都政新報
 
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■東京都予算案特集/2020年度東京都予算案の概要


  東京都の2020年度予算案が1月24日に発表され、2月19日に開会する第1回定例都議会に提出される。東京2020大会とその先を見据え、20年度予算案は、「東京2020大会を確実に成功させるとともに、『成長』と『成熟』が両立した、輝ける『未来の東京』を創る予算」と位置付け、編成された。一般会計の予算規模は、過去最大となった昨年度に次ぐ約7兆3540億円となり、東京2020大会を確実に成功させるとともに、東京が成長を生み続ける成熟都市として進化を図るための取り組みに重点的に予算配分した。過去最多の420件の新規事業を構築する一方、1266件の事業評価結果を公表し、評価の結果を通じて、約1030億円の財源を確保するなど、財政の健全性に配慮した予算となっている。予算案の概要を財務局が発表した資料をもとに特集する。

◆予算編成の基本的考え方
○予算編成方針
 「東京2020大会を確実に成功させるとともに、『成長』と『成熟』が両立した、輝ける『未来の東京』を創る予算」と位置付け、次の点を基本に編成した。
1 東京2020大会を確実な成功へと導き、次世代へと継承するレガシーを創り上げること

2 都政が直面する諸課題に迅速かつ的確に対応するとともに、Society 5・0の実現に向けた施策など、東京が成長を生み続ける成熟都市として進化を図るための取り組みを積極果敢に進めること

3 将来にわたる施策展開を支えるため、都政改革を更に進め、ワイズ・スペンディング(賢い支出)の視点で無駄の排除を徹底し、財政基盤をより強固なものとすること

◆財政規模
 財政規模(表1)のうち、一般会計の予算規模は、前年度比1・4%減の7兆3540億円、うち政策的経費である一般歳出は、前年度比1・2%減の5兆5332億円、特別会計及び公営企業会計を含めた全会計の合計は、前年度比3・3%増の15兆4522億円。一般会計の予算規模は、過去最大だった昨年度に次ぐ予算規模となった。
 東京が直面する諸課題の解決に向けて、より一層の無駄の排除を徹底する一方、東京2020大会の確実な成功に向けた取り組みに加え、東京が成長を生み続ける成熟都市として進化を図るための施策を積極的に進める予算配分を行った。

○歳入の状況(表2)
▽都税収入
 都税収入は前年度比1・1%減の5兆4446億円となった。
○歳出の状況(表3)
▽経常経費
 経常経費は前年度比5・0%増の4兆4839億円であり、うち給与関係費は前年度比1・3%増の1兆6312億円となった。退職手当が減となる一方、会計年度任用職員制度の導入に伴い期末手当を新たに支給するなどにより、前年度に比べて209億円の増となった。
▽投資的経費
 投資的経費は前年度比20・9%減の1兆493億円となった。豪雨対策等の災害に強いまちづくりや、骨格幹線道路の整備等、高い効果が得られる事業に財源を重点的に配分した。
▽目的別内訳(表4)
 構成比が最も高い分野は福祉と保健(23・1%)、次いで教育と文化(21・8%)、警察と消防(16・7%)の順となる。
 限られた財源を重点的・効率的に配分し、都民生活の質の向上に努めている。

◆財政運営
○予算のポイント
 予算のポイントは、大きく次の3点。
1 積極的な施策の展開
 「『未来の東京』戦略ビジョン」で描いた「成長」と「成熟」が両立した東京の実現に向け、「人」が輝くための施策である三つのC(Children、Choju、Community)や、台風・集中豪雨などの風水害対策、東京版Society 5・0である「スマート東京」の実現などの施策に重点的に予算を配分した。
 施策の体系は次の通りである。
◇誰もがいきいきと活躍できる都市
◇安全安心で住みやすい都市
◇日本の発展を牽引(けんいん)し世界の中で輝く東京
◇「スマート東京」の実現
◇美しく、魅力あふれる都市
◇史上最高のオリンピック・パラリンピックの開催とレガシーの創出
◇多摩・島しょの振興

2 事業評価の推進
 事業評価の取り組みにおいて、新たにICT関係評価を導入するなど、これまで以上に創意工夫を凝らし、約1030億円の財源を確保した。

3 東京2020大会に向けた取り組み
 東京2020大会の開催まで、半年を切るところとなり、東京2020大会の開催に向けた万全の準備を行い、レガシーの創出に向けた取り組みを着実に推進する。

