都政新報
 
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攻めと守りと~都2018年度予算案(7)/防災/無電柱化実現はるか先


  「クールビズでネクタイを取らせていただいた。今回は無電柱化で電信柱を引っこ抜いていきたい」。小池知事はまだ衆院議員だった2014年11月10日、無電柱化の日記念日制定発表会に登壇した際、こう発言していた。
 知事は当時、自民党の無電柱化推進小委員会の委員長を務め、無電柱化に関する法律策定に奔走。同発表会には、公明党の太田昭宏国土交通大臣(当時)や高野之夫豊島区長ら、今でもつながりの深い関係者が登壇し、同日の「無電柱化の日」をこぞってお披露目した。
 小池知事は2016年の知事選公約でも、「都道の電柱ゼロ化・技術開発の支援」を優先順位の高い施策に掲げ、無電柱化は小池都政の目玉事業になっている。先月9日に都無電柱化計画(仮称)素案を公表した際、知事は「とりわけ熱心に取り組んでいる無電柱化」と思いを披歴。来年度予算案でも、17年度比29億円増の288億円の関連経費を盛り込んだ。
 知事は予算案を発表した1月26日の会見で、「今だからこそ(無電柱化を)強力に推進していきたい」と改めて意気込んだ。
 都は19年度末までに環状6号線の内側にある歩道幅が2・5メートル以上の完成済み都道について、無電柱化率を100%にするなどの目標を掲げる。
 ただ、都民が無電柱化を実感するまでの道のりははるか彼方(かなた)。都建設局が昨年末に都政改革本部で示した資料によると、全都道の無電柱化には約100年間を要し、総費用は約1・2兆円に上る。
 更には、都内道路の約9割を占めるのは区市町村道で、その無電柱化率はたったの2%(14年度現在)。電線類を地中化する歩道が狭いことや、技術的ノウハウの不足、コストの高さなどが事業進捗を阻む。
 こうした状況もあり、都は都内全域の無電柱化率の目標値を設定しておらず、知事も先月9日の会見で10年後の目標値を問われた際には、明言を避けた。
 無電柱化はまさに「百年の計」だが、加速化のポイントとして「面的な整備」(建設局)がある。
 既存道路を400メートル無電柱化するには約7年間を要するが、市街地再開発や土地区画整理事業と一体で無電柱化すれば、区市町村道での促進が期待できる。予算案には区画整理事業で無電柱化を実施する場合に助成を加算する仕組みを新設(3億円)。さらに、都市開発区域外での無電柱化延長に応じ、開発区域の容積率を緩和する施策も導入するなど、事業を一歩ずつ前進させる構えだ。
 一方、防災施策として知事が公約で掲げた不燃化や耐震化も着実な取り組みが続く。
 木密対策では、新たに木密地域のうち都が指定する整備地域住民を対象に民間賃貸住宅などの受け皿整備に向けた調査費用を計上(0・8億円)。移住先を確保することで、高齢者らが経済的理由で立ち退かない事例の打開の一手とする。足立区では木密対策として同様の集合住宅を整備したが、全68戸のうち約9割が入居中という。
 住宅の耐震化では、助成対象を木密整備地域以外の全住宅に拡充するメニューを新設した(7億円)。国が新設する制度の活用がきっかけだが、都民の経済的負担を軽減し、取り組みを加速化させる狙いだ。
 しかし、進捗は芳しくない。木密の整備地域内の不燃領域率は20年度までに70%を目標とするが、15年度現在で62%。平均上昇率は年1ポイントのため、達成できるかは微妙なラインだ。一方、住宅の耐震化率は20年度末までに95%を掲げているが、14年度末で83・8%にとどまっており、更に実現が厳しい。
 ともに高めのチャレンジングな目標値としている側面は否定できないが、都民の経済的な理由が進捗を妨げる主因となっており、目標と現状のギャップを埋めるためには、事業を加速化させる更なる取り組みが求められる。数百年先の東京の未来像を視野に、都の取り組みは続く。
 

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