都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
東京の未来像~有識者に聞く都の長期戦略(7)/基礎自治体との連携「東京都ミニマム」実現を/前三鷹市長 清原慶子氏


  ─長期戦略ビジョンの論点整理の印象は。
 東京は「首都」であり、「国際金融経済都市」。来年はオリ・パラもあり、それらを踏まえた内容だとは思うが、広域自治体として「生活都市・東京」の視点はまだまだ足りず、都民の声を反映した具体化が必要だ。
 ─具体的には。
 三鷹市長を4期務めた経験から言えば、62市区町村の地域の実情や共通した課題の解決に向けた方向性を付加することが望ましい。都の長期戦略は市区町村がそれぞれ持っている長期計画の総和である必要はないが、その実現の現場は基礎自治体になる。戦略に血を通わせるためにも、戦略の充実と実現の担保は、市区町村との連携によって進むことが期待される。
 ─広域自治体が長期戦略を考える上で重要なポイントは。
 長期戦略を掲げる時には都民に理解・納得してもらうことが必要になる。三鷹市では「民学産公」の協働で地域課題を解決する仕組みづくりに取り組んできたが、都では民間企業が経済活動だけでなく社会貢献に力を入れ、大学・都民が積極的に市民活動に参画していることが強み。住民票を持つ1400万人にとどまらず、都市の「原動力」として生かすため、「民学産」との協働を前面に出すべきではないか。
 ─特に東京の長期戦略で重要な視点は。
 都は全国に先駆けて少子長寿化、独居化が進んでいる。生活環境の基盤、特に(1)情報通信(2)教育・生涯学習(3)防災・防犯(4)地域包括ケア─の四つを強固にしてほしい。
 例えば、子どもから高齢者までスマホが必携の時代だが、情報通信には功罪があり、ポジティブに使える半面、特殊詐欺やSNSを介した誘拐などの犯罪にも使われ得る。民間と連携し、安全で生活の質を向上させるICT利用の基盤づくりに挑戦してもらいたい。
 ─現在の市区町村との関係については。
 小池知事が努力されたのは、団体としての市区町村長会だけでなく、首長と1対1で対話する機会を作ったこと。ただ、もっと多摩地域の多様な生活課題を知ってほしい。多摩地域について言うと、知事公約の「多摩格差ゼロ」は、はっきり言って道半ばだ。例えば、子ども医療費や固定資産税の減免などでは、23区が有利。生活のベースになる部分は、市区町村が施策を競わなくても良いように、「東京都ミニマム」で公正に平準化してほしい。三多摩の都民が安心できる政策を打ち出していただきたい。
 ─多摩地域の首長を務めた立場から注文は。
 東京は首都だが、多摩地域や島しょ部を含め、世界に誇る素晴らしい自然、農業や文化が社会資源となっている。戦略の中に、それをきめ細かく書いていただきたい。
 ─広域自治体として都に期待することは。
 ビジョンの中で国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)をコンセプトとして打ち出したことは重要なこと。広域自治体として、62市区町村と手を携え、「誰一人として取り残さない」政策を進めてほしい。
 広域自治体の政策はつい「広くあまねく」になりがちが、都がセーフティー・ネットとして、市区町村が制度の狭間で困っている子ども子育て支援、福祉や防災等の諸課題の解決に注力してほしい。市区町村の取り組みを尊重した上で成り立つのが都の戦略だと思う。
 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針