都政新報
 
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首都封鎖~新型コロナ危機(上)/外出自粛要請/一定の効果も、長期化に懸念/「強力な措置を取らざるを得ない可能性ある」/「私的権利の制限は、感染拡大防止対策とのバランスで判断」


  「今後の推移によって、ロックダウン(都市の封鎖)など、強力な措置を取らざるを得ない可能性がある」。都庁で25日夜に行われた緊急会見で、小池知事は「感染爆発 重大局面」と記載されたボードをテレビカメラに向け、危機感をあらわにした。 
 新型コロナ感染症の拡大スピードは加速している。都内の3月の患者数は15日までが53人だったのに対し、25~27日には1日40人以上、28、29日には60人を超える感染者が発覚。29日までに430人が感染し、糖尿病などの基礎疾患を抱えていた高齢者が死亡するケースも出ている。
 感染者数の増加に加え、感染経路が不明な事例が増えていることも懸念材料だ。29日に発覚した感染者68人中26人が感染経路をたどれていない。25日からの5日間、都内の感染者数は全国最多となった。
 同日には人口集中による感染拡大を防ぐため、近隣4県(埼玉、千葉、神奈川、山梨)と共同で住民への不要不急の外出自粛を求めるメッセージを発信。関東6県からの都内への通勤・通学者は1日当たり282万人、国内外からの訪都旅行者数は年間約5億5千万人。都は2月から都民への不要不急の外出の自粛を要請してきたが、単独の取り組みでは感染拡大を防ぐことが難しいと判断した。
 28、29日の外出自粛のため、都各局が予定していたイベントは中止・延期し、都は上野恩賜公園など都立3公園で桜が見られる園路を封鎖した。渋谷など一部地域では若者の姿が見られたが、前週に比べると自粛要請の効果は見られたとは言え、感染症の影響が長期化した場合、自粛要請がいつまで効果を発揮するかは不透明だ。
■実効性に不安
 都市封鎖は既に海外の諸都市で始まっている。英国では生活品を購入する場合などを除いて自宅待機を求め、違反者には罰金を科し、ドイツは3人以上の集会などを禁止するなど、各国で住民生活への規制を強化している
 経済活動に対しても、スペインでは食料や医薬品産業など生活に必須の産業を除き、2週間は原則停止に踏み切った。米国ではニューヨークやカリフォルニアなどの一部の州で、レストランやバーの店内営業を禁止している。
 こうした中、都総務局では海外の状況を注視し、都市封鎖に関する検討に着手。米国や欧州などの事例を調査しており、特措法に基づく「緊急事態宣言」が都に出された場合は、住民への外出自粛要請や娯楽施設などの使用制限などが柱になるとみられる。
 ただ、特措法の規定には諸外国のような罰則が設けられておらず、外出も使用制限も住民や事業者の協力を「要請」するのみで、実効性には不安も残る。
 新型コロナ対策を念頭に置いた特措法では、首相が「緊急事態宣言」を発令した場合、都道府県知事が臨時の医療施設整備のために民間所有地の使用を求められるなど私権に踏み込む対応も盛り込んでいるが、現時点で総務局は「私的権利の制限は、感染拡大防止対策とのバランスで判断する」と慎重だ。
 「ロックダウン」する基準や内容について、政府は明確な基準を示しておらず、小池知事は「有識者に助言をもらいながら、総合的な判断が必要」と述べるにとどめている。先週の段階では、知事が「ロックダウン」を示唆しただけで、一部の量販店の店頭からは生鮮食料品が消え、品薄感が広がった。都には将来を見据えた都民生活や経済活動への影響を抑えるための難しい判断を迫られることになる。
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 いまだ収束が見通せない新型コロナウイルス感染症。首都圏での感染者の急増に伴い、危機管理は新たなステージを迎えている。「首都封鎖」が現実味を帯びる中、どのような対応が求められるのか、課題を検証する。
 

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