都政新報
 
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都2018年度予算案/「人」に着目し積極予算/一般会計2年ぶりの7兆円台へ


  都は26日、2018年度予算案を発表した。小池知事が編成する2度目の予算は、一般会計が前年度比920億円(1・3%)の増となる7兆460億円で、2年ぶりに7兆円台となった。新規事業は過去最高の407件に上る一方、事業評価により過去最高の870億円の財源を確保し、一層のメリハリを付けた。待機児童対策や超高齢者社会への対応などに積極的に予算配分。小池知事は26日の会見で「人に着目した予算」と位置付けた。=6面に「職員定数」「分野別の主な事業」

■歳 入
 企業収益の堅調な推移により、法人2税が伸び、都税収入は前年度比1421億円(2・8%)増の5兆2332億円。本来であれば、約5兆3372億円を確保できる見通しだったが、地方消費税の配分割合の見直しに伴い1040億円(都分が520億円)の減収となった。
 都財務局によると、減収分がなければ保育サービスを利用する3万人分の保育施設(300施設以上)と定員5千人分の特別養護老人ホーム(50施設以上)の整備が可能だという。
 都債の発行額は876億円(29・4%)減の2107億円で、将来世代への負担を考慮するとともに、将来の発行余力を残している。都債残高は6年連続の減。起債依存度は3・0%で、3%台に回復するのは08年度以来、10年ぶり。国(34・5%)や地方(平均10・6%)と比べ、都は健全財政を維持している。
■基 金
 基金は、交通基盤整備に活用する分を社会資本等整備基金から切り分けて、鉄道新線建設等準備基金(仮称)を創設する。小池知事は「(地域住民の)年齢が高くなると自動車を運転できない可能性も出てくる。東京の交通を充実させるのは地域の発展につながる」と強調した。
 同基金の原資は、東京メトロの株式配当分(約620億円)とし、毎年積み立てていく。新空港線(JR蒲田~京急蒲田)、東京8号線(有楽町線)、多摩都市モノレール(上北台~箱根ヶ崎)など、国交通審議会で新線や延伸の事業化に向けて検討すべきとした6路線の財源に充てるが、新年度はどの路線に措置するか未定。
 また、小池知事が掲げる「三つのシティ」の実現に向け、基金から今年度当初予算と比べ560億円多い3954億円を取り崩す。さらに、知事査定を経て、東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金への1588億円の積み増しが決まった。財源は16年度決算の剰余金(1288億円)と国庫支出金(300億円)を充てる。
 都財務局は「国から都の基金残高が多すぎるという話がある中で、オリンピック・パラリンピックなどを目指して(基金を)蓄えてきたことを対外的に知ってもらうため」と理由を説明し、東京富裕論への批判をかわしたいとの意向も見て取れる。
■歳 出
 政策的経費である一般歳出は前年度比1387億円(2・7%)増の5兆1822億円とした。東京五輪の準備の本格化が増要因の一つとなった。
 20年度までの五輪経費は、恒久・仮設施設の整備や大会関係者の輸送などの大会経費6千億円に加え、外国人受け入れ環境の充実やボランティアの育成など大会関連経費を約8100億円とし、計1兆4100億円かかるとの見通しを初めて示した。18年度予算には大会経費983億円、大会関連経費2275億円の計3258億円を計上した。
 また、一般歳出を目的別に見ると、福祉と保健が前年度比238億円(2・0%)増の1兆2048億円で過去最高となり、待機児童対策や超高齢社会への対応に積極的に取り組む考えがうかがえる。
 経常経費は4兆700億円で、1001億円(2・5%)の大幅増となった。主な増要因には、東京五輪の準備で職員採用が増え、給与関係費が148億円増となるほか、一般的に月額32万円とされるベビーシッターの利用料を最大28万円まで補助するため、50億円を計上したことなどが挙げられる。
 投資的経費は386億円(3・6%)増の1兆1121億円で、2年ぶりにプラスとなった。特別養護老人ホームの建設補助(249億円)や保育所整備助成(334億円)など福祉インフラ整備を進めるとともに、中小規模の河川の護岸工事など豪雨対策(830億円)や無電柱化の推進(288億円)といった災害対策に財源を重点配分した。
 公債費に関しては、これまでに発行した都債の償還を進めた結果、前年度比682億円(13・6%)減の4320億円となった。
■小池カラー
 ワイズスペンディング(賢い支出)を掲げる小池知事は引き続き、事業評価による見直しを実施した。今回は都の全5千事業のうち、1086件が事業評価の対象となり、676件の見直しや再構築を実施。これにより過去最高の約870億円の財源を確保した。
 評価手法には、インフラ整備などで他の自治体を参考に事業の妥当性を検証する「客観的指標」(エビデンス・ベース)による評価を新たに導入。例えば、老朽化している大田都税事務所は改築の必要があったが、単独で改築すると容積率に余剰が発生。近隣にある大田区の特別出張所などと合築した場合、他県の合同庁舎の工事単価とほぼ同水準となるため、合築が決まった。
 一方、「三つのシティ」の取り組みを盛り込んだ実行プランに関しては、100%の予算化を図り、総額1兆5444億円に上る。また、新規事業は過去最高の407件(523億円)を立ち上げた。
 中でも、小池カラーが色濃く表れたのが超高齢社会を見据えた取り組みだ。認知症の地域ケアモデルなどに2億円を投じたのを始め、空き家の公的な活用(2千万円)や高齢者の健康づくりを啓発するサポーターの育成(300万円)など、総額13億円を措置した。
 また、環境施策にも小池色が見受けられた。庁有車の電気自動車(EV)への切り替え(1億円)や電動バイクの購入費補助(4千万円)など電気自動車の普及促進(6億円)、都有施設や都営住宅、道路照明のLED化(66億円)を進める。これらの取り組みの実現に向けて、小池知事は「都民や事業者の重層的な取り組みを展開していく必要がある」と語った。
 小池知事の関心が高い無電柱化には、前年度比29億円増の288億円を計上し、都営住宅の外周道路などでの推進、土地区画整理事業での無電柱化助成などの新規事業を盛り込んだ。
 新年度予算編成で、知事の肝煎りで導入したのが都民などによる事業提案だ。都民提案には10億円の枠を用意していたが、都民によるインターネット投票や知事査定を経て空き家の庭貸し出し支援など9事業で総額8億5千万円を盛り込んだ。都財務局は「都民が提案し、都民が選ぶことで、都政への参画に(一定程度)つながり、意義があった」と語った。
 

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