都政新報
 
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2021都議選 ゲームチェンジャー 第1部・新旧交代の帰趨(7)/議会の権能/都政の検証は果たせたか


   議会運営委員会の空転に、一部会派が欠席した中での予算特別委員会と財政委員会での議事進行─。2019年の都議会1定は「当たり年」だった。今期の都議会を振り返ると、議事の入り口でつまずくケースが多かった。
 火種となったのは、市場移転延期の判断や再開発を含めた一連の対応だ。小池知事は17年の都議選直前、「築地は守る、豊洲を生かす」と発言。「食のテーマパーク構想」も打ち出した。当時、移転か再整備かで業界を含めた世論が割れていた時期だけに、両側に都合のいい宣伝文句となった。
 小池知事は「都心に近く、さまざまなポテンシャルを有する築地ということで、この両方を生かすことによって、東京全体の価値を高めていくということを申し上げた」などと説明したが、翻弄された関係者は多い。
 自民党などは知事の委員会出席を求めたが、当時は都民ファーストの会と公明党が組んで小池知事を支えていた時期。都議会では一部会派だけで議事を進め、6会派が議長らに「正常な運営」を要請する異例の展開となった。
 旧民主党が第1党だった09年、都議会で冒頭の臨時会が流会したことがある。民主や共産など一部会派の66人だけで招集請求したことに自公が反発。最終的に127人全員で請求し直したのだった。
 この時に意味を持ったのが、議会運営委員会の「申し合わせ」だった。本会議は過半数の出席があれば成立するが、議事日程を決める議会運営委員会はあくまで全会派の出席が前提。大会派が数で押し切るのではなく、協議を尽くせるように─という先人の知恵でもあった。
 しかし今期はやすやすとこの慣例が破られ、与野党が小競り合いを続けたまま議事に突入、議会運営に禍根を残した。
■イエスマン
 「知事のイエスマンが多数派を占めるため、議会としてのチェック機能が十分働くか疑問」「都民ファ=知事であり、議会と執行機関のチェックが働かない」─。本紙が19年に行った職員アンケートで今期の議会について尋ねたところ、少なからぬ職員がこうした問題意識を持っていた。
 一方、都民ファ幹部は取材に「同じ方向を向いているわけだから、最後まで対立することはない」とした上で、「皆さんが思う以上に、内々には相当、(知事側に)厳しく要求している」と明かす。
 最大の要求事項の一つが、飲食店の休業・時短要請に応じた協力金だ。「最初にやるときは、小池知事も財政当局も、『こんなことをやっていいのか』という感じだった」と振り返る。昨年の休業要請緩和に向けた「ロードマップ」の策定では、都民ファ内には知事側近を批判しながら内容に注文を付ける都議もいた。
 同会と小池知事との関係を見ると、会派全体としては新人が多数を占め、知事に直言できるほどの都議はごく少数だ。小池知事は現在も同会の特別顧問を務めているが、会派内には選挙をにらんで代表復帰を熱望する声もあるほどで、パワーバランスの偏りは否めない。
■言いっ放し
 都議会は今期、行政の監視という権能を発揮することができたのか。
 小池都政の初期には、都政改革本部が意思決定を左右したが、その総括も道半ばだ。例えば、上山信一慶大教授を始めとする顧問団は五輪の競技会場変更や入札契約制度の改正を提言したが、現場は大きく混乱した。都は18年度、特別顧問らを退任させ、都職員が主体となって改革を進める体制に戻したものの、議会は初期の「言いっ放し」を検証できぬまま今日に至る。
 また、都立・公社病院の独立行政法人化も論点になったが、公社を含めた一体的な経営形態の変更に向けた現場の課題を詰め切れているとは言い難い。
 各会派間が激しく対立し、議事が暗礁に乗り上げることも多かった今期の都議会。しかし改選後はコロナの収束に加え、五輪の後始末や財政難など、小池都政の「負」の側面が表面化するステージに入る。耳あたりのいい発言をうのみにせずに都政の本質を突けるのか、議会の力が一層問われることになる。
 =第1部おわり。第2部では激戦区の動向に焦点を当てていきます。
 

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