都政新報
 
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首都封鎖~新型コロナ危機(中)/医療・インフラ/職員の感染見据え準備急務


   「指定医療機関のベッド数を超える患者が常にいるというのが現状。現場では指定医療機関以外の一般の医療機関が感染症患者を受け入れられるよう突貫工事で準備を進めている」。3月30日の知事会見に専門家として同席した国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫国際感染症センター長は、医療現場の窮状をこう訴えた。
 都内感染者数は増加傾向が続いており、3月31日には1日当たりで過去最多の78人の感染者を確認した。都市封鎖を決定する際に患者数の基準は示されていないが、患者の増加は緊急事態宣言発令の判断に関わり、都市封鎖となった場合には増大する患者数に対応できる病床確保が急務となる。
 医療現場への影響は日増しに大きくなっており、永寿総合病院(台東区)では患者や医療スタッフ106人(1日時点)が感染。3月29日には荏原病院(大田区)でも30代の男性医師の感染が発覚し、都立墨東病院(墨田区)では、コロナ対応のために一時、重症・重篤患者を受け入れる「三次救急」と救急救命室(ER)の受け入れ休止に追い込まれた。 
 病院内での感染拡大を防ぐためには重症患者と中・軽症患者を分けて受け入れる必要がある。都は重症患者用の病床数を700床、中・軽症患者に3300床と計4千床の確保を目指しているが、1日時点で確保できたのは620床にとどまる。
 また、感染症病床では空きベッドを用意しておくことになるが、都医師会関係者は「民間病院にとっては、空きベッドを確保しておくことは経営上のハードルが高い」と指摘する。
 さらに、現行の感染症法では無症状患者も入院と規定されているが、医療現場の負担を軽減するため、小池知事は軽症患者や無症状患者は自宅や宿泊施設での療養を可能とするよう国に要望した。
 都福祉保健局幹部は「高齢者や持病を持っている人が重症化しやすい傾向が見えてきているので、重点的に医療を投資し、感染者を一度に急増させないのが最大のポイント」と話している。
■6割で機能確保
 一方、緊急事態宣言による都市封鎖時の対応などを示した国の基本的対処方針では、交通や水道などのライフラインを維持すると方向づけられており、準備が急務となる。課題となるのが職員の確保だ。
 都の新型インフルエンザ等対策行動計画では、本人や家族の罹(り)患(かん)などで最大4割程度の職員が欠勤すると想定。各局は必要・不要となる業務を精査した上で、通常時の6割の職員で都民のライフラインを支えることになる。
 都交通局は6割の職員で都営地下鉄や都営バスの運行本数を維持することが難しく、減便の検討も必要になるという。減便によって乗車率が高まれば感染リスクも高くなるため、イベントなどの業務の休止などで職員を確保し、減便を抑えたい考えだ。
 都水道局は、各浄水場で勤務経験のある職員とOBをリストにまとめており、現場の人員が足りなくなった場合はリスト人員から確保する考え。都内に11カ所ある浄水場はそれぞれ処理に用いる機器が異なるため、各浄水場での勤務経験が必要になるという。ただ、同局は「コロナ感染者が出た場合、その部署の人員が隔離されると不足人員が増えることも考えられる」(水道危機管理専門担当)と危惧する。
 増加する業務量を、限られた設備と人員でいかに対応するか。現場での臨機応変な判断と、庁内や民間事業者と連携した体制強化が求められる。
 

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