都政新報
 
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管理職になりたい? 特別区職員のホンネ(下)

 
  

honnne求められる昇任前後の支援


 特別区人事委員会は、2008年度に05年度に次いで、管理職の昇任に関する職員意識調査を行った。昇任動機に結びつかない本音の把握や効果的な動機付け、対策を検討するための基礎資料を収集するためだ。

 対象者は、09年度に管理職への昇任を予定していた45人と08年度の管理職選考合格者45人の計90人。いずれもⅠ類で、5、6人ごとのグループインタビュー形式で実施した。

 昇任選考離れが著しい現状の問題点を挙げてもらったところ、さまざまな意見が出た。

 多かったのは、昇任前の組織的、個人的な支援や、昇任後のバックアップ体制がないということ。「育成とフォローがないと、昇任に不安を感じてしまう」「自分で頑張るしかない、だれも助けてくれないという気持ちになる」「頑張ったけれど、だめだった時の逃げ道がない。だれに相談すればよいのか」などの声が上がった。

 また、「若いうちに職場で鍛えてくれる先輩がいなくなった」「課長や係長と議論したり、一緒に会議に参加するなど、ポスト経験の機会が少ない」などキャリアアップを意識させる人材育成がないことや、昇任試験を受験しないのが常識というような職場の雰囲気があること、「管理職の仕事に魅力が感じられない」「給与処遇にメリハリがない」などのほか、「結婚、子育てなどで受験準備ができない」といった昇任試験の負担があることも挙げられた。

 特別区人事委員会では、こうした声をもとに、昇任選考離れを食い止める改善の糸口を抽出した。

 若手管理職については、「管理職になるまでの育成プログラムをもっと充実する」「議会に同席するなど経験を積み、先輩管理職から対応の方法を聞く」「管理職が横の連携をとり、部長がサポートやアドバイスする」など、管理職を育成する視点を持ち、ベテラン管理職へステップアップさせる必要がある。

 また、きっかけがないと昇任意欲が埋没してしまう層に対しては、「未経験の職務につかせる」「異動により気付かせる」「積極的に受験の声かけをする」など意図的な働きかけが重要とみている。

 さらに、昇任への意欲が非常に薄い層に対しては、「キャリアデザイン研修による意識付け」や「管理職など上位職層との積極的な交流」「目標管理型人事考課制度や職員面談の活用」など、「採用時からの計画的な動機付け、人材育成が必要」と話す。

 現在、05、08年度と2回の職員意識調査を踏まえ、別の視点から、各区に対し、昇任についてのアンケート調査を行う検討をしている。「過去2回は管理職選考を対象にしていたが、今回は係長選考も含めたアンケート内容にしたいと考えている」という。年度末には一定のとりまとめを行う予定だ。

 今年10月の特別区人事委員会の勧告は、管理職選考の申込率低迷と係長職選考の受験率低下について触れ、「昇任選考を通じて職員の能力開発を促進するという人材育成上の効果に対する懸念を惹起(じゃっき)させるとともに、人事管理・組織運営にもたらす影響も危惧されており、喫緊に対応しなければならない課題」と危機感をあらわにした。

 団塊の世代に続く大量退職時代を迎える一方で、行政需要は増している。管理職の需要数は高水準にあるにもかかわらず、申込率は低迷するという事態。昨年度にはⅠ類で制度改正があり、「受験のしやすさ」という観点から一定の成果は上げているものの、現段階では、まだ、申込率アップの決め手とまでにはなっていない。特別区の人材育成は待ったなしのところまできている。  (おわり)


 

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