都政新報
 
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2年遅れの移転~築地から豊洲へ 山積する課題(1)/環状2号線/「地上部道路」に課題山積


   106億6100万円─。これは、都建設局が昨年末、築地市場内での環状2号線の用地取得費として財務局に要求した額だ。環2の用地は年度ごとに分割購入しており、取得総額は2019年度に確定するが、移転延期前よりも高額になる見通しだ。
 環2は移転延期前の計画では、築地大橋付近で地下トンネルから地上部に出る工事を東京五輪前に完了させる予定だった。しかし、小池知事は延期後の16年11月の記者会見で、五輪までの地下トンネルの完成を断念し、築地市場の青果門付近と築地大橋を結ぶ「地上部道路」を五輪までに整備すると表明した。
 地上部道路は、豊洲移転後に築地市場の建物の一部を半年かけて解体してから着工する。だが、築地にはアスベストを使用している施設も残るため、外部への飛散防止を行う対策を施しながら解体工事を進めることになり、図面では把握しきれていないアスベストも否定できないため、完成時期がずれ込む不安材料となっている。
 中央卸売市場は「周到に調査し、半年間で工事を完了させるという目標に向けてやっていく」(施設課)と話している。
 だが、懸念材料はそれだけではない。解体工事に当たっては、立体駐車場など一部の施設を除き、電気や水道などインフラを遮断するが、神田市場が89年に大田市場に移転した際、一部の業者が居残ったように、強硬な移転反対派が築地に残る可能性もあり、スムーズな移転ができるかが課題だ。
 さらに地上部道路が通る場所では土壌汚染も確認されている。対策工事を行うかは、建設局と環境局が協議の上、決定する。また、青果門付近でも移転後に土壌汚染調査を行うため、有害物質が検出されるかは予断を許さない状況だ。
 地上部道路が完成した後も課題は残る。環2が当初の計画通りに全線開通していれば、虎ノ門~晴海5丁目区間(約3・2キロ)は信号がなく、渋滞していなければノンストップで運転できる予定だったが、今回の仮設工事では既存の幹線道路を渡ることになる。新橋駅付近から地上に出て、築地市場内の地上部道路にたどり着くには新大橋通りの五つの信号を通過しなければならない。この区間では海岸通りや第一京浜などと交差しており、五輪期間中に大会関係者がこの道路を使用すれば、大渋滞が予想される。
 地上部道路の在り方にも課題がある。都建設局は、傾斜のある築地大橋とつなぐ地上部道路の両脇を擁壁にするのか、盛り土にするのか、工事を請け負う大成建設と詳細を詰めることになるが、同局は「(五輪後に)地上部道路の一部を壊す可能性がある」と説明する。この地上部道路を巡っては、建設に反対する声が市場業界から上がっている。
 ある市場業者は「五輪期間中だけ使い、その後に道路を壊すのであれば、小池知事が掲げるワイズスペンディング(賢い支出)とは言えない。また、渋滞すれば、地域住民からも喜ばれない」と指摘する。
 小池知事は移転延期を決定し、政策的判断による影響が環2などに及んでおり、一層の説明責任が問われることになる。
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 豊洲市場は当初の予定から約2年遅れて開場する。市場移転に向けて、トラックの確保、豊洲の光熱水費などの経費負担、豊洲の風評被害の払拭などの課題が山積している。移転延期の影響、豊洲開場に向けた課題を6回で追う。
 

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