都政新報
 
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都議選 ゲームチェンジャー 第2部~激戦区を行く(4) /新人の葛藤/コロナ禍、ゼロから再出発


  5月中旬、町田市内の住宅街。小池知事の顔写真を大きく配した宣伝カーを、都民ファの現職・藤井晃(39)が走らせていた。府中市選出の1期生だが、昨秋、奥澤高広(39)の離党に伴って空白区となった町田市への国替えを党から打診され承諾したのだった。
 「小池旋風」により府中市で2議席を独占した前回とは一転、無風の選挙が想定され、党として国替えは共倒れを避ける戦略と言える。ただ、藤井にとっては地縁も引き継ぐ地盤もなく、「新人同然」のリスタート。IT企業に勤めた経験から「デジタル都議」を自負する藤井が今、取り組みたいのがアナログな選挙活動という。
 思い起こすのは2016年の都知事選だ。商業施設前で行った小池氏の演説会に選挙スタッフとして入り、歩道を埋め尽くした支援者らの熱気を直に感じた。しかし今は候補者自ら「3密」を作るわけにはいかず、「集会を開いて知事にも応援に入ってほしいが……」と表情は複雑だ。
 町田市では定数4に対し、現時点で9人が立候補を表明。新人4人を含め、地盤が強固でない候補も多く、浸透が急務だ。
 現職の奥澤は前回、落下傘ながらトップ当選を果たしたが、今回は無所属で再出発。現在は支援者を回ってコロナ関係の相談に乗り、高齢者のワクチン接種予約を手伝うことも。元都民ファの市議ら3人が応援に入り、政党の看板がない中で活動量が問われる正念場となる。
 また、自民はベテランの吉原修の引退に伴って、市議の星大輔(40)と松岡みゆき(59)の新人2人を擁立した。星は吉原とともに支持者を回るほか、元Jリーガーで地元チームに所属していた経歴から、「個人的なサポーターも組織され、プラスアルファの得票が期待できる」と町田総支部も太鼓判を押す。松岡も市議の経験を生かし、支持拡大を図る。
 ただ、コロナ禍で戦略に支障も出ている。同党は5月末、地元の総会で2人をお披露目する予定だったが、緊急事態宣言の発令で中止に。陣営は「ゼロどころか、マイナスからのスタート」と手応えをつかみかねている。
 「猛烈、激烈、鈴木烈です」─立民の新人・鈴木烈(47)も街頭では名前の売り込みに躍起だ。同市が定数3だった時代は自・公・民で議席を分け合うことが多かったが、前回は小池旋風に押し出された。「党の支持はあっても、自分の名前が知られていない」と知名度アップに余念がない。
 同市では、公明の小磯善彦(66)と共産の池川友一(36)がそれぞれ議席の堅守を視野に入れ、元職の今村路加(52)、市議の吉田勉(73)も絡む厳しい選挙区となる。
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 北区(定数3)でも新人は手探りだ。同区は自民の山田加奈子(50)、公明の大松成(60)、共産の曽根肇(69)の現職3人に、都民ファの林元真季(25)と維新の佐藤古都(33)の新人2人が挑む構図となる。
 都民ファは昨年の補選で大敗した元宝塚歌劇団員の天風いぶきから、公募で選んだ林元にスイッチした。林元は駅頭やSNSで新型コロナの経済支援策を案内するなどして認知度アップを狙う。ボランティアには同世代も参加し、「支援の輪が日に日に広がっている」と語る。
 一方、維新の佐藤は政策レポートとともに住民の関心が高いワクチンの情報をセットで配布。「コールセンターがつながらず、ネットを使えない高齢者も多い。お手伝いができれば」と手応えを感じているという。
 昨年の補選で約3万4千票を獲得して善戦。事務所は参院議員の音喜多駿と共同で、支持層も重なることから、他の維新候補に比べれば発射台は高い。それでも他党のように強固な組織を持つわけではない。
 同区では立民が共産との食い合いを回避する一方、自公は競合する形になる。既存政党の間隙を突くことができるのか─コロナ禍は新人に試練を課している。
 

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