都政新報
 
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2年遅れの移転~築地から豊洲へ 山積する課題(4)/費用負担/豊洲開場前に合意形成を


  豊洲市場の青果棟の真向かいに巨大な円筒状の施設がある。豊洲移転延期前の2016年5月に完成した東京ガスの「豊洲スマートエネルギーセンター」だ。その名の通り、発電した電気の廃熱を活用し、豊洲市場を始めとした近隣地域に冷水や温水等を供給する。
 豊洲では市場内全体の空調に活用し、低温管理を行う。この全体空調の費用は、施設の維持費用などに相当する「基本料金」と空調の使用料に応じて各業者に課される「従量料金」で構成されている。基本料金は、都として全業者から均等に負担してもらう予定だったが、業界の反発が出たため、都が負担することになったという。
 都は16年春ごろに業界団体に全体空調費など1店舗(8・3平方メートル)当たりのモデル使用料を提示した。空調費は築地で業者が最も多い水産仲卸の場合、マグロを陳列する冷蔵庫・冷凍庫「ダンベ」の種類によって異なる。ダンベは室外機との「一体型」と「分離型」に分けられるが、「一体型」は室外機からの廃熱により店舗内を暖めてしまうため、多くの冷気を送り込む必要があり、公平性の観点から「分離型」(1台当たり3333円)の2倍近い6500円程度に設定した。だが、業界は「高い」などと反発し、合意には至っていない状況だ。
 一方、業界団体からは、施設の通路などは特定の業者にとどまらず不特定多数が通るため、「都が負担すべき」との要望が出された。また、全体空調費に水道や電気代も含めた光熱水費は築地を上回らないよう要請した。
 こうした要望の背景には、市場業者が抱える重い負担がある。業者の一人は「移転費用に加え、冷蔵庫などの買い替えもあり、経常的にかかる経費をできる限り抑えたい」と本音を漏らす。仮に業者が全体空調費などを商品に転嫁すれば顧客離れが進みかねない。一方、都が負担することになれば、維持費が膨らみ、市場会計を圧迫する恐れがある。
 全体空調費などに関して、市場問題に詳しい都幹部は「一筋縄には解決できないので、豊洲市場の開場日を決めるよりもはるかに難しい課題だ。早く業界団体と協議を再開すべき」と警鐘を鳴らす。
 同幹部が懸念するのは、全体空調費など業界側の負担が豊洲開場前に決着するかどうかだ。都と業界団体が折り合わないまま10月11日の開場を迎えた場合、空調費などが徴収できないという最悪の事態も想定される。都中央卸売市場は「業界からは経費負担を分かりやすく説明してほしいと言われているので、(開場前の決着に向けて)説明を尽くしていく」(新市場整備部)と話している。
 さらに、業界からは都の負担が増える要望も出ている。その一つが、床などの洗浄に使用するろ過海水施設の買い取りで、移転延期を契機に再燃している。業界側が設置したが、都が買い取れば維持費が膨らむことになる。かつて市場に在籍していた都幹部は「一度決着した話だが、蒸し返されている。非常に難しい宿題だ」と顔を曇らせた。
 都と市場業者の負担を巡る綱引きは、今後にしこりを残さないためにも、お互いが納得できる形で早急に決着させる必要がある。
 

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