都政新報
 
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終の住み家は何処に/超高齢化に対峙する23区(2)


  

 tuisumi高齢者専用賃貸住宅とは?


 特別養護老人ホームなど介護保険施設の設置は、近年、抑制される方向だ。
 厚生労働省は06年度の介護保険法の改正に際し、各区市町村における「施設・居住系サービス」の指針として「参酌標準」を提示。▽14年度にサービス利用者を要介護2以上の認定者の37%以下とする▽利用者の70%以上は要介護4と5の認定者とする─などを決定した。介護付き有料老人ホームのほか、軽費のケアハウスなども含む「特定施設」の新設も、各自治体が制限できることになった。財政負担の大きい施設・居住系サービスを抑制する狙いが指摘されており、これに先立ち、施設入居者に食費、入居費など「ホテルコスト」分を自己負担とする改定が05年に導入されている。今年度開始の介護保険計画では参酌標準の見直しを求める声もあったが、厚労省が見送っている。



■都がモデル事業
 既存の介護関連施設の大幅増が見込めない状況で、「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」の普及に注目が集まっている。
 高専賃は「単身か夫婦の高齢者に賃貸する住宅」ならば、面積、設備、家賃など認定要件は特になく、設備、家賃などの情報提供だけで、都道府県や中核市に登録できる仕組みで、05年に導入された。
 介護保険制度では、高専賃のうち、「床面積25平方メートル以上」「原則的に台所、水洗便所、浴室を設置する」など一定の要件を満たす施設を「適合高専賃」と認定。有料老人ホームの届け出をしなくても、食事や介護などのサービス提供を認めている。07年度からは医療法人による高専賃経営も認められ、最近は診療所や訪問介護所を併設した施設も増えつつある。
 「要介護状態になっても居住を続けられる」施設として期待されており、有料老人ホームとの比較では、あくまで賃貸契約のため、低額での入居も見込まれる。ホテルコスト相当分は家賃などで入居者が支払い、給付抑制にもつながりそうだ。規模などにもよるが、都内の場合、月額の家賃は、おおむね10万円前後が一般的とみられる。
 都は今年度、医療・介護連携型の高専賃モデル事業を開始する予定=図=で、あわせて医療、介護サービスの事業者向けの指針を策定するという。



■施設のあり方に/課題
 23区では従来、高齢者向けバリアフリー対応の公営住宅や、生活援助員など管理人を置く「シルバーピア」の設置、提供を図ってきた。こうした住宅は原則、健康で自立した人が対象だ。
 都の高専賃モデル事業とは別に、品川区は今年度、高専賃よりも要件の厳格な「高齢者向け優良賃貸住宅」の設置に着手する。施設には、小規模多機能居宅介護施設や訪問介護ステーションを併設し、11年度の完成を予定する。
 高専賃事業への新規参入は民間でも増えているが、事業者側の思惑は微妙に異なるようだ。
 高齢者の健康状態などに応じた多様なタイプの高専賃が期待されるが、実情は、介護事業関係者によると「寝たきりなど要介護度の高い人に入居を絞るケースも多い」という。
 訪問介護や在宅診療の保険報酬は通所・通院時よりも高額で、「寝たきりの人の『住居』に赴けば、たとえ上の階でも訪問や在宅で算定できる」(関係者)という収益重視の事業者もいる。将来の規制緩和を見越して有料老人ホームへの転換を想定した施設もあるという。
 「高齢者に安定した居住を提供する」という高専賃本来の趣旨を生かすには、行政の指導監督が重要になりそうだ。


(このシリーズは全4回です)


 

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