都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
2021都議選 ゲームチェンジャー 第1部・新旧交代の帰趨(1)/流転の4年間/揺れ動いた各会派のスタンス


  23日午前4時過ぎ、都議会厚生委員会で「こども基本条例案」が可決されると、委員会室には職員らの安堵(あんど)とともに、疲労の空気が漂った。同条例案は元々、公明党が主導し、自民など4会派と共同で提出した原案に、都民ファーストの会と共産党が修正案を出して対抗。最終的には全会派の意向をくむ形で再修正を加えて決着させたが、5日間にわたって議事が空転する「難産」だった。
 本来なら全会一致で大団円─となるべき場面だ。しかし水面下では一時、「ご破算」の危機に陥るなど、厳しい局面が続いた。折しも自公が都議会レベルでの政策連携を結んだ矢先。都民ファの若手がSNSで「スカスカだった原案」と批判すれば、公明の中堅は「政局まみれにし、無駄な時間と金を費した都民ファ」と糾弾し、溝を際立たせた。また、自民の幹部は都民ファが共産と組んだことを「目先の利益のために『禁断の果実』を食べた」と表現した。
■伯 仲
 「古い議会を新しく」─小池知事の人気が絶頂だった2017年の都議選で、第1党に躍り出た都民ファが掲げたフレーズだ。
 では「新しい議会」で改革は進んだのか。同会が強調する成果の一つが冒頭のような議員提案条例だ。また、出産世帯に対する経済的支援を例に、同会幹部は「粘り強く申し入れ、実現した政策は多い」と胸を張る。
 一方、自民は一時、第3会派にまで凋落(ちょうらく)した。同党が最大会派を譲るのは、今回が初めてではなく、石原都政下でも旧民主党に第1党を奪われたことがあった。しかし当時と異なるのは、知事と対立して事実上の「野党」になったことで、18~19年度は予算案にも反対した。革新系の美濃部都政以来、41年ぶりだった。
 それでも、昨年の知事選では、党本部の二階俊博幹事長が主導する形で対抗馬の擁立を断念。「不戦敗」を経て、現在は「民意を真摯(しんし)に受け止める」として批判を抑えている。同党の関係者は「全ては都議選で勝つため」と言い切る。
 小池都政で終始、キャスティングボートを握ったのが公明党だ。小池知事にしてみれば「身内」の都民ファはどうとでもなるが、自民と対立する中、議会運営を左右する公明をむげにできない力関係にあった。
 前期、議会改革を巡って自民と「決別」していたこともあり、初期は都民ファとタッグを組んで小池都政を支えたが、小池知事が17年に「希望の党」を立ち上げて国政進出をうかがうと一転、知事与党の離脱を宣言し、都民ファとの連携も解消した。それでも小池知事や各党と付かず離れずの「等距離」をキープしながら知事側に要求を突き付け、私学の授業料無償化を始めとする「実」を勝ち取った。
 自民との関係では、今年3月に入って政策協定を締結。近く党都連・都本部レベルでも選挙協力を結ぶ見通しで、巧みに来期をにらんだポジション取りに入っている。
 都議選を前に、その他の会派の態度も明確になりつつある。改選前の17年度予算は、44年ぶりに全会一致で可決する「快挙」。共産党は当初、小池都政を「都民要望に応える前向きの公約を掲げていた」と評して賛成に加わった。しかし現在は、「『自民党型』の路線。都民を裏切った4年間だ」と総括して、反対の立場に回る。立憲民主党も未達成の知事公約を追及し、批判を強めている。
 都議会(定数127)の構成は現在、都民ファの46人に対し、自公は計49人で、いずれも過半数の64に届かない。都民ファと自民は批判し合う立場で、都幹部は「三方を納得させる回答を得るのは容易ではない」と話す。「こども条例」の審議で都民ファと共産が組み、自公と対立して協議が暗礁に乗り上げたのはその証左だ。
 今期は各会派の数が伯仲することもあり、各々のスタンスが揺れ動いた4年間だった。知事側と対峙(たいじ)しながら権能を発揮できたのか、厳しい視線が向けられている。
     ◇
 今期の都議会は、小池知事が立ち上げた都民ファを軸に、各党が間合いを測りながらスタートした。しかしここにきて自公が接近するなど、構図は徐々に変容しつつある。都議選は国政の「リトマス試験紙」と言われるほど影響を受けやすく、現状では自民に逆風が吹くが、どの陣営も決め手を欠くのが実情だ。都議選まであと100日。局面を打開する「ゲームチェンジャー」は現れるのか。今期を総括しつつ選挙戦を展望する。
 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針