都政新報
 
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2021都議選 ゲームチェンジャー 第1部・新旧交代の帰趨(6)/少数会派の逆襲/あぶり出される求心力と信念


  2019年が明けて早々、小池知事に「痛手」となる出来事があった。立ち上げた都民ファーストの会から3人の離党者が新たに出たのだ。
 大きな理由が、都民ファの「不明瞭な意思決定」だった。前年の品川区長選や西東京市議選での推薦・公認を含め、「党の意思決定が判然としない」と厳しく批判した。
 3人が結成した「東京みらい」は基本的に、小池知事を支持するスタンスを取ってきた。ただ、会派の理念として都民ファの旗印と一線を画し、「『真の』東京大改革」と打ち出すなど、独自路線を強調している。
 今年の都議会1定は、「こども基本条例」を巡って紛糾したが、東京みらいは原案を出した公明党を援護射撃。森澤恭子幹事長は討論で、公明都議の尽力があったとして「尊敬の念に堪えない」と持ち上げる一方、都民ファを念頭に「政局と決めつけた発信や誹謗(ひぼう)中傷がSNSなどで繰り返されたことは遺憾」と批判した。
■古巣に弓
 「古巣」に弓を引いているのは同会だけではない。維新の西郷歩美氏もその一人だ。
 昨年12月、都民ファを「しがらみだらけ」と批判し、離党する決断をした。会見に同席した柳ケ瀬裕文参院議員は、都民ファ内に「忸怩(じくじ)たる思い」の都議が複数いることを示唆している。同じく栗下善行氏は2月に同会を離党。現在は無所属だが、立憲民主党との距離を縮めたい意向を示す。
 関係者によると、小池知事は今期、都民ファの分裂を強く懸念し、離党がうわさされた都議側に自ら電話でアプローチするなど、「抑え込み」に躍起となった。離党が取り沙汰された人数と比べれば一定の効果は出ていると見られるが、結果的には8人が会を離れた。
 都民ファとしては7月の都議選で、「親」である小池知事の応援を得て戦いたいところ。ただ、現時点で小池知事は支援の態度を明言しているわけではなく、自民党本部との接近を見るにつけ、新人や旧民主出身者ら「外様」にとっては「いつ見放されるか分からない」という不信感も根強い。
 旧民主が第1党だった時代も、13年の選挙直前、党の求心力の低下に伴って離党者が続出。09年に54人でスタートした同会派は最終的に43人まで漸減した。選挙が近づくにつれ、議会は不安定感を増し、党の求心力と議員の信念があぶり出されるというのは、今も昔も同じだ。
■砂上の楼閣
 今期、少数会派が議会全体の意思決定を左右した例がある。19年12月の都議会4定、都選挙管理委員会委員の選挙だ。 
 選管委員は、選挙日程を含め事務を取り仕切る役割を持つ。都議の投票により4人を選出することになっており、通例では主要会派のOB3人と、警視庁出身者が選出されるケースが多い。 
 今回は都民ファが警視庁出身者を含めて2人、自・公・民が各1人を擁立し、4枠を5人で争うことに。都議会は当時、現員が124人で、都民ファ50人、自公が各23人、民主5人という図式だったが、共産(18人)が候補を出さずに民主と組んで自公の23人に並び、1票が結果を左右する選挙となった。 
 結果だけを見れば、都民ファ2人と自公1人ずつの計4人がそれぞれ25票を獲得して当選し、下馬評通りに落ち着いた。ただ、複数の関係者によると、自公が水面下で東京みらいや無所属の上田令子氏に働き掛けるなどし、議会の不安定さを如実に示す結果となった。 振り返ると、旧民主が第1党だった11年、花輪智史氏が市場移転の関連予算案を通すため、採決当日に賛成に「変節」。また、民主の議員提案による「省エネ条例」は前日まで否決される公算だったが、採決当日に自民都議が急逝し、可決に急転する事態もあった。
 今期の都議会も同じようなもので、その不安定さを都幹部の一人はこう表現する。「1票で結果を左右するほど怖いものはない。砂上の楼閣のようなものだ」
 

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