都政新報
 
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記者座談会/都知事選を振り返る/「一強多弱」現職に歯立たず/各党、心ここにあらず?/自民は「背信」自覚を/366万票におごらず、緩まず


  都知事選は、現職の小池百合子氏が圧勝で再選を果たした。コロナ禍の影響もあって終始、盛り上がりを欠いた「一強多弱」の選挙戦。自民党が対抗場を立てられず、野党系の有力候補が割れるという「敵失」もあったが、記者はどう見たのか。

各党、心ここにあらず?
 ─コロナ禍で論戦は低調だった。
 A 各陣営の街頭演説を見ても、有権者に訴えが届いているのか、測りかねる選挙戦だった。「密」に留意しながらの運動となったこともあるが、対立軸が明確にならなかったように思う。
 B 政党が絡めなかったことは大きい。立憲民主や共産、維新は「抱き着き」しかなく、自民に至っては不戦敗だ。
 A どこまで本気かも測りかねた。各党とも「心ここにあらず」。今回の知事選を、来るべき総選挙のダシにしているようにしか見えなかった。首都の首長選を何だと思っているのか。
 C そんな中、小池氏は「オンライン選挙」と称して、主要候補で唯一、街頭に立たず、SNS上での活動に注力していた。コロナ対応の「公務」がテレビで繰り返し放送され、告示前から独走体制。戦略が奏功した。
 B 現職の優位性をいかんなく発揮したね。2011年の東日本大震災の後、石原慎太郎氏が防災服を着込んで対応に当たっていたのをほうふつとさせた。人口減少や貧困対策、まちづくりなど課題はいくらでもあるのに、コロナにかき消された。テレビ討論もほとんど行われず、政策論争は全く深まらなかった。
 A 小池知事は学歴詐称疑惑など、批判の芽もくすぶっていたが、本人が表に出て来ないことには、盛り上がりようがない。他陣営からすれば、ほぞをかむ思いだったのでは。
 C それでも、小池氏周辺によると、本人的には選対の仕切りに心もとなさもあったようだ。再選は当たり前として、選挙後をにらんで圧勝したかったのだろうね。
 A 4年前とは対照的に少しも風は起きず、「一強多弱」の構図は最後まで変わらなかった。

自民は「背信」自覚を
 ─「一強多弱」という言葉が出たが、自民党は結局、候補を立てられなかった。
 A この4年間、都民にあれだけ小池知事との対立を演出しながら「出せませんでした」では、背信以外の何物でもない。自民党の関係者が「小池知事が一枚も二枚も上手だった」と自嘲気味に話していたのが印象的だった。
 C 票の出方を見ても、自民支持層の多くが小池氏に回った。自民党の対応は迷走したと思う。6月議会では「学歴疑惑」に関する決議を準備したが、直前で党本部から「圧力」を受けて提出を断念しただけでなく、他会派から出たほぼ原案通りの案文に反対するという考えられない展開になった。
 B ただ、「小池有力」と言われる中、対抗馬を立てて惨敗したら目も当てられない。「対決回避」にかじを切っても無理はないと思うが。
 C そうは言うけど、来年には都議選がある。前回の落選組を含め、どう戦うのか。このまま小池知事にすり寄るの? 立ち位置は中途半端だ。結局、公明党が付いてこないと、苦戦を強いられるのは目に見えている。
 A でも、自民党としては最後まで小池知事に振り回されたね。党本部の二階俊博幹事長が推薦に前のめりだったのに、最後は小池氏が政党推薦を辞退するんだから。都議会自民党が準備した学歴疑惑の決議案が体のいい口実になったように見える。
 C 政党の推薦を受けない「都民ファースト」の原点に戻ったということでしょ。でも、都知事選での政党の存在感はまた低下したよね。「野党共闘」も似たようなもので、立憲や共産は連日、宇都宮健児氏のもとに党首クラスを送ったにもかかわらず、歯が立たなかった。それどころか立憲の票の相当数が小池氏に流れているようで、戦略の見直しを迫られるのでは。
 ─維新は新人の小野泰輔氏を推薦した。
 B 小野氏は無名ではあるけれどピカピカの経歴の持ち主。現職も相当、警戒したのでは。
 C その節はある。ただ、維新が推薦したことで政党色が強くなり過ぎた。自民党に秋波を送ったが、相手にされていなかったよね。
 A 確かに。まぁ、地方での実績だけでは都民は動かない、ということが改めて明らかになった。
 B それでも、維新としては党勢拡大に向けて全都的に存在感を示せたから、御の字ではないかな。来年の都議選に向けても弾みになると思う。

366万票におごらず、緩まず
 ─今後の都政運営をどう見る?
 A 2期目は、財政難や五輪延期の対応など「いばらの道」だ。新型コロナの終息が見えない中、五輪中止・延期の判断は容易ではなく、判断をミスすれば多額の負担が押し寄せる。小池知事は今のところ、国政進出の意向を否定しているが、いつまで都政に専念できるか疑問の目が多いのも事実だ。
 C 全選挙区で小池氏が最多得票となり、勢いは付くと思う。女性活躍やICTなど、知事銘柄の政策は推し進めやすくなるかも知れない。ただ、大量得票で「おごり」には注意。猪瀬元知事は400万票を取り、「裸の王様」になった。石原都政では新銀行東京が幹部から持ち込まれ、大コケした。「官邸官僚」のようなごますりを許し、ゆがんだ都政運営にならないことを祈る。
 B 来年に都議選を控え、議会対応は難しくなるだろう。今回の都議補選で第2会派に伸長した自民党内には「(知事を)信用できない」という思いが強く、このまま接近するとは考えにくい。都民ファ、自民、公明が「三方一両得」になるような解は思いつかない。
 A 小池氏の場合、敵と味方を明確に峻別(しゅんべつ)する節があったが、首都東京の首長として「366万票」におごらず、緩まず、都政全体に目配りしたかじ取りに期待したいところだ。
 

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