都政新報
 
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小池都政 虚像と実像~第1部 都職員アンケート(2)/知事像/高い行動力、乏しい責任感


  直近の3知事が任期途中で辞職するという前代未聞の状況の中、「東京大改革」をぶち上げて当選を果たした小池知事。過去の知事と比べても精力的に現場に出ており、2017年の国政進出に失敗して以降は「都政に専念する」として熱心な姿勢を打ち出しているが、職員らは「知事像」をどう見ているのか。
■変わらぬ評価
 小池知事の都政運営について「はい」「いいえ」の二者択一で聞いたところ、職員の共通認識だったのが「パフォーマンスが先行している」という項目で、「はい」が実に93・7%を占めた。「独断的な行動が都政運営に影響を与えている」には89・7%が「はい」と回答している。
 本紙では17年7月、小池都政の1年目を評価する職員アンケートを実施したが、当時も「パフォーマンスが先行」には94・4%が、「独断的な行動」は89・6%が「はい」と答えており、1期目後半に至っても都政運営に対する見方がそれほど変わっていない。
 小池知事は任期の前半で、外部から招聘(しょうへい)した特別顧問らを重用。都職員の進言を聞かぬまま、築地市場の移転延期やオリ・パラ競技会場の変更検討などに踏み切ったが、後半は顧問団を退かせ、プロパーの知事補佐担当を中心とする体制に切り替えている。いわばシフトチェンジを図った形だが、そうした中でも「職員の声に耳を傾けている」には86・5%が「いいえ」と回答している。
 評価が低い理由として多いのが、政局や個人的なパフォーマンスを優先しているとの見方だ。中には「自民党一辺倒」だったかつての都政運営に対する疑問符から、「歴代の知事と比べても都政のことを真剣に考えている。自民党が都政を動かす古い体質を打破した」(40代・本庁課長級)という声や、過去3人の知事が任期途中で辞職する異常事態を受け、「都政に人々の関心を集めたのは一つの成果。前任者2名の汚名返上としては評価できる」(50代・出先課長代理級)など、直近の都政と比較して改善したとする意見もあるが、否定的な意見はそれ以上に多い。
 小池知事は五輪のマラソン・競歩が札幌に移される過程でIOCや組織委員会と対(たい)峙(じ)するなど、「敵」を仕立てて自身を演出する政治手法を取ってきた。このため、庁内には「周囲や対立者をおとしめて自分の評価を上げることしか考えていないと感じる。『守るべきもの』『変えるべきもの』という本質以外で物事を進めている」(40代・出先課長級)、「自分の政治的なパフォーマンスのために都政を利用している。都政の将来を考えていない」(50代・部長級以上)など、冷めた見方が目立つ。
 「思い付き」に対する批判も根強い。小池都政ではトップダウンで、高齢者を対象とする麻雀・カラオケ大会やeスポーツなどの事業が各局に降ってきているが、「思い付きで始まるプロジェクト、自民党以外への全方位外交で本人が何を最優先にしているのか分からない。表に出るまでのプロセスがまさにブラックボックス」(50代・本庁部長級以上)という声が聞かれた。
 眼前の成果を急ぐという評価も多い。出先課長級(50代)は「すぐに成果が出るものや、一見、都民受けするものに飛びつく傾向が強い。もっと長期的視野に立って、都民にとって本質的に必要な政策を進めてほしい」と求めている。
■はぐらかしの態度
 小池知事の印象としては、行動力やスピード感を評価する意見が多数を占めた。
 行動力や決断力、責任感など、知事個人の印象を「はい」「いいえ」「どちらとも言えない」の三択で聞くと、「行動力がある」には61・4%が、「スピード感がある」には48・9%が「はい」と答えている。
 現場の視察を重ね、週末は大小問わずにイベントに出席するなど活動量は歴代知事でも群を抜き、本庁の主任・一般職員(30代)は「様々な分野にメスを入れて改革しようという姿勢、行動力は評価できる」とコメント。部長級以上(50代)は「現場によく出向いている。過去の知事と比べて仕事量が多く、都民にも見えている」と答えた。
 また、無電柱化や時差通勤などの知事公約を引き合いに、「成果が出るかは将来を待たないと分からないが、世論を味方に付けて引っ張る姿勢は評価できる。オリ・パラの成功に向けて行動しているところも好感」(50代・本庁課長級)といった声が聞かれた。
 一方、否定的な側面では「職員を信頼している」に75・8%が「いいえ」と答え、信頼関係の欠如が浮き彫りに。「責任感がある」にも66・8%が「いいえ」としている。
 その要因としては、市場移転の延期を始めとする政局優先の政治判断が挙げられる。「自らの政治的位置づけを優先するやり方は信頼できない。本来であれば安全宣言を出す立場でありながら、『安全と安心は違う』などと都民の不安をあおり、政治的に優位に立とうとするなど、人として信じられない」(50代・本庁課長代理級)。
 そのほか、「特別顧問団と職員を戦わせて自身は『蚊帳の外』で、結果的には無関心・無責任状態。『私がAIだから』などとはぐらかす態度はいいかげんな都政運営の表れとしか評価できない」という意見もあった。
 

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