都政新報
 
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都議選 ゲームチェンジャー 第2部~激戦区を行く(5)/新旧交代/バトンタッチに試行錯誤


  20日、京急糀谷駅付近の事務所。自民都議の神林茂と元職の山森寛之(42)、区議5人が机を囲んでいた。毎月恒例の選対の意見交換会で、この日の議題はコロナ禍での選挙対策。神林の後継となった山森が地盤を引き継ぐため、支援者を回る計画を立てていた。
 山森は衆院議員の平将明の秘書を経て16年の補選で初当選。前回の選挙では票の食い合いを避けるため立候補を見送り、今回、神林の後継として公認が決まった。
 「山森は元都議とはいえ新人同様。厳しい選挙になる」。神林は後援会のあいさつ回りに同行する度、「浸透していないことを実感する」という。
 大田区は今回、定数是正で1減の7人区となったが、自民は3人の候補を堅持し、山森のほか、現職の鈴木章浩(58)と鈴木晶雅(63)を公認した。3人は地域を明確に分け、山森は神林を引き継いで蒲田を担当。鈴木章は田園調布に加え、区議時代からの新井宿を、鈴木晶は大森を中心に活動する。
 このうち、蒲田は人口約30万人と区人口の4割を占める大票田だ。区議15人を均等に分け、5人ずつがそれぞれ応援に回るが、区議団幹部は「蒲田を山森に継ぐことで、知名度不足を補いたい」と解説する。
 ただ、党として地域割りを決定したとはいえ、蒲田では両鈴木のポスターも目に付く。山森の陣営は「3人で切磋琢磨(せっさたくま)することになる」としつつ、「(両鈴木が)蒲田に食い込んで来ている印象だ」と票の食い合いを認める。
 自民は前回の選挙で神林と鈴木章が2万1千票超を獲得して当選。しかし鈴木晶は1万9千票で次点と、「小池旋風」に押し出される形で涙をのんだ。鈴木晶は補選で復活したとはいえ、同陣営の危機感は強い。山森にとっては蒲田での票固めとともに、浮動票の上積みも欠かせない。
 同区では公明にも世代交代の波が押し寄せており、藤井一と遠藤守の後継として区議の勝亦聡(58)と玉川英俊(52)の新人2人を擁立。藤井は今期限りで引退する立場だが、今も地道に自身の支援者を回り、後継の勝亦のチラシを配る。企業の朝礼にも勝亦と参加するなど、新人の顔の売り込みに余念がない。
 とは言え、コロナ禍で長時間の駅頭演説に制約が出ているのが実情で、「緊急事態宣言中なので、長時間の駅頭は控え、短時間の演説を多くの場所で行うようにしている」(関係者)と苦労がにじむ。
 同区ではこのほか、都民ファの森愛(44)と奥本有里(44)、共産の藤田綾子(46)、立民の齊藤里恵(37)、維新の松田龍典(34)、国民の岡高志(45)らが戦線に絡み、浮動票の争奪戦は激しさを増している。
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 江戸川区でも公明と共産が新旧交代を図っている。
 公明は現職4期目の上野和彦の勇退により、区議の竹平智春(55)を後継に据えた。昨年7月の公認発表以降、上野とともに支援者を回り、上野が注力してきた水害対策などの政策も共有。昨年のうちに政策と人脈の引き継ぎを済ませたという。
 それでも、新人にとっては支援者に顔と名前を覚えてもらうのが「第一関門」。支援者回りでも、コロナの感染防止のために玄関先で短時間のあいさつを終えたケースも多いという。SNSでの情報発信も試みるが、区議の一人は「確実に支援を得るためには、直接話さないと熱が伝わらない」。支援者回りを2~3巡重ねることも検討する。
 一方、共産も現職で4期務めたベテランの河野百合恵が引退し、同事務所長を務めていた原純子(56)が後継に。ただ、知名度は河野に及ばず、区内全域での浸透に力を注ぐ。 
 同区ではその他、自民が現職の宇田川聡史(56)と新人の大西洋平(43)と地盤が厚い2候補を公認。さらに都民ファで民主系の支持層を持つ田之上郁子(50)、「反小池」で舌鋒鋭い諸派の上田令子(56)、立民の区議でインド出身のよぎ(44)も出馬を予定し、予断を許さない展開となっている。
 

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