都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
2年遅れの移転~築地から豊洲へ 山積する課題(2)/引っ越し計画/関係者との調整が急務


  都知事選が終盤を迎えていた2016年7月末。都と築地市場の団体幹部で構成する「引越準備委員会」が築地から豊洲に移転する際の引っ越し計画を策定した。だが、わずか1カ月後に小池知事が移転延期を決定したことで、計画は公表されることなく、幻と消えた。
 引っ越し計画は、同年11月7日の移転を前提にしていたため、豊洲に移設する物量の違いなどから今年10月11日の移転にはそのまま活用できず、改定を余儀なくされている。
 都中央卸売市場は昨年10月、移転時期が今年9~10月に絞り込まれてから、移転延期により打ち切った日本通運との業務委託契約を再締結した。主な日通への業務委託は、引っ越し計画の策定補助に加え、市場業者の冷蔵庫、包丁などの調理器具、陳列棚など、移設する物量の調査だ。前回の日通の調査によると、築地閉場から豊洲開場までに移設する物量は2トン車換算で5100台に上った。
 引っ越し用トラックは、各業者が個別に手配する取り決めとなっている。ある市場業者は「トラックを手配するのに半年間もかかった」と振り返り、「また一からやり直しだ」と疲れ切った表情で語った。
 引っ越し時の課題の一つが小型運搬車「ターレ」の搬送だ。当初の「11・7」の引っ越しに関しては、場内から築地大橋を渡り、環状2号線を走行し、豊洲に向かうルートが予定されていた。環2には、補助314号線との交差点(晴海5丁目)があり、道路での運転に制約のあるターレを自走するには警視庁月島署との協議が必要となる。
 同交差点では、朝から夜にかけてバスやごみ収集車が通過するため、都と調整していた同署からは「(交通量の少ない)深夜の時間帯に(この交差点の)占有許可を取れば、ターレが通過できるようになる」とのアドバイスを受けていた。だが、移転延期によって白紙となり、同署との再協議が急務となっている。
 また、「10・11」の移転に向けては、新たな課題が浮上している。五輪選手村の工事車両が環2の豊洲―晴海5丁目の一部区間を使用しているため、施工業者との協議が不可欠となる。工事と引っ越しに影響が及ばないように交通整理できるかがポイントとなる。
 仮に、晴海5丁目交差点の占有許可が月島署から得られなければ、ターレはトラックに積載して運搬するしかない。築地にはターレが約2千台あり、11トントラックで1回にわずか6台しか運べない。そのため、手配する台数が増え、業者のコスト増になるだけでなく、4日間の移転スケジュールで完了できるか懸念される。
 「10・11」の移転に間に合わせるには、業者の協力も不可欠だ。これまで、豊洲までのターレの運搬時間帯を巡っては、「朝」や「昼間」を求める声が出ていたが、当時も決着していなかった。業者の利害が一致しないため、各業者が要望を実現させようとすれば、議論は平行線をたどりかねない。移転まで9カ月を切る中、都も業者も着地点を見いだせるよう建設的な議論が求められている。
 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針