都政新報
 
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検証・舛添都政2年~第3部・都職員アンケート(上)/職員の8割「及第点」/「パフォーマンス」に苦言も

 
   「舛添都政の1期目前半の評価は63点」─。舛添都政が2月9日で1期目前半を終えるのを前に、本紙で都庁職員に対してアンケート調査を行った。舛添知事1期目前半の取り組みに100点満点で点数を付けてもらったところ、平均点は63・6点となった。合格点に当たるかの問いには、「合格」「まあ合格」を合わせて78%が及第点を付けた。舛添都政の「スピード感」などが評価され、「都庁の雰囲気が良くなった」と感じる職員が多かったが、前任者等との比較による「消極的な評価」も見受けられた。反面、否定的な意見では、「パフォーマンスが過ぎること」などを挙げる声が目立った。                 =4面に「自由意見から」と集計結果概要

 アンケートでは1期目2年間の都政運営の印象を、項目ごとに「はい」「いいえ」「どちらとも言えない」の選択肢で聞いた。
 最も多くの職員が持つ舛添知事の印象は「スピード感がある」で45・8%の職員が回答した。次いで「都庁の雰囲気が良くなった」(41・0%)、「東京五輪に向け、ハード施策が進展した」(40・3%)の順となる。
 スピード感については、矢継ぎ早に政策を打ち出す姿勢や、長期ビジョンで数値目標を設定して取り組む姿勢が評価されているようだ。自由意見では「短期間で様々な政策や目標を設定している」(部長級以上、50代)などの声が寄せられた。
 ただ、中には「『100キロのスピード』はこんなものか。具体的な成果が思い浮かばない」(課長級、40代)と成果不足を指摘する声や、「目先だけでなく、もっと長期的な視点から取り組んでほしい」(部長級以上、50代)といった要望も寄せられた。
 一方、「そうは思わない」とした回答で最も多かったのが「ワーク・ライフ・バランスが進んだ」で、42・3%が「いいえ」と答えた。舛添知事が強調する働き方改革は、まだまだ職員が実感できるレベルではないようだ。
 また、「都民参加が進んだ」も41・0%が「いいえ」と回答。舛添知事は「万機公論に決すべし」を政治信条に、水素社会の実現や金融センター構想など、自身が関心を寄せる分野で数多くの有識者会議を立ち上げたが、職員には「都民参加」とは捉えられていない様子がうかがえる。「都民参加」については、「どちらとも言えない」も55・3%となり、「進んだ」はわずか3・8%と最も少なかった。
 このほか、進んでいないという声が多かったのが「都庁改革」(38・9%)、「地方との連携」(38・0%)、「区市町村との関係」(37・5%)の順だった。
 さらに、判断がつかず、「どちらとも言えない」との回答が最も多かったのが「都民参加」と「区市町村との関係」で、いずれも55・3%に上った。裏を返せば、舛添都政として目立つ取り組みがなく、施策の印象が弱かった部分と言えそうだ。
 意外なのは「情報発信・情報公開が進んだ」について、「どちらとも言えない」と回答したのが52・1%に上ったことだ。舛添知事はツイッターやウェブマガジンで積極的に情報発信しているが、職員にとっては、行政としての情報発信と言って良いか、判断がつかなかったようだ。 
 また、新国立競技場を巡る発言で波紋を広げたことも、高い評価につながらなかった理由の一つだろう。自由意見では、「情報発信に熱心なのは良いが、吟味せずに出してしまうことが多々ある」(課長級、50代)、「意見の分かれる問題について、議会に先んじてブログで明確な意見表明をすることは、都民目線に立っていたとしても問題を複雑化させる弊害の方が大きい」(部長級以上、50代)など、ツイッター等による情報発信をマイナスと捉える声が目立った。

