都政新報
 
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都2022年度予算案/一般会計過去最大、税収好転/施策の新陳代謝、スピード強調


  都は1月28日、2022年度予算案を発表した。一般会計は7兆8010億円で3年ぶりに過去最大となった。都税収入の回復を追い風に、コロナ後を見据えたサステナブル・リカバリー(持続可能な回復)の実現や東京2020大会のレガシー構築などを柱に、ゼロエミッション化やデジタルトランスフォーメーション(DX)などの政策的経費に積極的に予算配分した。小池知事は同日の記者会見で、予算案と職員定数を発表し、「世界が大きく変化する中で、東京が成熟都市としてさらに進化するために必要な予算と組織を作り上げた」と述べた。=4面に「分野別予算」「組織・定数」

■歳 入
 都税収入は5兆6308億円で、前年度比5858億円(11・6%)の増。当初予算案時点では3年ぶりの増加に転じ、19年度に次ぐ規模となる。コロナ禍でのテレワークの普及や「巣ごもり需要」を受けて、1.T・エンターテインメント関連産業を中心に企業収益が持ち直したことで、都税の根幹となっている法人二税が前年度比4750億円(33・0%)の増となったことなどが作用した。
 税収増を受け、都債は発行を抑制。前年度はコロナ禍での厳しい財政状況を支えるために積極的に活用したが、発行額は2930億円(49・9%)減となる2946億円とした。一方で、環境改善や社会課題解決を目的とした「ESG債」は積極的に活用し、前年度と同水準の1千億円規模を維持する。環境関連の投資を募る「東京グリーンボンド」では、ZEVの導入や充電設備整備を充当先に追加する。
 また、基金は「3つのシティ」の実現に向けた社会資本等整備基金や防災街づくり基金など計5604億円を取り崩す。東京大会の開催準備基金は、五輪大会の精算完了まで維持する方針で、22年度末残高見込みは311億円。コロナ対応のための財政出動で21年度には年度末残高見込みが一時21億円にまで落ち込んだ財政調整基金は、税収増の一定額を充てる「義務積立」によって22年度末残高見込額は3927億円にまで回復する。
 また、これまで別々に行っていた「政策評価」と「事業評価」を一体的に実施して予算編成に反映する新たな取り組みをスタートした。施策の新陳代謝を促す狙いで、1117億円の財源を確保して新規事業568件を構築した。

■歳 出
 政策的経費を示す一般歳出は5兆8407億円で、2286億円(4・1%)の増。知事肝煎りの環境施策やDX化の関連経費を積極的に予算化したのに加え、前年度は主に補正編成で対応していたコロナ対策経費は3カ月分の医療機関の空床確保料やワクチン接種、検査費用など総額3610億円を計上したことも規模を押し上げた。財務局主計部は「結果的には(一般会計は)過去最高額だが、都税収入が好調だから都財政を膨らませるために伸びていることとは違う」と解説し、現在の原油高などの都財政の不安要素にも目配りが必要との認識を示す。
 投資的経費は9776億円で373億円(4・0%)の増。風水害対策や骨格幹線道路整備などを進めるため3年ぶりに増額となった。公債費は都債償還で4・0%増の3456億円。税収増に伴い、税連動経費等は9・1%増の1兆6146億円となった。
 目的別で見ると、東京大会の都負担分を計上していた「企画・総務」以外の全区分が前年度よりも増加した。特に住宅への太陽光発電導入や水素ステーションの普及に向けた補助事業などにより「生活環境」は40・1%増と大幅にアップ。「福祉と保健」も、コロナ対策経費などで31・8%増になった。

■「希望の光」に
 来年度予算案が過去最大規模となる要因に、コロナ禍からの「サステナブル・リカバリー」に向け、世界に遅れを取る脱炭素化やDXを進めるための予算を措置したことがある。小池知事は「次の世代が歩む未来を希望の光に満ちたものにするために全速力で前に進む決意で予算編成に臨んだ」と力を込めた。
 特にゼロエミッションでは2030年までの「カーボンハーフ」を念頭に、既存住宅に太陽光発電を促す補助制度を創設するなど971億円、前年度比289・8%増と重点配分したのが特徴だ。
 他方で、東京大会のレガシー構築にもつながる共生社会の実現に向けては、同性パートナーシップ制度を導入するため、オンラインで届け出を受け付けるシステム構築などの経費を盛り込む。
 財務局によると、小池知事が強く指示しているのが事業執行の迅速化という。例えば、公共工事はこれまで1年目に調査、2~3年目に設計、4年目から工事などと年度ごとに進行してきたが、今後は年度途中でも前倒し可能な作業に着手することで、効果を都民に早期に還元する考え。債務負担行為も活用してスピードアップを図る。 
 規模とともに執行方針にも積極的な姿勢を前面に打ち出した形だが、その一方で、実効性の検証は欠かせない。太陽光発電設備やZEVの普及には部材・製品の廃棄やリサイクルが課題となっている側面もあり、数を増やすことのみが先行すれば問題のツケは将来世代に回る。「大盤振る舞い」を都市のレベルアップに確実につなげる戦略が求められている。
 

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