都政新報
 
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攻めと守りと~都2018年度予算案(3)/都民・職員提案/予算化も人員措置なく


  
都民から事業提案を受けるのはどうか─。職員から目安箱に送られた提案を見た小池知事は「一度やってみる価値はある」と判断し、都政で初めて都民提案を予算に反映させる取り組みを始めることになったという。
 今回、都が募集したのは▽子育て支援▽高齢化対策▽働き方改革▽防災対策▽空き家活用▽環境対策─の6分野で、都民から255件の提案を受けた。各局が実現可能性や事業効果などを検討して26件に絞り込み、都民投票(総数4185票)を経て9事業を選定した。
 当初、懸念されたのは団体などから利益誘導する要望が提案されることだったが、事業局の職員は「特に見受けられなかった」と振り返る。
 都は都民提案による予算枠として10億円を用意したが、子育て支援員に元気な高齢者を確保したり、自然を活用した保育を行う取り組みなどに計8億5千万円を計上した。例えば自然を活用した保育では、都民から自然の中で保育を行うという提案内容だったが、実現性などを考慮し、保育所の園外活動支援となった。ほかの事業も、実現できるようにアレンジしたという。ある局の幹部は「提案した都民が見たら、イメージしたのと違うと言われるかもしれない」と課題を挙げた。
 一方で、職員による事業提案も開始。小池知事が環境相時代に職員から事業提案を募り、実際に提案者に予算だけでなくポストも新設した経験がベースになっており、各局の垣根を越えて、職員が都政運営に参画することを狙った取り組みだ。
 職員からは164件の提案を受け、各局が実現可能性などを探り、実行プランに関する見通し調査、東京の都市景観の調査、都有地での駐車場整備など15件に2億1千万円を予算措置した。ある局の職員は「アイデアとして面白いものもあったが、通常業務が忙しい中で提案を受けたのは正直つらかった」と漏らす。
 都民・職員提案には共通課題もある。各局の要求に対する予算と人員は措置されるが、都民・職員提案制度は予算化されても、人員増となっていない。幹部職員の一人は「事業化して予算は付いても、人員が措置されなければ職員の負担が増えるだけだ」と不満を述べた上で、2019年度以降の予算編成でも事業提案制度を継続する場合は、定数との連動を求めた。
 また、都民・職員提案事業は基本的に単年度の予算措置となっているが、19年度以降も各局が継続すべきと判断した場合、事業評価の対象となる。知事の肝煎りだが、評価する際は通常の事務事業と同様に厳しい姿勢が求められる。
 初の試みとなった都民・職員提案制度に関して、都財務局は「多くの都民や職員が事業を考え、多くのアイデアが出てきた。また、都民からはどういう事業をやってほしいかニーズが分かった」と評価する。一方で、「都民提案の投票を行ったが、200票台の得票で予算化するのは違和感を覚える」と首をかしげる幹部もいた。
 都民・職員提案により、議会側も影響を受けそうだ。都民ファーストの会の幹部は「ちゃんと住民の声を拾っているのか問われることになるので、議員も良い刺激になる。議員もアイデアを形にして、議員条例を提案していきたい」と強調した。
 19年度の予算編成でも、この事業提案制度は知事の判断次第だが、継続することが見込まれる。都民や職員の都政運営への参画を促す攻めの姿勢により、議会からの提案も活性化し、都民サービスが向上するのであれば成果の一つとなる。
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