都政新報
 
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都議選 ゲームチェンジャー 第2部~激戦区を行く(1)/第1党の試練/共存なるか、共倒れか/都民ファ、定数2で複数擁立も


  3度目の緊急事態宣言が発令される前日の4月24日、閑散とした台東区浅草を歩く都議の姿があった。都民ファーストの会の中山寛進(49)だ。仲見世に連なる店舗を一軒ずつ回り、休業要請の内容を説明した。
 中山義活元衆院議員の長男で、自身も旧民主出身。7月の都議選で立候補を予定するが、地元の集会は緊急事態宣言で中止になった。駅頭・辻立ちは「3密」を避けるために控え、支持者らを回る活動に注力しているという。
 前回は無所属で出馬し、都民ファと公明から推薦を受けたが、今回は正式な公認。「小池知事との連携を全面的にアピールしていきたい」と意気込む。
 同区の定数は2。しかし、都民ファはもう一人、上野を地盤とする保坂真宏(47)も公認し、2議席独占を狙う。
 保坂は前回、「小池旋風」に乗って約3万票をたたき出した。自民党の保坂三蔵元参院議員の長男で、支援者の多くは先代からの自民党員。それだけに上野方面では都民ファの「緑」と自民の「赤・青」の2枚のポスターを張る家も目に付く。
 選挙体制は前回と変わらないが、今回は自民が引き締めを図っていることから、無党派層にインパクトを残すためSNSでの活動にも力を入れ、浅草の町会活動に顔を出すなど、支持層を広げようと懸命だ。事務局長を務める父・三蔵は「4年間、都民ファの一枚看板で活動してきたことが吉と出るか、凶と出るか。逆風は吹いていない」と手応えを話す。
 ただ、地域をすみ分けているとはいえ、同士打ちのリスクも高い。同会で前回の選挙を取り仕切った元幹部は、「定数2の選挙区では2人のうち1人を首長選に転出させることを視野に戦略を描いていた」が、今回はそうした差配ができる人材は見当たらない。同会には「前回のような小池ブームは起きていないのに、調整をせずに大丈夫か」と心配する声も上がる。
 一方、自民が公認したのは、区議の鈴木純(39)。父は区議を5期務めた故・鈴木昭司で、個人的なつながりは中山、保坂ともある。しかし、選挙となれば話は別だ。「父も(保坂)三蔵さんにかわいがってもらった。でも今回は同じ土俵で戦いたい。前回、途切れた都政とのパイプをつなぎ直したい」
 また、共産党は都民ファ・自民・公明と対決するスタンスで、小柳茂(48)が「44年ぶりの議席復活」を目指す。保守的な地盤で、先代からの強固な組織を持つ3人にどこまで食い込めるかが勝敗を分ける。
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 都議選では、定数1~8まで多様な選挙区があるが、第1党を狙う上では1~2人区の「直接対決」を落とせない。過去の例を見ても、これらの選挙区を制した政党が、結果的に都議会で第1党を奪っている。
 最近で言えば、2009年は旧民主が自公を過半数割れに追い込み、13年は自民が全員当選で返り咲いた。17年は都民ファが「小池旋風」で第1党を奪取したが、いずれもこれらの選挙区を制している。
 定数2では過去、自民と民主系が議席を分け合うケースが多かったが、都民ファが大勝した17年は、台東と渋谷で民主系を推薦する形で抱き込み、2人を当選させている。これが結果的に自民に大差を付ける勝因となった。
 定数1も全体の勝敗を左右するポイントだ。千代田区は自民の重鎮・内田茂が長年、議席を守ってきたが、09年は旧民主の栗下善行(現立民)がこれを破り、17年は都民ファの樋口高顕(現千代田区長)が自民の新人に大勝した。中央や武蔵野、小金井でも、09年は旧民主、13年は自民、17年は都民ファが勝利している。
 ただ、千代田では1月の区長選の混迷も尾を引いて、都民ファと自民がいずれも候補を確定できていないなど、「お家騒動」による出遅れも目に付く。
 また、第1党を目指すには、定数4で複数の候補を当選させることも命題となる。例えば、品川区は09年、13年、17年に旧民主、自民、都民ファが2人ずつ当選。同一党派の候補が競り合いながら党勢を拡大してきた経緯がある。
 ただ、今回は新宿と江東、品川、葛飾を見ると、都民ファの公認は現職1人であるのに対し、自民は2人だ。菅政権の不人気で「逆風」の状態にあるにもかかわらず、党都連は定数3の目黒と墨田でも2人を立て、強気の姿勢を崩していない。地元では共倒れを危惧する声も強まっている。
 第1党を死守したい都民ファと奪還を目指す自民、いずれも決め手を欠いたまま、告示を迎えようとしている。
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 任期満了に伴う都議選(6月25日告示、7月4日投開票)まであと50日余りとなった。現時点で200人超が立候補を予定。都民ファと自民が第1党の座を巡って激突し、どの勢力と連携して過半数を制するかが焦点となる。「第2部」では激戦区の戦いに焦点を当てる(文中敬称略)。
 

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