都政新報
 
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2年遅れの移転~築地から豊洲へ 山積する課題(5)/脱「築地化」/土地転貸など警備強化へ


  築地市場の正門を入ると、車両の通路の両脇に商品を載せた木製パレットが整然と並んでいる。築地から他の市場に転配送などを行うため、業者が無断で場内の空きスペースを使用している。中には数時間が経過しても、そのまま置かれている商品も見受けられる。
 本来、商品を市場内の空きスペースに置けば敷地の使用料が発生するが、現在、土地所有者である都中央卸売市場は徴収していない。築地市場に貨車で商品を搬送していた時代には、貨車の到着時刻に合わせて荷降ろしを行った業者から使用料を徴収していたが、その後、輸送手段は貨車からトラックに代わり、搬送する時間帯が異なるトラックの出入りを都が管理できなくなったからだ。
 ある市場業者は「築地には業者の待機駐車場がないので、場内での荷さばきに目をつぶってほしい面もある」としながらも、「長年にわたって根付いている築地の悪しき慣習の一つであることに変わりはなく、使用料を徴収していないのは都の管理能力がないからだろう」と問題視する。
 さらに、築地市場では、業者が不法に空きスペースを又貸しして「賃料」を取るケースもあるという。市場問題に詳しい都幹部は「既得権益化しているのは間違いないが、空きスペースを又貸しする闇取引の実態はよく分からない。まずは豊洲市場に移転するのが解決の第一歩となる」と見ている。
 都は豊洲開場後、警備を強化する考えだ。豊洲市場の維持管理費は移転延期前に1日当たり700万円と試算された。うち、警備費は280万円に上り、全体の4割を占める。警備の強化は、業者が空きスペースに商品を無断で置かないか監視するためだという。
 ただ、警備だけではスペースの又貸しなどの根絶は困難だ。かつて市場に在籍していた都幹部は「管理者である中央卸売市場がルール化し、業者を指導することを警備と併せて数年間徹底してやらないと、(スペースの又貸しという)『築地の闇』を葬り去ることができない。罰則を作り、不退転の覚悟でやるしかない。トラックバースでの荷さばきが定着すれば、警備費は徐々に減っていくはずだ」と明かした。
 商品を築地市場内に置くことは、衛生管理上も問題だ。実際、築地市場の空きスペースに冷凍品を置いて解凍している業者もおり、夏場は商品が傷む原因となりかねない。また、築地は閉鎖型の施設ではないため、一定の温度を維持して産地から搬送する「コールドチェーン」は実現できないが、閉鎖型の豊洲では可能となる。豊洲でも商品を築地のように外部に置く慣習が続けば、豊洲移転の意義を問われかねない事態となる。
 コールドチェーンが途切れないようにする対策として、市場業者に築地での慣習をリセットする「脱築地化」を徹底させるしかない。衛生管理の徹底は「豊洲ブランド」を構築する重要な要素の一つにもなり得る。都と業者が一体となって新たな市場を形成すべきだ。
 

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