○「『未来の東京』戦略ビジョン」の戦略の核となる三つのC
 都では19年12月に、2040年代に目指す東京の姿「ビジョン」とその実現のために2030年に向けて取り組むべき「戦略」を示した「『未来の東京』戦略ビジョン」を策定した。戦略ビジョンでは、政策面からの視点である3C(Children、Choju、Community)を、戦略の核に据えている。
 時代を切り拓くカギは「人」であり、「子供が社会で大切にされ、笑顔で伸びる・育つ」「長寿の方々が経験を生かし、いきいきと活躍する」「女性、障害者、外国人を問わず、一人ひとりが自らの意思で未来を切り拓く」といった「人が輝く」東京を創り上げるための取り組みを進めていく。
▽Children ~未来を担う子供を育む~とうきょうママパパ応援事業など
▽Choju ~人生100年時代を元気に~
AI等を活用した認知症研究事業など
▽Community ~みんなが集い、暮らす~
コミュニティの活性化を支援する新たな財団の設立など

○将来を見据えた財政運営
 都税収入が景気動向に左右されやすい不安定な構造の下、人口減少・少子高齢化への対応や大規模災害への備えなど、膨大な財政需要に留意しつつ、直面する課題の解決に向けた施策を着実に進めていかなければならない。併せて「『未来の東京』戦略ビジョン」に掲げる2040年代の東京の姿を目指し、「未来への投資」を積極的に行うことで、成長が財源を生み、更なる政策へとつながる好循環を生み出していくことが重要である。

○地方法人課税の見直し
 19年度税制改正では、法人事業税の一部を国税化し、特別法人事業譲与税として都道府県へ配分されることとなった(地方交付税の不交付団体に対して、最大75%を譲与額から控除する制限あり)。
 これまでの地方法人課税の見直しに伴う都財政への影響額は、「偏在是正措置」が初めて講じられた08年度税制改正前と比べて、8386億円の減収となる。このうち、19年度税制改正による影響額は、2399億円の減収である。
 都は、地方が果たすべき役割と権限に見合った財源を一体として確保できるよう、地方税財政制度の本来あるべき姿を目指し、今後とも、国に強く働きかけていく。
○基金の活用(表5)
 東京2020大会を確実な成功へと導くための取り組みなどに必要な財源として、三つのシティ実現に向けた基金を7332億円取り崩す。
 また、19年度最終補正予算では、将来の財政需要への備えとして、新たに「スマート東京推進基金(仮称)」等の三つの基金を創設し、1100億円を積み立てるとともに、既存の基金に3400億円の積み立てを行う。

○都債の活用
 将来世代の負担を考慮して都債の発行額を抑制し、発行余力を培った。都債は前年度比0・6%減の2084億円となり、起債依存度は2・8%と低い水準を維持した。