 舛添知事1期目2年間の取り組みについて点数を付けてもらった。
 最も多かったのが「61点~70点」で全体の33%、次いで「51点~60点」(28%)、「71点~80点」(18%)の順となった。81点以上の高得点は3%いたが、「0点~40点」と低い点数とした職員は7%いた。
 職層別で分析すると、部長級以上が64・5点だったのに対し、課長級は64・7点、課長代理級以下は61・2点と職層が低いほど点数が低かった。
 ちなみに、石原元知事が3期目終了前の10年12月に本紙で行った職員アンケートで、石原都政1~3期目の評価を聞いたところ、石原都政の1期目はディーゼル車排ガス対策の推進や外環道整備の凍結解除などに取り組んだことなどもあり、平均点が71・1点と高かった。石原都政ではその後、期数を重ねるごとに評価が下がり、3期12年間の評価の平均点は62・9点だった。
 点数だけを見ると、職員の舛添都政に対する評価は、石原都政の3期12年までの総合得点と変わりがないように映る。もちろん舛添都政の場合、まだ1期目半ばでの採点であり、アンケートの中でも「就任から2年近くしか経っていないので、(評価は)これから」(課長級、50代)との意見も見受けられた。
 だが、自由記述のコメントを見る限り、評価の根拠は「成果の有無」よりも、「バランス感覚」や「前任者との比較」「パフォーマンス」といった部分がキーワードとなっているようだ。
 高い評価を付けた職員の声の中で浮かび上がってくるのが「安定感」や「バランス」というフレーズだ。「どんな課題に対してもそつなく対応している」(課長級、40代)、「都政に対する基本姿勢があまりぶれないので安心感がある」(部長級、50代)、「冒険が無く、安全運転の印象」(部長級、50代)などの声があった。
 ただ、バランスがあるということは、施策のメリハリが薄いことの裏返しでもある。「無難に都政運営を行い、知事が本当はどの施策に力を入れたいのかが分かりにくい(課長代理級、40代)との声もあった。
 また、前任者等との比較で消極的に評価を下す職員も多く、「石原元知事よりは好印象」(課長級、50代)、「猪瀬前知事との比較では、話を聞く姿勢を持っている」(課長級、40代)との声が寄せられた。
 特に、職員と直接接する場面となる知事ブリーフィングが変わったという声も多かった。
 「ようやく普通の知事になったという感じ。理解力が優れている。説明が普通に行われ、正常化した」(課長級、40代)、「知事ブリがスムーズになり、知事サイドから突然、現場が混乱するような話が無くなった」(課長級、50代)などと評価する声が多かった。「出席者へ意見を求める姿勢が見られた」(課長級、40代)という回答も、これまでの知事との違いに対する驚きだろう。
 ただ、前任との比較では「前任、前々任の知事よりは良いが、だんだん方向性は見えなくなっている」(部長級以上、50代)と先行きを不安視する意見もあった。
 一方、低い評価を付ける職員に多い声が「目立ちたがり屋」という印象だ。
 50点を付けた職員は、「目立つ事業に力を入れているように見受けられる」(課長代理級、50代)と指摘。40点を付けた職員は、「自分が目立つこと、マスコミに取り上げられることが基準になっている」(課長級、50代)と手厳しい。「パフォーマンス第一主義の対応はやめてほしい」(部長級以上、50代)と注文を付けた職員は30点とした。
 中には、「石原、猪瀬知事よりもずっと良い」としながらも「目立ちたがり屋なので、本人の望みとは逆に、かえって評価を下げているのが残念」(課長級、50代)との声や、「自分が目立つこと、マスコミに取り上げられることが判断基準になっている。前の知事の末期に雰囲気が似ている」(課長級、50代)という声も寄せられた。
 ただ、いずれにしても具体的な成果が少ない中での評価だ。「落ち着いてきているが、何となく前任者、前々任者を意識し過ぎの感がある。1期2年間としては上々ではないかと思う」(課長代理級、60代)と冷静な意見も聞かれた。

■アンケートの概要 本紙は舛添都政が1期目前半を終えるのに当たり、昨年12月上旬に都職員アンケートを実施した。本紙購読者の都職員を中心に940人を無作為に抽出。うち296人から回答があった。有効回答数は293人で有効回答率は31.17%。職層別の内訳は部長級以上20.8%、課長級49.1%、課長代理級27.6%、主任・一般と無記載2.3%。
 

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