量が、前年同月比で平均25%減となっており、通年で大幅減になるのは間違いない。同課では「処理手数料が高いこともあり、リバウンドは今のところ見られない。これまで『出口』のリサイクル率はトップで、ごみを出す『入り口』の有料化により、ごみ減量は大幅に進むだろう」と自信を示す。
 有料化を導入する自治体のうち、唯一の定額制をとるが奥多摩町だ。1人1日当たりのごみ量は740.4グラムで、有料化している自治体の中では、あきる野市(804.9グラム)に次いで2番目に多い。事業系ごみを含めた総ごみ量は1037グラムと30市町村で最も多い。
 多摩地域で最も古い1955年から有料化を導入しているが、定額制の料金設定では、月平均100キログラム以下で月500円の均一料金となり、削減へのインセンティブが働かないことも考えられる。奥多摩町では、「年々減少はしているが、多摩地域では多い。観光客のごみなどもあるなど理由は定かではないが、そうした定額制の要素もあるかもしれない」と話す。
 ただ、奥多摩町の場合、山間部で収集車が家の前まで行けないケースもあり、収集はステーション方式をとるため、有料ごみ袋方式などの定量制では、確実な料金徴収が可能かの懸念も残る。「世帯者数の違いが料金に反映されないなどの課題意識はあり、収集方法なども含めて検討は必要」と話す。
 なお、ごみ処理手数料が無料の市町村で、1人1日当たりのごみ量が最も少なかったのは立川市(610グラム)で、全体では8位となったが、小規模事業所のごみは家庭ごみと別に収集しており、事業系ごみを加えた総ごみ量は27位(882.6グラム)となる。
    ◆
 家庭系、事業系を含む総ごみ量を1日1人当たりの排出量に換算すると、全国は1033グラム、都区部は1126グラムに対し、多摩地域は858グラムと最も少ない。ごみを出す入り口部分について、住民の意識は高い。
 一方で、ごみの出口部分も、紙・布類やアルミ缶、ガラス類などをリサイクルする資源化率が、全国平均で32.0%に対し、36.9%と高い。さらに焼却灰などの最終処分量も、06年度にエコセメント化施設が稼働したことにより、稼働前の05年度(10万7416トン)に比べ、09年度は7265トンと、実に93%減となった。地域として最先端のごみ削減策に取り組んでいると言っても過言ではないだろう。
 反面、多摩地域では多くのごみ問題を抱えているのも事実だ。各団体のごみ焼却施設が更新期を迎え、建て替え問題が浮上する一方で、住民らの強い建設反対運動が起こる小金井市の新施設建設問題など、建て替えや建設自体が難しい状況にある。さらに、処分量は激減したものの、最終処分場の容量が限られる中、さらなる減量化・リサイクル化の向上が求められている。
 さらなる減量化のため、どう次の一手を打つか。日本のごみ減量をけん引するリーディングエリアとして、多摩地域の取り組みが注目されている。


 

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