都政新報
 
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首都封鎖~新型コロナ危機(下)/経済打撃/活動停滞の長期化抑止


  
 「都の外出自粛要請を受け、客足が遠のいている。当座の売り上げがないため、今月の家賃が払えない」─都が1月30日に設けた中小企業向けの特設相談窓口への相談件数は当初1日当たり1件だったが、3月25日の小池知事による夜間の不要不急の外出自粛要請以降は同50~60件に増加。
 都産業労働局が3月に実施した都内中小企業への聞き取り調査では回答した253社のうち、新型コロナで事業への影響が出ていると答えたのは57・8%で、先月調査より28・1%増加。業種別では宿泊・飲食サービス業が多く、製品や商品の売り上げ・受注の減少(48・0%)、顧客・来客の減少(34・7%)などの影響が挙がった。
 新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を受けて自粛が長期化すれば、経済活動はさらに停滞することが見込まれる。
 野村総合研究所が示した試算では、東京が1週間ロックダウンすれば、住民の外出自粛によって都内の消費は55・5%減少し、日本全体の個人消費が2・49兆円減少する。同研究所のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は「東京がロックダウンとなった場合、東京あるいは日本全体の経済にかなり深刻な打撃となることは疑いがない」と警鐘を鳴らす。 
 2008年のリーマン・ショックで、都は緊急融資などの財政支援策に1兆円を投入した。こうした緊急事態への財源として想定される財調基金残高は現在9千億円。リーマン時を超える景気低迷期に入れば、将来的に都税収減という形で跳ね返ってくる。小池知事は15日発表予定の過去最大規模の緊急対策について、「補正予算、予算の知事専決、予備費の活用など、都がなしうる手立てを総動員する」と説明した。
■官邸と歩調
 感染者数の急増を受け、小池知事は国に早期の緊急事態宣言を求める姿勢を示唆しており、3月31日の安倍首相との会談後には「国家としての判断が求められている」と強調した。小池知事に近い都民ファーストの会の都議は「緊急事態宣言は一時的に経済への打撃はあるが、傷口を広げない効果も期待できる。知事は官邸と歩調を合わせて準備しているのではないか」と話す。
 都は既に外出自粛や都立学校の休校措置をとり、他方では自粛や休校によって影響を受ける事業者に対する制度融資や補償を講じる。「都市封鎖と同様の状態にした上で、都民への救援策も用意することで、実際に都市が封鎖された場合の影響を抑えることができる」(同)。都議はこうシナリオを解説する。
 経済回復の前提となる新型コロナの終息には、薬やワクチンが開発されるまで患者数の発生ペースを抑える「時間稼ぎ」が肝となる。しかし、都内企業では業績の下方修正や内定取り消し・派遣切りなど長期的に東京の経済に影響を及ぼしかねない事態もみられる。
 事業者からの窮状を受け、都議会各会派は、固定資産税の納税猶予や、将来的な企業買収や合併の相談に応じる体制強化などを要望している。コロナで職を失った人材に対する職業訓練などの再就職支援を提案する意見も上がる。
 新型コロナ危機では長期の経済停滞を想定し、経営が困窮する企業や雇い止めに苦しむ都民への多方面からの支援が求められている。 =おわり
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