都政新報
 
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攻めと守りと~都2018年度予算案(9)/五輪・パラリンピック/準備本格化で予算額倍増


  1月26日、都が公表した来年度予算案に五輪経費として「大会に関連する事業」という新項目が加わり、説明を受けた報道陣に動揺が走った。その額は2020年度までに約8100億円。昨年5月に都と組織委員会、国で合意した大会経費は総額1兆3500億円で、うち都の負担額は6千億円だった。これにバリアフリー化や観光振興、無電柱化などの「大会関連経費」を加えると、経費が2倍強に膨らむことになる。国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長から昨年、経費の削減要求を受けていただけに、「どういうことなのか」という受け止めが広がった。
 しかし、この捉え方は「誤解」だった。都はこの予算の「見せ方」を軌道修正。いたずらに「大会経費が膨らんだ」との誤解が広まるのを防ぐため、小池知事は2月21日の施政方針表明で「大会を契機として4年間で取り組む事業の経費を示した」と、「関連」ではなく「契機」と強調した。
 「64年大会と社会の制度設計が違う」。知事は1月26日の会見でこう言及。首都高や新幹線などに変わる、現代版の後世に残る「レガシー」を、大会を契機に構築していくことになる。
 都財政全体のフレームから離れ、大会準備経費の特徴を見ると、新規計上する共同実施事業が目立つ。都の来年度の同経費は前年度比652億円増の1146億円を計上しているが、増額要因はほぼ共同実施事業の実施分で、予算額は753億円に上る。
 共同実施事業は、都や国などの財源を活用し、組織委が実施する事業だ。負担と執行が分離する同事業を無駄なく適切に遂行するため、この3者は昨年9月に共同実施事業管理委員会を設立し、事業の進(しん)捗を(ちょく )互いにチェックしている。
 共同実施事業に関する来年度の大事業は仮設整備だ。都は都外自治体施設の仮設インフラ費用なども負担。都施設の仮設分と合わせ、464億円を積んだ。組織委によると、設計から工事まで一括して発注する「デザインビルド方式」を想定し、来年度本格的に契約締結が始動する。
 だが、事業進捗には懸念材料がある。一つは都が試行中の入札改革の影響だ。現在のところ、入札不調率が高まった主因の希望1者以下の場合に入札を中止する「1者入札」は見直される見通しだが、組織委は「五輪準備は待ったなしの状況。入札不調をどう回避するのかは課題で、入札改革の適用を含め、都と調整している」(共同実施事業管理部)と話す。
 更には、リニア工事の談合疑惑の影響も及ぶ。都は大成建設と鹿島の2社を指名停止処分としており、組織委は「扱いは現在調整中だが、都の方針と合わせざるを得ないのでは」(同)と述べ、複数の大手ゼネコンが入札に参加できない事態も想定される。
 一方、ハード整備に加え、ソフト面の事業が本格化するのも来年度の特徴だ。中でも募集を開始するボランティア事業が際立つ。
 都は計3万人の「都市ボランティア」の確保を目指し、9月中旬に受け付けを開始。来年2月~5月に面接を行う方針だ。予算には関連経費に前年度比7億円増の10億円を充てた。
 だが、人材確保が課題だ。組織委の「大会ボランティア」は8万人のため、辞退者などを見込み、計11万人以上の人材が必要になる。東京マラソンでもボランティア数は1万人程度で、あまりに規模が大きい。都五輪準備局は「老若男女問わず、幅広くターゲットを設定しているが、夏休み期間のため、大学生が参加しやすい時期だ。大学の試験日程をずらしてもらえるよう国に働き掛けたい」(運営担当)と語る。
 競技会場のある自治体との連携も重要で、都によると関係区市町村と実務者レベルで検討を進めている。都内最多の10会場がある江東区は「組織委や都を補完する『第3のボランティア』の発想で、区が独自に支援する可能性はある」(五輪開催準備課)と話す。
 刻一刻と迫る東京五輪。大会成功に向け、待ったなしの状況に入った。
 

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