都政新報
 
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2021都議選 ゲームチェンジャー 第1部・新旧交代の帰趨(5)/野党の乾坤一擲/国政と都政見据える先は


  「知事に聞いているんです」「知事が(答弁の)ボタンを押したんだから」─。3月、都議会予算特別委員会。共産党の白石民男政調委員長が声を張り上げた。
 今回の予特で同党が取り上げたのは二つの「事故」だ。一つは米国で2月、航空機からエンジンの部品が住宅地に落下した事故。都心を低空で飛行する羽田空港の新飛行ルートに絡み、エンジンが火を噴く写真を示しながら、「こういう事故は起きないと断言できるのか」と追及した。もう一つは外環の工事に伴い、調布市の住宅街で道路陥没や空洞が見つかった事故で、原田暁氏が「一貫して知事は傍観者ではないか」と責任を指摘した。
 今期、同党で存在感を発揮したのは若手らだ。同党は2020年1月、役員8人のうち6人を1~2期目の若手が占める体制に刷新。それに先立つ全国大会では「世代的継承」を議論し、若返りを図っていた。同党は従来、待機児童数や国民健康保険といった福祉分野での追及を得意としていたが、今期はブラック校則や痴漢といった若者に近しいテーマも政策課題に位置付けている。
 議会対策では、他会派と過度に対立を深めないための努力も垣間見える。昨年12月、本会議で同党の議員が質問時間をオーバーした際には、すぐに幹部が各会派を回って陳謝。他党からは「共産はこれまで、現政権や与党に反対することがアイデンティティーだったが、現執行部は抜け目なくやる新しいタイプだ」との評も漏れる。
 同党は今年の1定で、都民ファーストの会が提案した「コロナ対策条例」の改正に賛同。小池都政に反対するスタンスは堅持しつつ、一時的であるにせよ都民ファと協調し、自公と対立する格好となった。
 一方、小池知事は野党に対する答弁を避ける場面が増えた。就任当初は「全方位外交」で、野党側にも自ら「こども食堂」のように前進答弁をするケースもあったが、最近では石原元知事と同じく、事務方に預けることが多い。
 同党の和泉尚美幹事長は小池都政に対し、「自民党を離党して立候補したので、これまでとは違う都政を実現してほしいと思っていた」と振り返り、直近の予算を「巨大開発と大型道路建設中心の〝自民党型〟予算」と批判を強めている。
 同党が都議選で対決の照準を合わせるのは、第1会派の都民ファよりもむしろ自民だ。田辺良彦都委員長は昨年12月の記者会見で「自公とその補完勢力を少数に追い込みたい」と述べており、都議選をテコに政府を批判したい意向も透ける。
■結 束
 「野党が結束して、乾坤一擲(けんこんいってき)の闘いを挑みたい」(立憲民主党の長妻昭代表代行=当時)。
 昨年の都知事選前の3月、立憲民主や国民民主、共産などの野党幹部が衆院議員会館で「市民と野党の共闘」を掲げ、声をそろえた。知事選には元日弁連会長の宇都宮健児氏を支援する形で絡んだが、結果は小池知事の圧勝だった。
 今期の立憲民主は「議案提案権」を持たない少数で、厳しい会派運営を強いられてきたが、小池都政には「是々非々」としつつ、厳しいスタンスを取ってきた。
 「ダジャレや語呂合わせが多く、都民に必要なメッセージが伝わっていない」。中村洋幹事長は2月、小池知事のコロナ対策をこう批判。知事の1期目の公約が達成できていないことも問題視しており、委員会レベルでは「満員電車ゼロの公約が宙ぶらりんになっている」との指摘も出ている。
 他党との関係では、国政で「野党共闘」の枠組みも広げているが、都議選で自公のように政策協定を結んでいるわけではない。昨年末、立憲や共産の候補者選定に時間がかかったのも、「野党共闘」の調整に加え、衆院選が都議選に先行するとの観測があった中で都議選に焦点を当てられなかったことが一因だった。
 野党陣営は今月の小平市長選で勝利したとは言え、昨年の都議補選の全敗のように、党派が前面に出る選挙は厳しい結果に終わっている。国政で支持率が伸び悩む中、都議会で存在感を出し、小池知事と「オール与党」との間にくさびを打ち込むだけの勢力を確保できるのか、模索が続く。
 

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