都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
小池知事インタビュー/東京大会をスプリングボードに


  小池知事就任から1年5カ月を迎えた。豊洲新市場の開場日は昨年末に決着したが、築地市場跡地に整備する五輪輸送拠点など、市場問題のみならず五輪準備を始め、日程面で綱渡りの局面はなお続く。更に待機児童や超高齢社会対策など避けられぬ都政課題も山積する。知事の考えを聞いた。

 ─就任して1年5カ月が経った。成果とこれからの課題は。
 この間、(これまでの)都政の整理整頓と、将来の種まきを同時並行でやってきた。成果は、例えば都政改革本部。これまでの都政をもう一度、自分たちで見直し、どこが改革できるのかを今、進めている。将来的にも都民にお預かりしているお金だったり、都民の行政をよりスムーズにするためには、まだ感じていないかもしれないが、効果がこれから出てくると思っている。
 就任して最初に取り組んだのが待機児童対策。補正予算だったり、市区町村長の皆さんから現場の声を聞いたりして定員を2万人増やした。実際は保育士の数や場所の確保が追い付かないということで、1万6千人の確保ということであるが、いい土台ができた。「東京都イコール待機児童」ということなので、引き続き待機児童対策は進めていく。(保育サービス定員増の)1万6千人は、活躍できるようになる女性の数でもある。前から「ダイバーシティ」と申し上げているが、人口の半分が女性であることを考えれば、その中で埋もれていた未利用エネルギーが、都の待機児童対策によって動き出したということは喜ばしい。
高齢社会がテーマ
 ─来年度予算で「小池カラー」を出したい独自路線は。
 東京のテーマも日本のテーマも実は明確に前から決まっている。それをどれくらいのエネルギー、お金、人をかけてやるかという比重の置き方の問題だ。人という観点で言うと、明らかに東京が直面することになる高齢社会が大きなテーマになってくる。
 ─高齢社会対策の新機軸はあるか。
 例えば60歳、65歳でリタイアした方々は皆若い。パワフルだ。この力を生かさないのはもったいない。だから、シニアの皆さんが地域でこれまでの経験でベンチャーを目指すとか、もう一度学び直しをするとか、元気なシニアをどう社会の中で生かしていくかという部分を強調したい。これは人間の尊厳の話。かつてクールビズを始めた時、「ネクタイは取ってもいいが、名刺は取らないでね」と言われた。特に日本男子たるものは、名刺はとても重要な存在証明。(リタイアした)皆さんがずっと名刺を持って、自分が社会の中で必要な、生かされている存在だということを確認できる環境作りをお手伝いしたい。だから予算というよりは考え方の話。
 ─知事の発信力が生きる部分ではないか。
 例えば、企業で経理を担当していた方などが町会の会計で頑張っていただくとか、そういう話は既に東京の隅々で行われている。それを更に「プロボノ」(仕事などの専門性を生かしたボランティア活動)というシステムで、より実質的に生かせるような方法を町会の皆さんに知っていただくことも既にやっているが、こういったところを強調していきたい。
市場問題は「目鼻」
 ─市場移転では、築地市場跡地整備など五輪への影響を懸念する声もあるが、移転(延期)の判断は正しかったか。
 私はそう思っているし、築地の跡地利用などについてもこれで目鼻がついて、関係者も安(あん)堵(ど)していただいていると思う。
 ─一方で豊洲地域の風評被害や千客万来施設の話も残っている。具体的なアクションが必要と思うが。
 それぞれ丁寧に都として対応させていただいて、風評被害については既に行っているが、豊洲市場の見学会だとか、市場の存在そのものをいろいろな形で発信していく。これに努めていきたい。
 ─知事自身の具体的なアクションは。
 市場は基本的にとても開放的なところなので、皆さんが市場に遊びに来るというような場所になればいい。いろんなイベントもこれから展開していくことになる。
 ─残りの任期が2年半となった。将来像を含め、どのような都政を目指すか。
 やはり20年の東京大会は目指すべき大きなテーマ。これを成功させるのが私の役割。そのためにもハードもそうだが、ソフト面での機運醸成。それからロンドン大会が成功だったと言われる二つの理由は、パラリンピックに重きを置いたことと、大会が終わった後、観光客がむしろ増えたということだ。ロンドン大会から学ぶこととして、そういう右肩上がり。よく大会が終わった後の景気のことを心配する方も多い。右肩下がりではなく、64年の東京大会が一つのスプリングボード(契機)になったように、「2回目のパラリンピックを無事、成功させ、それが超高齢社会の入り口にある東京の新たなスプリングボードになった」となるよう準備を進めたい。
「職員と共に歩みたい」
 ─課題が山積する中で職員に求めることは。
 都政改革本部で、各局で自律改革を行っている。それによって、これまで当たり前だった都政の手続きだとか、運営を改めて、そこでより活性化して進めていこうということを各局で進めている。都庁で働く皆さんが自信やプライドを持って、そして都民のために尽くす奉仕者としての認識を持って、共に歩んでいただきたい。
 ─反対に職員の動きで足りない点は。
 いえいえ。いろんな場面で職員の働く姿、職員が緻(ち)密(みつ)に準備した様々なイベントだったり、政策、行政だったり、目に触れるというか実際に私自身が(働きぶりを)実感することがよくある。これからも17万職員が前を向いて、一歩一歩、歩んでいただけるような環境作りをしていきたい。
 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針