都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
攻めと守りと~都2018年度予算案(8)/市場会計/持続可能の鍵は築地売却


  「中央卸売市場として築地市場跡地を再整備する考えはない」。小池知事は1日の都議会代表質問で、都民ファーストの会の質問にこう答える一方、引き続き築地再開発を推進する方針を強調した。
 知事はこれまで築地跡地に市場機能のある「食のテーマパーク」を整備する考えを示しており、来年度の市場会計に築地再開発の検討費として5400万円を計上した。同検討費は、築地跡地のまちづくり方針の策定に向けた調査委託が中心となる。
 築地再開発では市場を造らないのに、なぜ検討費を市場会計から支出するのか─。5日の一般質問で日本維新の会から矛盾点を突かれた村松明典中央卸売市場長は「中央卸売市場が(築地を)保有しており、その再開発の検討に要する経費である(ため)」と強弁した。業界団体の幹部は「地主だから払うという理屈は通らない」と不快感を示した。
 築地が市場当局の所有地である限り、再開発の関連経費の支出が経常化し、将来的に市場会計を圧迫する危惧もある。
 一方、豊洲市場の開場後は同市場の減価償却費や維持管理費などがかかる問題もある。市場移転問題を検討した小島敏郎元特別顧問を座長とした市場問題プロジェクトチーム(PT)の報告書によると、減価償却費を含めた場合の市場会計は「毎年度100億~150億円の赤字となり、使用料収入の大幅な増額や市場会計の改善の見込みはない」としている。これは本当なのだろうか。
 来年度の市場会計は、収入が236億3800万円に対して、支出は635億5600万円を見込んでいる。市場会計では毎年度、収入は厳しく、支出は多く見積もり、例年、約50億円の赤字予算を組んでいる。来年度の赤字額が多いのは特別損失(247億1600万円)が影響している。
 特別損失は、移転延期に伴う市場業者への補償(42億円)、築地閉場による固定資産の減(27億円)などだ。この特別損失を除くと、152億円の赤字となり、例年より赤字が膨らんでいるのは移転支援経費(29億円)、豊洲市場での追加対策工事(12億円)なども要因だ。
 実は赤字予算であっても、00年度以降は移転延期を決定して補償費などが膨らんだ16年度を除けば、決算は黒字化している。中央卸売市場は「市場の清掃委託費は入札で価格を競い、結果としてコストを抑えられる」と説明する。
 豊洲市場の減価償却や地域冷暖房などの光熱水費などにより、19年度以降の予算では例年より収支が厳しくなると見られる。中央卸売市場は「実際に稼働してみないと、どうなるか分からない」と話している。
 市場会計を持続可能にするには、築地跡地を一般会計に移す有償所管換えが鍵を握る。実現すれば、築地の売却益で資金ショートの恐れがなくなるとともに、再開発関連経費は一般会計から支出することになる。都職員は「有償所管換えをすれば、(市場問題PTの小島氏が中心にまとめた)報告書通りにはならないはず」と指摘する。
 さらに来年度予算案には、豊洲市場の活性化(1億円)が新規事業として盛り込まれた。開設者である都が仲介する形で、市場業者と産地・小売りとのビジネスマッチングを行う。中央卸売市場は「豊洲の取り扱い量が増えるように取り組む」と目的を語る。
 都は豊洲市場の開場による市場会計全体への影響を最小限に抑えつつ、市場業界と一丸となって豊洲ブランドを形成することが求められている。
 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針