◆事業評価の取り組み
 限られた財源の中で都政の諸課題に的確に対応していくため、都は予算編成の一環として事業評価を実施し、一つひとつの事業の効率性・実効性を向上させる継続的な取り組み(マネジメントサイクル)を行っている。
 これまで、関係部局と連携した専門的視点からのチェック、新たな公会計手法の活用や終期を迎える事業に対する事後検証の徹底などを通じ、予算編成の過程で多面的な検証を行う取り組みとして着実にその実績を積み重ねてきた。
 今年度は新たにICT関係評価を導入するなど、事業の効率性や実効性の向上に向けて、これまで以上に創意工夫を凝らして事業評価に取り組んだ。
 こうした取り組みにより、今年度は1266件の評価結果を公表し、評価の結果を通じて約1030億円の財源確保につなげるとともに、施策の新陳代謝を促進することで、884件の見直し・再構築を行い、420件の新規事業を構築した。
○事業評価の種類
▽事後検証による評価
▽自律的経費評価
▽ICT関係評価
▽政策連携団体への支出評価
▽執行体制の見直しを伴う事業評価
▽監査結果に基づき見直しを図る事業評価
▽複数年度契約の活用を図る事業評価
▽エビデンス・ベース(客観的指標)による評価
○事業評価の実施例
▽ICT関係評価
・RPAを活用した帳票のデータ化モデル事業(行政データの活用促進)
〔現状・課題〕
 今後、各局でデータを活用し、EBPMの考え方に基づいた施策を展開していくためには、蓄積された膨大な行政データや民間データをICTを活用して分析していく必要がある。
 一方で、特にインフラ関連分野においては、点検データ等の行政データの多くが紙ベースのまま蓄積されているため、利用可能なデータ形式に加工し、データの資産化及び有効活用につなげていく必要がある。
〔対応〕
 紙媒体で保管されているインフラや施設の点検データなどをAI‐OCRを用いて電子化した上で、RPAを活用してその他異なるフォーマットで管理されているデータと合わせデータベース化する実証実験を実施する。
 本事業の検証結果を踏まえ、行政データ資産化の取り組みを各局に展開し、経年データ分析等を可能にすることで、効率的・計画的なインフラの予防保全等を推進していく。
▽政策連携団体への支出評価
・人材バンク(教員の負担軽減と教育の質の向上)
〔現状・課題〕
 都内公立学校では、外部人材を活用した部活動指導や学習支援を行っているが、人材確保は各学校の人脈の有無等に左右されることが多く、安定的な人材確保が課題となっている。
 部活動指導員やスクール・サポート・スタッフなどの外部人材を安定的に確保し、各学校とマッチングすることにより、教員の負担軽減と教育の質の向上を図る仕組みの構築が必要である。
〔対応〕
 都内公立学校への多角的支援を目的に設立された(一財)東京学校支援機構において人材バンクを運用し、学校のニーズ把握や外部人材の情報集約・提供を行う。
 人材バンクの運用を通じ、学校のニーズに合った外部人材の掘り起こしやマッチングを実施することにより、教員の負担軽減と多様な人材の確保を促進し、教育の質の向上を図っていく。
▽事後検証による評価
・介護予防・フレイル予防支援強化(健康寿命延伸に向けた事業の再構築)
〔現状・課題〕
 介護予防に資する「通いの場」について、これまでの取り組みにより設置箇所は増加しているが、国が目標として示す参加率を参考に、地域の実情も踏まえ、参加率向上に向けて更なる取り組みが必要である。
 加えて、運動機能向上が中心であった通いの場に対し、低栄養予防や口(こう)腔(くう)機能向上などのフレイル予防の観点も含めて支援を行っていくことが求められている。
〔対応〕
 健康長寿医療センターの知見を活用した東京都介護予防推進支援センターを、フレイル予防の支援機能を付加した上で、東京都介護予防・フレイル予防推進支援センターに再構築する。
 通いの場の機能拡充等により、参加率の向上やフレイル予防に取り組む区市町村を支援することで、健康寿命の延伸に寄与する。

◆主要な施策
 三つのシティの実現に向けた施策の概要は以下の通り(具体的な施策例、予算案は表6参照)。

1. 誰もがいきいきと活躍できる都市
 人と人との結び付きを深め、誰もがいきいきと輝き、活躍できる都市の実現に向けて、きめ細かな政策の展開により、希望にあふれた未来の東京への礎を構築。
(1)子供にやさしい社会の実現
 妊娠・出産から子育てまでの切れ目ない支援や多様な保育サービスの充実に向けた取り組みを行うほか、結婚に向けた機運醸成、児童養護等の充実の推進を図る。
(2)新しい時代を切り拓く人材の育成
 教育機会の格差解消に向けた支援、子供を伸ばす教育及び青少年の健全育成の推進を行うほか、世界を舞台に活躍する人材の育成や特別支援教育の推進を図る。
(3)世界に誇る長寿社会の実現
 認知症施策や高齢者の社会参加の促進を行うほか、高齢者の安全・安心の確保、介護人材の確保・育成・定着、介護サービス基盤の整備の推進を図る。
(4)誰もが輝き、活躍できる社会の実現
 女性の活躍推進のほか、「ライフ・ワーク・バランス」の充実、多様なニーズに応じた雇用対策・就業支援を図る。
(5)多様性を尊重する社会の実現
 障害者に対する生活支援や障害者の就労促進を行うほか、多文化共生社会の推進、多様な主体を支える社会の実現を図る。
(6)居場所の創出や地域コミュニティの活性化
 空き家対策の推進や良質な住環境の形成を図る。

