都政新報
 
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2021都議選 ゲームチェンジャー 第1部・新旧交代の帰趨(2)/議会の刷新/小池知事依存、脱却できるか


  1月、千代田区長選。都民ファーストの会出身の樋口高顕氏が当選を確実にすると、陣営に入った元同僚らの拍手で沸いた。モニター越しには、小池知事と荒木千陽代表の笑顔。知事の自宅のダイニングとリモートでつなぎ、祝福を受けた。
 「あのダイニングは都民ファで行ったことがない人がいないような場所。『ファミリー』のような感じだ」。敵対する自民党と小池知事の接近を不安視する時期だっただけに、都民ファ都議の一人は知事の応援を引き出した末の勝利にこう実感を込めて語った。「小池知事は(都民ファの)他に行くことはない」
 都民ファにとっては、痛恨とも言える敗戦があった。昨年7月、都知事選と同日執行の都議補選だ。同会は北区で、小池知事の元秘書を擁立し、自民が立てた新人と対決する構図になった。ただ、同会関係者は「小池知事は(擁立を)最後まで了承しなかった。主戦派が突っ走った結果だ」と明かす。
 会の党勢拡大だけを考えれば、都知事選とタイアップして補選を戦うことは当然の判断と言える。ただ、小池知事にとっては知事選を控え、自民党本部の二階俊博幹事長と密接な関係もあった。結局、知事は最後まで直接的な応援に入らず、都民ファは惨敗する結果に。小池知事が頼り─二つの選挙は、このことを証明する結果になった。

■議員提案条例
 都民ファは2017年、「議会改革」を公約の一つに掲げて躍進した。その中で議員提案条例は実績の一つと言える。
 26日までの都議会1定では新たに、コロナ対策条例の改正とこども基本条例の2条例が成立した。今期はここまでで議員提案で成立した条例は計4本。皆無だった前期から見れば前進で、同会幹部は「議会側から条例を作ろうとする機運ができた」と胸を張る。内容的には理念にとどまり、実効性に欠けるものもあるが、会派間で議論する場面が増えたのは確かだ。議会全体の合意の結果ではあるものの、議会棟での禁煙や政務活動費での飲食禁止といった公約もクリアしている。
 政策的にも独自色を打ち出した。例えば、女性都議らが性教育や結婚・出産とキャリアの両立支援などを小池知事に要望。同会は女性議員が3割を占め、その特徴を生かした取り組みだった。
 一方、かねてからの課題となったのが、会派運営だ。これまでに8人が離党・除名で会を離れたが、理由の大半が不透明な会派運営で、「小池知事を守ることが目的になっている」と指摘する都議もいた。
 執行部としても、改善を怠ってきたわけではない。党役員の「密室人事」が批判される中、同会は19年、初の代表選を実施した。オープンな組織であることをアピールする意図があると見られたが、ふたを開ければ小池知事の最側近・荒木千陽氏の無投票再選だった。水面下で対抗馬を擁立する動きはあったものの、会派の団結を鑑みて断念しており、小池知事とのパイプを重視する結果となった。
 他方、この4年間、議会運営の責任者を引き受けてきたのは、旧民主出身の増子博樹幹事長だった。会派間の意見が衝突する中でも、議会運営委員長として議会を回してきた。「知事与党」第1党の幹事長を4年務めた例は過去に例がない。
 同会の構成は、旧民主党を中心とする議会経験者、小池知事の側近、そして民間出身の1期生らのグループに大別でき、議会運営や小池知事との調整、政策づくりなどを分担してきた。また、党役員に1期生を登用するなど、体制の刷新も図っている。ただ、代表や幹事長の続投は、裏を返せば中核を担える人材が他にいないことの証左でもある。
 都議選まで100日を切る中、都民ファには前回のような「小池旋風」は起きていない。昨年には連合東京と支援の合意書を交わしたが、あくまで組合の各地域の組織などと連携して地元活動をしていることが条件となっている。千代田区長選での「成功体験」は若手の不安感の払拭に一役買ったのは事実だが、都議選では議員個々の実力が問われることになる。
 長期的に議会を改革の軌道に乗せるためには、小池知事に過度に依存せず、地域政党としての存在感を増すとともに、要職を担える人材の発掘も不可欠になる。
 

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