都政新報
 
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291万票の衝撃~小池都政が始動(下)/小池カラー/試される知事の突破力

 
  

 「東京は日本のエンジン」「東京のブランディング強化」─。選挙期間中は自民党都連との対決姿勢や市場移転の「立ち止まって考える」発言、2階建て車両導入による通勤電車の満員解消策など、過激な発言や独自の考えが耳目を集めた小池氏だが、知事就任後に口にする都政の位置付けや方向性は、これまでの前任者等の口から聞いたことがあるフレーズが少なくない。5日の会見で打ち出した来年度予算の見積もり方針の中の「スクラップ・アンド・ビルド」も同じだ。
 都に約3千ある事務事業のうち、時限措置など終期が設けられている事業は21%にとどまる。予算の見積もり方針では、残る事業も含めて全事業に終期を設定し、終期が来た時点で一度立ち止まって事業の必要性等を検証する「スクラップ」を行うとした。一方で、予算要望はゼロ・シーリングを原則としつつも、公約の早期実現に向け、年内の策定を目指す「2020年に向けた実行プラン」に盛り込む事業はシーリングの枠外として「ビルド」する。
 こうした事業の改廃を行う考えは舛添前知事も打ち出していた。局が自ら事業を廃止した場合、削減額の2倍まで予算要求できるインセンティブを付けるとともに、ゼロ・シーリングを基本に、都の長期ビジョンに盛り込んだ事業のうち、新規・レベルアップ事業はシーリングの枠外としてメリハリを付けていた。
 事業に終期を設けることや2倍のインセンティブを付ける手法の違いはあるものの、「スクラップ・アンド・ビルド」の発想自体に違いはなさそうだ。だが、都財務局主計部は、「舛添都政下では、スクラップももちろんあるが、主眼は新規事業を打ち出すことにあった。一方で(小池都政の)事業に終期を設けることは、スクラップに比重を置いている」と説明する。
 事業を前年踏襲で継続するのではなく、一度立ち止まって考える仕組みは、小池知事が選挙で強調した「都政の透明化」や「都民ファースト」を実現するための具体策と言えそうだ。また、スクラップを進め、実行プランの事業に上限を設けないやり方には、舛添都政下の都長期ビジョンの大きな方向性を継承するとしている小池知事が、自らのカラーを鮮明に打ち出そうという狙いが見て取れる。

■改革と継続
 小池知事が打ち出した「実行プラン」は、都長期ビジョンの実行計画として策定した来年度までの「3カ年計画」をアップデートする位置づけだ。
 「都民ファースト」の視点から2020年までの4年間の具体的な政策展開を示すもので、小池知事が公約に掲げた治安や災害対策の「セーフシティ」、女性活躍推進や共生社会実現を目指す「ダイバーシティ」、環境施策や金融・経済面での発展を推進する「スマートシティ」の実現が策定に向けた視点となる。
 また、プランの策定方針では、「これまでの進(しん)捗状(ちょく )況や成果を十分に検証し、長期ビジョン策定後の社会経済情勢や都民ニーズの変化を的確に捉えて必要な見直しを実施する」とも示されている。
 だが、長期ビジョン策定から2年弱が経ち、都を取り巻く情勢は変わりつつあるものの、劇的な変化が起きているとは言い難い。「3カ年計画」には、五輪はもとより、訪日観光客に対応するハード・ソフト面の整備や、防災・治安対策の強化、保育や子育てサービス、高齢者福祉の充実策などを盛り込んでいる。小池知事自身も「都の課題は誰が知事になっても明白」との認識を示しており、実行プランが「3カ年計画」の単なる焼き直しではなく、「小池カラー」を鮮明に出せるかが焦点となる。
 ある幹部職員は「知事は『改革』と『継続』の線引きを慎重に図っているのだろう」と話す。
 都政改革を強調して当選した小池知事だが、改革を進めるには選挙中に批判してきた議会の理解を得ることが不可欠となり、改革が実現できなければ有権者からの信頼を失いかねない。「小池カラー」を打ち出し、議会との調整をこなして政策を実現できるか。小池知事の突破力が試される日は近い。   =おわり


 

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