2. 安全安心で住みやすい都市
 都民の安全・安心の確保に万全を期していくため、都市の強( きょう)靭(じん)化に向けたハード・ソフト両面からの対策や都市インフラの機能向上により、都市の総合力を高める。
(1)災害の脅威から都民を守るまちづくり
 豪雨災害対策や無電柱化の推進を行うほか、震災に強いまちづくり、災害対応力、災害医療対策の強化を図る。
(2)暮らしの安全・安心の確保
 まちの安全・安心の確保や救急活動体制の充実に取り組むほか、がん・受動喫煙防止対策等の推進、在宅医療や医療体制の充実を図る。
(3)都市機能の更なる強化
 身近で快適な道路ネットワークの形成や公共交通の更なる充実と次世代交通システム等の導入を行うほか、港湾・物流機能の強化、バリアフリー化の推進、公共的な空間によるにぎわい創出の推進を図る。

3. 日本の発展を牽引し世界の中で輝く東京
 激化する都市間競争に勝ち抜くために、「稼ぐ力」の更なる強化に向けた大胆かつ戦略的な政策を展開することにより、東京の持続的な成長を生み出していく。
(1)世界経済を牽引する都市の実現
 国際金融都市の実現・外国企業誘致の推進のほか、中小企業の稼ぐ力や起業・創業の促進を図る。(2)中小企業・地域産業の支援
 経営安定化支援等のほか、商店街の活性化支援や農林水産業の振興を推進。

4. 「スマート東京」の実現
 第四次産業革命の変化を好機と捉え、東京をSociety 5・0の「スマート東京」に進化させる取り組みとして、鍵を握る5G、AI、IoT、ビッグデータなどのICTを行政サービスへ実装するとともに、都庁の組織を横串で動かす体制を強化するなど、産官学でオープンにスピーディーな取り組みを推進。
(1)「電波の道」で「つながる東京」
 21世紀の基幹インフラである「電波の道」(TOKYO Data Highway)の整備に向けて、5GやWiFiなどの通信環境整備の推進を民間と東京都の強力なタッグで行い、いつでも、どこでも、誰でも、何があっても「つながる東京」の実現を目指す。
(2)公共施設や都民サービスのデジタルシフト
 ICTを活用して行政サービスに新たなイノベーションを生み出すことで、都民のQOLを向上させるための実証プロジェクトへの挑戦を教育、防災、産業などの全領域で開始。
(3)都庁のデジタルシフト
 都庁職員の働き方のみならず、都民向け行政サービスにおけるICTの利活用を進め、デジタルガバメントの先進モデルとなるよう、都庁自らを変革。

5. 美しく、魅力あふれる都市
 気候変動危機に対応する脱炭素化に向けた行動を加速させることで、社会全体での取り組みを後押しする。また、東京が持つ魅力的な資源を磨き上げるための取り組みを推進することで、世界中の人々を引きつける都市の実現を目指す。
(1)ゼロエミッション東京の実現
 ゼロエミッションビークル(ZEV)の普及促進や家庭、事業所等における省エネルギー対策の推進、再生可能エネルギーの導入拡大を行うほか、暑さ対策、プラスチック対策、照明のLED化推進、大気環境対策・フロン対策の推進を図る。
(2)水と緑あふれる都市環境の形成
 貴重な緑を守り、あらゆる場所に新たな緑を創出することで、快適な都市空間を形成するとともに、持続可能で魅力ある都市づくりを推進。
(3)魅力にあふれる観光都市の実現
 外国人旅行者等の誘致のほか、外国人旅行者等の受け入れ環境の充実、多彩な観光資源の開発・発信の推進。

6. 史上最高のオリンピック・パラリンピックの開催とレガシーの創出
 東京2020大会が史上最高の大会として、世界中の人の記憶に刻み込まれるよう、万全の準備を進めていくとともに、次世代に引き継ぐ大いなるレガシーを創り上げるための取り組みを着実に推進。
(1)史上最高のオリンピック・パラリンピックの開催とレガシーの創出
 東京2020大会の開催に向けた万全の準備とレガシーの創出、大会時輸送及びボランティアの確保・育成を行うほか、文化の祭典、共同実施事業等、オリンピック・パラリンピック教育等の推進、スポーツの振興を推進。

Ⅶ 多摩・島しょの振興
 多摩・島しょ地域の更なる魅力と活力の向上、持続的発展に向けて、地域が持つ特性や課題に対応した効果的・重層的な取り組みを推進。
(1)多摩・島しょの振興
 成熟社会に対応した行政サービスの展開、地域を支える都市インフラの整備、地域の特性を踏まえた防災対策、産業の振興を推進するとともに、豊かな自然環境の保全、教育・スポーツの振興、魅力の向上・発信、更なる活性化に向けた、利便性を高める環境整備等に取り組む。
 

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