都政新報
 
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東京の未来像~有識者に聞く都の長期戦略(9)/多文化共生/「外国人」一括りにせず/江戸川区議 よぎ氏


  本名はプラニク・ヨゲンドラ氏。インド国立ビジネススクールで国際ビジネス管理プログラムを終了。1997年に留学生として初めて訪日したのをきっかけに日系銀行やIT企業勤務などを経て、2012年に日本国籍を取得。自宅がある西葛西(江戸川区)を中心に、自治会やPTA役員を務めたり、インド人コミュニティーを設立するなどの地域活動にも従事し、17年4月の江戸川区議選に当選した。

 ─当事者からみた共生社会を巡る課題は。
 共生社会を巡っては、外国人を一括りにして見ている点が問題だ。「外国人」といっても、国籍や出身国が違えば文化や生活が異なる。さらに法人や個人、働き手や配偶者、子どもがいる。子どもの中でも小・中・高校生などと分かれていき、それぞれニーズが違う。細分化した上で必要な施策を考えなくてはいけないのに、データもそろっていない状況だ。
 ─具体的には。
 行政の多文化共生に関する計画は、役所が見えている課題だけを列挙している。このため、手続きが煩雑だったり、窓口での多言語対応が不十分だったりと、サポート態勢が不十分だ。例えば個人のニーズを考えるにしても、1日なり1年単位で必要なこと、入国から出国までのビザ申請・更新など、必要な手続きを構造的に分析し、網羅的に施策を打ち出すことが求められている。
 ─長期戦略ビジョンでは、多言語対応に力を入れる考えです。
 日本語が使えなければ、子どもが学校になじめないことや、高齢者が日本の医療機関を受診できないなどの課題が生じてくる。横浜市では全国に先駆けて、外国籍の子どもが入学から2カ月間、日本語を学ぶ期間を設定しているが、最初2カ月だけ。2カ月間ではひらがな・カタカナくらいは覚えられても、普通学級で不自由なく学ぶレベルまで到達するのは難しいのではないか。日本語教育は統一的なカリキュラムがなく、自治体の裁量に任せられており、底上げする必要がある。
 ─教育に必要なことは。
 日本語教育は必要だが、言語はツールの一つ。日本人と外国人が相互を理解しながら国際的な人材教育が求められる中で、言語、慣習の理解にとどまらず、「ハート」を理解することが重要と考えている。正しい教育がなければ、お互いの不安のもとになる。海外とも対等に交渉できるか。学校教育の変革は行政がやるべきことだ。
 ─国は海外からの働き手を集めています。  人手不足で受け入れるなら何が必要か考えなくては。いろんな国から人材が集まっても、人権が侵害されれば危険な行動を起こすことが懸念される。ドイツやフランスでは今、多文化共生が不十分なため、治安の悪化などが問題化している。日本も技能実習生を受け入れる計画を進めているが、こうした技能実習生は時給が低い傾向にあり、特に物価が高い東京では、経済的に困窮する可能性が否定できない。
 ─施策立案に必要なことは。
 外国人を話し合いの場に巻き込むことだ。マスコット的な人材だけ連れてくるのではなく、例えばアンケート形式で、働き手の配偶者や子どもなどからも広く意見を集めるのが大事。都の成長を考えれば、人手不足で外国人が必要になるが、優秀なレベルの人材を連れてくるなら人権を守る施策は必須だ。エリート人材には、日本の入り口である出入国在留管理庁の対応への不満は根強い。また、現行ではビザ更新の手続きを出入国在留管理庁の窓口で申請しなければならないが、手続きのオンライン化や外国人が多い地域に出張窓口を開設するなど手続きの簡素化を希望する意見は根強い。都は外国人が多いので、現場の視点から率先して国に提言すべきだ。     =おわ
 

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