都政新報
 
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小池都政 虚像と実像~第1部 都職員アンケート(6)/知事選/都政の安定、職員は切望


  都職員アンケートでは、小池都政と歴代都政との比較や再選出馬の是非、知事にふさわしい人物像について考え方を聞いた。
 歴代の知事の中で、平成以降で「都知事にふさわしい」と思う順番を付けてもらったところ、1位が最多だったのは鈴木俊一氏。実務型の行政手腕などが評価を集め、60・1%が1位を付けた。2位も20・2%に上り、揺るがない評価となった。本庁課長代理級(40代)は「自治体運営のベースは堅実・安定で、目的は住民の生命・安全を確保し、福祉の向上を図ること。それにふさわしい能力・人格を有する人は鈴木知事だけではないか」と言う。
 次いで都職員が評価したのは石原慎太郎氏で、1位が25・1%、2位が39・0%。ただし、2人とも末期になると厳しいコメントが増えた。
 小池知事は6人の中では3位に食い込む評価だったが、鈴木、石原の2知事からは引き離され、5・4%が1位に付けた。一方、5~6位とした割合は計31・4%に上り、中位に票が集中した青島幸男氏よりも低い評価が多かった。
 小池都政について、本庁課長級(50代)は「大きな失策がない。リーダーシップを適度に発揮している。国とのパイプもある」として、続投を要望。ただ、「働き方改革を掲げているものの、超勤は一向に減らず、午後8時の一斉消灯も無意味」といった苦言も付けた。また、別の本庁課長級(50代)も「これからの時代、女性ならではの視点は地方自治体の行政運営に不可欠、政治目的もあろうが、フットワーク良く色々と声を聞いたり現場に行く姿勢は評価したい」とした。
 一方、小池知事を下位に位置づけた職員からは、知事としてのビジョンや実行力の欠如を指摘する意見が目立つ。
 例えば、本庁課長代理級(40代)は「現知事にはビジョンが感じられない。派手に目立つとか、場当たり的な動きしかできない」と酷評。本庁部長級以上(50代)は「東京の在るべき姿を自らの言葉や行動で示すのが知事の役目。LED(照明の交換)や木塀、自動ブレーキ補助のような思い付きの施策だけでは駄目」と断じた。出先部長級以上(50代)は「度を越した女性優先人事で都庁の人事を破壊している。問題がある人物も優先的に昇任させ、職員が警戒するようになっている。長期的に見て女性にもマイナスの影響がある」と私見を述べた。
 なお、猪瀬直樹氏、舛添要一氏は任期途中で辞任したことが評価の低迷の要因となっている。
■再選出馬の是非
 7月の都知事選に向けて、小池知事は現在までに態度を明らかにしていないが、再選出馬が確実視される状況だ。この是非を尋ねると、反対が42・6%で、賛成の21・5%を上回る結果となった。「分からない」は34・5%を占めている。
 「賛成」に多いのは、前任3人が任期途中で辞職したことから、「知事は頻繁に変わるべきではない」という見方だ。出先課長代理級(40代)は「早く都政に向き合うことで安定させてほしい。知事がコロコロ変わるようでは信頼を得る都政運営は不可能」とした。
 「他の候補がいない」といった消去法による回答や、五輪の直前での交代に難があるという声も少なくない。出先課長級(50代)は「合格点ではないが、五輪を他の人がやるのは無理がある。もう1期やって向上があれば、チャンスは与えても良いのでは」と言う。
 また、「功名心に走る有名人が当選するよりは、小池知事の方がまだいいかも」(40代・本庁課長代理級)、「これまでの都政の問題点を明らかにしたのは功績。改革に伴う混乱は多少、目をつぶり応援し、支えていくべき」(50代・出先課長級)との回答が見られた。
 これに対し、「反対」では、パフォーマンスに走らない手堅さや職員への信頼を求める声が強い。
 出先課長級(50代)は「五輪後の後始末だけでも大変なのに、新たに無意味なパフォーマンスを始められてはかなわない」。本庁課長代理級(40代)は「(小池知事が)再選しても不幸が繰り返されるだけ。五輪終了後の景気後退で東京は取り返しのつかないところまで追い込まれるかも」と危機感を示した。
 また、小池知事が一時、国政進出の動きを見せたため、都政への熱意は「見せかけ」という受け止めも根強い。「4年間で考えた場合、五輪後の都政に小池知事が興味を持てるかは疑問」(30代・その他課長級)。
 都知事の条件としては、本庁部長級以上(50代)は「職員の進言を尊重し、パフォーマンスに走らないことを条件に、発信力のある人が良い」、本庁課長級(40代)は「自民と交渉できる政治力や霞が関を論破できる知力・人脈を持った元官僚がふさわしい」とした。
 都知事選は1100万人の有権者を相手にし、知名度がものを言うため、庁内では「芸能人の人気投票にはなってほしくない」という見解は多い。職員の多数派は安定感のある実務者を待ち望む傾向が見られたが、「都知事に真の適任者が就くことは不可能と感じる」(40代・本庁課長級)、「近年はテレビ受けを狙ったパフォーマンスが横行している」(50代・出先部長級以上)という嘆き節も。トップがパフォーマンスを優先する傾向にある中、地方自治体に求められる業務をいかに遂行すべきか苦(く)悶(もん)する様子がうかがえた。
 =「第1部」終わり。「第2部」では小池都政の組織・政策について考察します。
 

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