都政新報
 
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小池都政 虚像と実像~第1部 都職員アンケート(3)/政策/「都民受け」に実務者の苦労


  小池都政1期目では、築地市場の移転や五輪準備などが重要課題となった。また、都独自の取り組みとしては、受動喫煙防止条例や待機児童対策などで存在感も見せている。アンケートでは1期目の各政策について、「評価できる」「評価できない」の二択で聞いた。 =4面に「自由意見」
■八方美人
 際立って評価が低かったのが市場移転延期だ。小池知事は2016年の知事選で、市場移転を「立ち止まって考える」と宣言したが、その後、盛り土の欠落がクローズアップされるなど、2年遅れでの開場となった。
 土壌汚染対策の追加や環2開通の遅れを含め、知事の「総合的な判断」について、86・5%が「築地は守る、豊洲は生かす」という基本方針には89・7%が「評価しない」と回答。築地まちづくりも同じく批判が多い。
 本庁課長代理級(40代)は「2年の時間と無用な費用を投じただけであり、市場業者の寿命が縮んだ。それ以前のプロセスがあたかも間違っていたかのような印象操作は都政を傷つけただけ」とし、最終的には「方針を踏襲しただけ。築地を守る取り組みは何ら行っていない」と批判。本庁課長級(40代)は「二つの市場が成り立つことはあり得ない。聞こえの良い言葉で世論を動かした責任は重い」と厳しい。
 市場の地下空間の存在が露見するなど、都側の手続きに瑕(か)疵(し)があったことは事実で、知事の発信力は大きかったが、本質論ではなかったことから、本庁課長代理級(50代)は「盛り土をしなかった理由を整理もせず、処分が先行し、『自分が良く見られよう』としているのが良く分かる。八方美人的な発想」と断じた。別の本庁課長級(50代)は「知事就任前からオリ・パラに向けて環2を何とか間に合わせようとした所管の思いと努力を無駄にした罪は重い」と憤りを見せ、「レトリックや屁理屈で逃げた感が否めない」と切り捨てた。
■世論の共感
 五輪準備では、競技会場の変更検討やマラソン・競歩の札幌移転などで知事の判断が問われる場面があった。特にマラソン・競歩会場の移転問題ではIOCに抵抗し、世論の共感を呼んだ。ただ、庁内の受け止めは「評価する」の40・8%に対し、「評価しない」が57・8%で上回り、都民ほどの支持は得られていない。
 高い評価では「パフォーマンスとの批判もあるが、冷静に見ると着実に実績を重ねている。小池知事にしかできないリーダーシップを発揮し、世論を動かした」(40代・本庁課長級)、「都民や都職員の悔しさを代弁してくれた」(40代・出先課長代理級)とする声がある。
 ただ、経緯や内情を知る職員にとっては関係機関との連携が不十分との見方が強く、本庁課長代理級(40代)は「IOCや国から本当の意味で相手にされていないことが露呈した。知事は静かにしていた方が良かったのではないか」と辛辣(しんらつ)に語る。組織委やIOC、国との連携については87・9%が「評価できない」と答えている。
 五輪準備ではまた、特別顧問らの助言に従い、ボート会場などの変更を打ち上げたが、79・8%が「評価できない」。最終的には経費を一部削減し、現行の会場に落ち着き、本庁課長代理(30代)は「経費削減を強いた結果、暑さ対策に多大な経費を投じる必要が生じるなど、場当たり的でイメージ優先の判断」と批判した。また、「建設費が抑えられ、組織委は苦労しているようだ。(予算の)肥大は良くないが、もう少しお金を付けてもよいのでは」(50代・本庁課長)という意見も。庁内的には経費削減には60・5%が「評価できない」と答え、実務者の苦労がにじむ。
 その他、大会の交通対策ではスムーズビズ、暑さ対策では「かぶる傘」が打ち出され、交通対策は59・6%が「評価できる」とした。「スムーズビズは各企業の取り組みを促し、社会的な働き方改革ともシンクロして、好循環を生み出している」(50代・その他部長級)などの意見が聞かれた。
■突破力を評価
 小池都政1期目の政策で最も評価が高かったのが受動喫煙防止で、80・3%が「評価できる」と回答した。これは舛添都政でも検討されたが、議会側の反応に腰砕けに終わった経緯があり、「新しい発想、民間の有能な人物とのコネクションやバイタリティーに秀でている。『和を以て尊しとする』ことを重視していないように見受けられ、反発・混乱を招くことがあるが、都政には必要な要素」(40代、本庁課長代理級)と突破力を評価する意見があった。
 また、待機児童対策も65・9%の職員が評価した。知事公約で掲げた「待機児童ゼロ」は達成されておらず、従前からの積み重ねであるとは言え、「5千人減」の実績が評価されたようだ。
 ただし、「待機児童の数ばかりがクローズアップされ、子育てのシステムをどのように構築していくのか、将来のストーリーが見えない」「特に未婚者、若者の貧困対策が弱い。未婚率が下がらない限り、少子化は止まらない」と対策の強化を求める意見があった。
 全体的には、受動喫煙防止など過去の都政が積み残した「宿題」の対応が評価される一方、市場移転延期や競技会場の変更のように経緯や職員の進言を無視した「都民受け」重視の政治判断には強い抵抗感が見られた。
 

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