都政新報
 
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小池都政 虚像と実像~第1部 都職員アンケート(5)/対議会/不毛な対立に内心辟易


  小池都政では議会との関係も様変わりした。2017年の都議選では、小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会が最大会派となり、議会運営を支える構図だ。公明党は小池知事の国政進出以降、与党から離れ、「是々非々」のスタンスに。ただ、キャスティングボートを握っており、存在感が強い状態は変わっていない。これに対し、自民党は政策にコミットできる立ち位置から大きく後退。野党として執行機関側の批判を強める場面も増えている。
 職員アンケートで議会との関係について聞くと、「都政が安定した」には89・2%が「思わない」と答えた。その一方、「論戦が活発になった」にも74・9%が「思わない」と回答。都民ファと自民が対立するなど、政策の論戦と言うよりは、政局による混乱と受け止めている様子がうかがえた。本庁課長級(50代)は「余計ないさかいが増えて、議論すべきことが脇に置かれている」と評する。
 第1党の都民ファに対しては、熟練度に対して厳しい指摘が多い。
 「都民ファは個々の議員は優れた人もいるが、会派としては未熟」(50代・本庁部長級以上)、「都民ファには荒唐無稽な質問をしようとする議員も多い。予特の混乱を見ても、与党として実力不足」(40代・本庁課長代理級)
 一方、野党に苦言を呈する職員も。「自民の大人げの無さが職員の残業などの負担を過大にしている」(50代・出先部長級以上)
 会派間の対立に困惑する傾向は強く、「自民はまるで国会の野党のように『反対のための反対』をしているように思える。都民ファは政党の体をなしていないし、議員個々の不勉強が目に余る」(60代・その他部長級以上)、「自民党がいたずらに(知事を)攻撃して議会に混乱をもたらしている。一方で都民ファも最大会派として議会をまとめようという努力を欠いている」(40代・本庁課長代理)
 他方、公明に対する見方も複雑だ。本庁課長代理級(40代)は「公明党が与党として突出し、自民党が野党として行動しており、理事者側として対応が大変」と吐露。出先課長級(50代)は「知事選に向けて住宅政策本部を独立させるなど、職員が振り回されている」とコメントした。
 ただ、出先部長級以上(50代)は「これまでは自民が安定していたため、予定調和が目に余った。小池都政への評価はゼロに近いが、小池知事誕生の思わぬ副産物として、自民との政策議論が活発になった」と評した上で、「会派としての成熟度は別として、都民ファも新しい風を吹き込んだことは間違いなく、混沌(こんとん)としているからこそ活性化されている面はある」と前向きに捉える見方も出ている。
 そのほか、「築地の有償所管替えを(当初予算ではなく)補正予算にねじ込んだのは議会軽視の批判を免れない。反発必至が予想されたはずなのに、なぜわざわざやったのか理解できない」と理事者側の対応に疑問を呈する意見も聞かれた。
■翼賛機関
 議会側の監視機能はどうか。アンケートでは「執行機関のチェック役を果たせている」には87・0%が「思わない」としている。
 庁内に多いのが、「第1党によるチェックが働かず、翼賛機関になっている」「チェック機能を果たすはずの第1党を事実上、知事が率いている意味が分からない」(ともに50代・本庁部長級以上)という意見だ。
 議会が知事のイエスマンになったか否かには見方が分かれているものの、「自民党の〝オジサン政治〟が良いとは言わないが、二元代表制の下、知事が与党を直接、支配する構造を作ってしまったのは決定的に駄目だ」(60代・その他部長級以上)と案じる声が出ている。
 国との関係が希薄になっているとの見方も強い。「国との関係強化につながった」には96・4%が「思わない」としている。
 「自民を過度に敵視した議会運営は、国との連携が必要な各分野の職務についている職員にとってはマイナスでしかない」(50代・本庁課長級)、「自民の国政への影響力をもう少し考慮した方がよい」(30代・本庁主任・一般職)
 議会対応で職員の労力が増しているとの悩みは尽きないようで、「職員の負担が増えた」には73・5%が「思う」と答えた。
 個々に差はあるが、「議会との関係が正常化された。事務方による原稿書きがなくなり、議員の能力・力量が問われるようになり、良かったのでは」とする意見の半面、「職員が質問を作る体制は続いており、口利きはむしろ顕在化してきた。知事と都民ファと野党の三方を見なくてはならなくなり、負担が大いに増している」(ともに40代・本庁課長代理級)と嘆く職員がいた。
 また、「知事側しか知るはずのない情報が都民ファの議員に流れて余計な調整で負担が増えている」(50代・本庁部長級以上)という指摘や、「自民の質問が取れずに職員が板ばさみになっている」(同)など、会派間の対立のあおりを受けている感想が散見された。
 全体としては、与野党の不毛な対立にへきえきとしつつ、二元代表制の下で知事が事実上率いる政党が最大会派を占める現状に違和感を持つ傾向がうかがえた。
 

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