都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
都議選 ゲームチェンジャー 第2部~激戦区を行く(6)/知事のおひざ元/勝敗が求心力の分かれ目に


  2016年、自民党を離れ、小池知事を誕生させる原動力となった練馬・豊島区議(当時)ら「7人の侍」。このうち3人の都議が今、正念場を迎えている。両区は小池知事が衆院議員時代に地盤としていた東京10区の一角で、いわば「おひざ元」だ。このうち練馬区は前回から1増の定数7となったが、現時点で少なくとも11人が立候補を表明し、決して楽な選挙区ではない。
 特に票の「草刈り場」になっているのが、大泉学園や石神井公園などの駅が立地する区西部だ。都民ファは村松一希(40)と尾島紘平(32)の現職2人を公認しているが、このうち村松が区西部の東大泉を拠点とし、緑色のハチマキ姿で毎朝の駅頭に立ち、4年間の実績を訴える。「厳しい情勢だが、支持を広げていきたい」と語る。
 一方、自民は現職の柴崎幹男(65)と元職の山加朱美(67)に加え、新人で区議6期の小川佳子(53)を公認。3人は地域を割って活動しているものの、「完全に区割りができているわけではない」との指摘もあり、候補者の一人は「区西部に活動を広げている」と明かす。
 競り合いに拍車をかけているのが、地元選出の衆院議員・菅原一秀による公選法違反容疑だ。「区民から厳しいお叱りを受けている」と各陣営の危機感は強い。
 同区では現職の公明・小林健二(51)、共産・戸谷英津子(57)、立民・藤井智教(45)に加え、区議5期の池尻成二(66)が立民の推薦を得て参戦。維新は新人の若旅啓太(31)が区西部の駅頭やポスティングに注力し、票の奪い合いが熾烈(しれつ)になっている。
 同じく知事のおひざ元の豊島区(定数3)も、都民ファが落とせない選挙区だ。知事を就任前から支え、現在は党の選対本部長を務める本橋弘隆(59)が立つ。
 同区は区議が都内最多の6人で、体制が充実している稀有(けう)な選挙区だ。それでも区議の里中郁男の表情は険しい。本橋は区議7期を経験し、前回トップ当選とは言え、今回は「風」に期待できないからだ。
 「支持を区内全域に浸透させる必要がある。牙城を失うわけにはいかない」と里中。同区では自民元職の堀宏道(56)が捲(けん)土重(どちょう)来(らい)に向けて活動を増やしており、公明の長橋桂一(64)、共産の米倉春奈(33)が議席の堅守を視野に入れている。
 また、都民ファは衆院東京10区に入っている中野区(定数3)には知事の最側近で党代表を務める現職の荒木千陽(39)が出馬を予定し、自民の出井良輔(48)、公明の高倉良生(64)、西澤圭太(41)との間で「少数激戦」が見込まれる。同じく新宿区では、小池知事の秘書(衆院議員時代)を経験した現職が自民、公明、共産、立民、維新の候補と競り合う構図だ。
 東京10区ではかねて、「小池知事が将来の国政進出をにらみ、自分を支える都議を据えている」と言われ、都民ファにとっては「ホーム」で議席を守れるか、正念場となる。
   □   □
 他方、都民ファと自民が対決する象徴的な選挙区でありながら、共に候補の選定が遅れたのが千代田区(定数1)だ。
 自民が新人で区議の内田直之(57)に公認を出したのは5月中旬になってから。1月の区長選では直之の義父で、前都連幹事長の内田茂が公然と造反。都民ファに敗れたことが尾を引いて、支部レベルで選定が難航していた。
 直之は取材に「出遅れた感じはある」と認めつつ、区長選では誹謗(ひぼう)中傷や怪文書が飛び交ったことを念頭に、「今回は正々堂々、きれいな選挙をしたい」と強調。ただ、選考の過程で支部長が辞任するなど、立て直しが急務となる。
 これに対し、都民ファは5月31日、板橋区で公認を出していた現職、平慶翔(33)が「国替え」して出馬する方針を明らかにした。小池知事との2連ポスターも張り出しており、本人は会見で「使命感で国替えを決めた」と話した。出遅れた2人に、共産の冨田直樹(45)が絡む構図だ。
 今回の都議選では240人超が出馬する見通し。都民ファなどに一部、未公認の選挙区があるが、大枠は固まりつつある。小池知事のおひざ元や都心の1人区で都民ファが議席を守れるか否かは、各党の勝敗を左右するだけでなく、選挙後の小池知事の求心力を推し量るバロメーターにもなる。
 =第2部おわり。第3部では、各党の選対幹部に戦略や争点を聞きます。
 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針