都政新報
 
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終の住み家は何処に/超高齢化に対峙する23区(1)


  

 「高齢者200万人」時代が到来/地域ケアが新たな焦点


tuisumi 群馬県の高齢者施設で発生した火災事故は、特別区に新たな政策課題を突きつけている。人口が集中する都市部では、高齢化の受け皿となる介護施設などの慢性的な不足が指摘されてきたが、医療、介護制度が「地域」「在宅」を基本に制度設計されている昨今、高齢者の「住まい」の確保が各自治体の重責になっている。核家族化の進行、地域社会の連帯の希薄化、高い生活費用など、都市部特有の状況に対峙しつつ、高齢者に住み慣れた地域での「終の住み家」をどう提供していくのか、4回シリーズで考えていく。

 1947~49年に生まれた「団塊の世代」が65歳以上の高齢者となる2015年、東京都の高齢化率(全人口に占める高齢者割合)は24・2%になる見込みで、「4人に1人が高齢者」という時代が到来する。
 超高齢社会を迎える中で、最も深刻な課題は、高齢者の絶対数の急増だ。
 07年度の調査で東京都の高齢化率(19・2%)は全国41位だが、高齢者数は断然のトップだった。三大都市圏の大阪府(同40位)や愛知県(44位)も同様の状況であり、高齢化率だけでは、都市部の高齢化問題は把握できないと言えよう。
 特別区でも、高齢化率は台東、北、荒川区などが高いものの、高齢者数は世田谷、練馬、足立区などが上位を占める=別表。
 今年1月1日時点で都の高齢者は約249万人だが、15年にはおよそ316万人への増加が予測される。このうち、75歳以上の人口が152万人と、約半分を占める試算だ。
 現在の人口比率で単純計算すると、15年の23区の高齢者は200万人超で、そのうち100万人前後が75歳以上と推測される。
 高齢者数の急増で、老人施設などの「受け皿」や医療・介護サービスの供給不足など、高齢者の周辺環境の悪化が懸念される。核家族化による高齢者の単独世帯の多さや、地域の支え合い構造の希薄化、居住費の高さなど都市部特有の要素が、悪化を加速させる恐れもある。



■「住まい」が課題
 都福祉保健局高齢社会対策部は3月末、09年度から始まる第4期の「東京都高齢者福祉保健計画」を策定した。施設整備などに並び、「地域ケア」の基盤構築に力点を置く点が特徴的だ。近年の医療、介護保険制度で在宅型・地域密着型の高齢者福祉を目標にしている状況を受け、居住施設などハード面と、介護や医療のソフト面の双方を有機的に連動した「住まい」作りが、課題に浮上している。
 ハード面では、「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」などの住宅制度の普及が、今後の取り組みの柱に加えられ、都は今年度中に高専賃のモデル事業を開始し、助成制度も拡充する予定だ。
 ソフト面では、各自治体の地域包括支援センターに新設する「地域連携推進員(仮称)」を軸にした活動を推進し、従来の懸案だった地域内の独居高齢者の対応などにも努める方針だ。都の試算では、現在の高齢者だけの世帯は約50万世帯だが、15年には74万世帯に増えると予測され、とりわけ、75歳以上の単独世帯は42万世帯と、ほぼ倍増が見込まれる。



■施設不足の代替も
 今後、2次医療圏に準じた「老人福祉圏域」を単位に、各区は特別養護老人ホーム、認知症高齢者グループホームなどの拡充を図る方向だ。港、新宿、台東、品川、世田谷、渋谷、杉並、北、足立区などは、関連費を今年度予算に計上している。
 ただし、施設需要の伸びは未知数のため、入居者数に限りのある既存施設の代替策として、高齢者向け住宅などの普及に期待する側面もある。
 都の担当者は「住み慣れた家から、新しいタイプの高齢者施設に至る、多様な『住まい』のあり方の模索が必要だ」と強調している。


(このシリーズは全4回です)


 

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