都政新報
 
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小池氏366万票で再選/歴代2位の得票数次点以下に大差で圧勝/都知事選挙/ネット軸にコロナ禍の選挙展開


   任期満了の都知事選は5日、投開票が行われ、現職の小池百合子氏(67)が約366万票を獲得し、宇都宮健児氏(73)、山本太郎氏(45)、小野泰輔氏(46)らに大差を付けて再選を果たした。小池氏は新型コロナ禍で「密」を避けるため、動画の配信など「オンライン選挙」を徹底。政党からの推薦も受けなかったが、都民ファーストの会に加え、自民、公明両党から「実質的な支援」を受けるなど、幅広く票を取り込んだ。
 =2面に「敗戦の弁」「社説」、3面に「記者座談会」、6面に「職員の声」

 西新宿の選挙事務所では午後8時過ぎ、小池氏が当確の情報を受けて姿を現し、インターネットで配信する動画用に「都民の力強い支援にうれしく感じると同時に、大切な2期目の重責を担う責任を感じる」とあいさつ。荒木千陽選対本部長から支援者からの花束を手渡されると、一礼して謝意を述べた。ただ、「コロナの真っただ中で、万歳という気持ちになりにくい」として、万歳は行わなかった。
 新型コロナの感染拡大を受け、小池氏は選挙期間中も「公務優先」を強調。選挙活動は、第一声を始め、政策をPRする動画の配信に絞り込み、「本来だと私自身、街頭演説を行い、皆さんと握手を交わしてできるだけ接触する選挙を重ねてきたが、今回は第一声から最後までオンライン。新しい日常の中での新しい選挙が展開できた」と振り返った。
 投票率は55・00%となり、前回よりも4・73ポイント下回った。小池氏の得票数は猪瀬直樹氏(12年)の約433万票に次ぐ歴代2位で、次点の宇都宮氏に281万票余りの大差をつけた。ただ、得票率は59・7%で、過去の知事の再選時と比べ、石原慎太郎氏(03年)の70・21%を下回った。
 小池都政が直面する最大の課題は目下、新型コロナウイルス感染症対策の強化だ。都内では2日以降、連日、100人超の感染者数を確認している状況。小池氏は共同インタビューで、「3~4月の頃、感染者が増えた時期と同じようなグラフの山に見えるかもしれないが、集団検査を受けている方がいる。高齢者や既往症のある方は重症化しやすいが、20~30代の若い方が圧倒的に多い」と違いを強調。「リンクをしっかりとたどり、一つひとつ丁寧に対応する。都民には感染を拡大させない思いを共有して、実践してほしい」と述べた。
 休業要請の在り方に関しては、「東京全体、国全体という形は取りにくいのではないか」との認識を示し、「どこにピンポイントで絞っていくか」と述べ、効果的な方法を検討する考え。また、国に対しては、厳格な水際対策を要請する意向を示した。「海外との往来が自由になることによって、水際対策をしっかりしないと苦労するのは自治体になる」と述べた。
 来年に延期された五輪・パラリンピックの開催については、「コロナ対策が最優先」とした上で、開・閉会式や競技の簡素化を進め、「都民・国民の納得を頂ける形で進める」としている。
 中長期的な都政運営に当たって直面する課題の一つが、都財政の立て直しだ。「貯金」に当たる財政調整基金が1千億円を割り、厳しい局面に入る。小池氏は都政改革を行い、行政手続きのオンライン化などでコスト削減を図る考えを示したが、1期目のような潤沢な税収を生かした「バラマキ」は続けられず、どうコストカットに踏み切るかが問われることになる。また、「長期戦略」の策定を控え、人口減少や少子高齢化などにどう向き合うかも今後の都政を左右しそうだ。
 議会との関係では、小池氏は自民、公明両党から「実質的な支援」の言質を取っているものの、自民党都連との溝は依然深い。小池氏が顧問を務める都民ファと自民党との対立も続いており、来年の都議選に向けてどう議会運営をしていくかも焦点となる。
 小池知事は国政への転身に意欲的との見方も根強いが、「当選確実を都知事としていただいたばかりだ」とし、「首都・東京にとって(2期目の)4年間は死活的に重要。しっかりと都知事として務めたいし、国にはいろいろな形で協力をいただくことによって、首都・東京の役割を果たしたい」と述べた。
 今回の都知事選を「自主投票」とした自民党の鴨下一郎都連会長は5日、記者団に対し、「都民の中心として都政がどうあるべきかを勘案しながら、小池知事の都政にできるだけ協力をしてやっていく」と述べた。また、宇都宮氏を「野党共闘」で支援した立憲民主党の長妻昭選対委員長は「都民と野党各党と気持ちを一つにして戦ったということは財産。来るべき総選挙に生かしていきたい」と述べた。


◆解説/批判に耳傾ける度量持てるか
 選挙戦最終盤まで現職有利は揺るがず、無党派層はもとより政党の推薦を得ない中で自民、公明の支持層からも票をかき集め、得票数は歴代2位。選挙区別で見ても、西多摩・島しょを含め、全選挙区で最多得票となった。
 告示前から選挙対策は万全だった。自民党本部の幹部とは、敵対する党都連の頭越しに接近を重ね、支援を取り付けた。メディア対策も抜かりなく、再選出馬が確実視されながら告示直前まで表明を引っ張り、テレビを通じてコロナ対策の姿勢をPR。現職の優位性を最も効果的に生かしたと言える。
 ただ、選挙戦を振り返ると、コロナ禍で「オンライン選挙」が許容され、街頭演説も盛り上がりを欠いた。テレビ討論は皆無で、双方向性の論戦はほとんど行われていない。
 一方、自民党は小池知事との対決姿勢を初志貫徹できなかった。党本部が早々に現職支持にかじを切ったとは言え、党都連は都民に選択肢を提示できずに独走を許した形で、不作為と取られても仕方がない。小池都政とどのように対(たい)峙(じ)するのか、都民は注視しているはずだ。
 選挙戦で際立ったのは、小池知事に対する都庁内外の批判を「アンチ小池」と色づけて聞く耳を持たない一部支持者らのゆがんだ姿勢だ。知事周辺の度を越した忖度(そんたく)を懸念する声も増えており、都の各局では中枢からの指示に「本当に知事の意向か」という疑問をよく聞くようになった。こうした声を遠ざけ、周囲をイエスマンで固めるようでは先は危うい。
 選挙戦では本来、耳の痛い批判を聞く場面は多くあったはずだが、コロナ禍でその機会が失われたというのは前述の通りだ。敵・味方と峻( しゅん)別(べつ)するのではなく、内部の批判にも真(しん)摯(し)に耳を傾け、丁寧な都政運営に生かす度量が求められる。(一)
 

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