都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
検証・極秘会議 豊洲新市場土壌汚染(上)


▲買出人や観光客で賑わう築地市場。豊洲にブランドを継承できるのか。
  

他に汚染源が存在する?環境基準以下でも液状化の懸念/地下水

  「豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議」(座長=原島文雄・東京電機大学未来科学部教授)は2月6日、土壌汚染対策の新技術・新工法を石原知事に提言した。昨年8月以来12回にわたる会議は、マスコミや都民には非公開で、事前にメンバーも日程も一切知らせない〝極秘会議〟だった。都は2月17日に、ようやく10回分の会議録と資料をHP上に掲載し、会議での生々しいやりとりが明らかになった。公開された会議録をもとに、極秘会議を検証する。


gokuhi土対法改正
■第4回(10月21日)

 昨年7月まで行われた専門家会議は、地下水の浄化について、(1)建物の下で環境基準以下(2)建物外では排水基準(環境基準の10倍以下)─を満たすようにし、将来的には環境基準以下にすると提言していた。
 ところが、第4回技術会議では、都側から「土壌・地下水の浄化後、土壌汚染対策法の指定区域解除の要件と同等の地下水質の確認を行うことを検討していく」とする考え方が示されている。
 この方針が、専門家会議の提言を上回る対策の出発点となる。
 委員 地下水はすべて環境基準以下にするということでよいか。
 都側 そのように考えている。
 委員 地下水を環境基準以下にするということ、2年間という長期間のモニタリングが必要なことから、生物処理を適用できる可能性はあると思う。
 委員 地下水を環境基準以下にするというのであれば、単に地下水管理でくみ上げた水を処理すればよいという考えではなく、積極的な浄化を考える必要がある。
 豊洲新市場予定地は、東京ガスの都市ガス製造工場跡地だが、すでに施設が廃止されているため、土壌汚染対策法の対象ではない。だが、現在、国では同法の改正に向けた検討が行われている。
 法改正に伴い、新市場予定地が同法の指定区域に指定された場合、指定区域を解除するには、地下水中の汚染物質を除去し、環境基準以下とし、2年間、地下水をモニタリングする必要がある。
 これを先取りしたのが技術会議の対策だった。



食の安全・安心
■第5回(10月29日)
 地下水が排水基準以下の場合、生鮮食料品を扱う地上に地下水が噴出することは避けなければならない。つまり、地上を汚染させないためには、液状化対策が鍵を握る。だが、地下水を敷地全面にわたり環境基準以下とすることで、液状化対策の意味も変わる。
 委員 地下水をすべて環境基準以下にすると変更になったことで、液状化して地表に噴水があってもよいと考えるのか。
 都側 そのように考えることもできる。
 委員 そうであれば、液状化対策工事で不透水層に配慮する必要はないのか。
 都側 そのように考えることもできる。
 委員 そうなると、対策は地下水の噴出を防ぐのではなく、構造物を守るためだけになる。現時点では、建物建設地以外は、全面的に液状化対策を行うこととしているが、構造物の被害を考えて、対策個所を再検討する話も出てくる。
 都側 市場の安全の信頼性をどのように確保するのかという観点から検討していただきたい。基本的に浄化してあるので液状化により噴水しても問題ないと考えるが、有楽町層の上部が汚染されているのではないかという意見もある。また、有楽町層は調査しないという整理をしている。



■第10回(1月15日)
 この会議で都側は、「豊洲新市場における耐震の考え方」を提示した。これまでの考え方に加えられたのは、「食の安全・安心を高いレベルで確保」という視点だった。
 ここでは、「土壌や地下水の汚染物質を除去、浄化した直後に、敷地全域すべての地下水を環境基準以下に浄化できるかどうかは不明確」と述べ、液状化現象によって地下水の地上への噴出を防止する方針が示された。
 さらに、これまで対策を行わない予定だった緑地部も、液状化対策を行うことが決まった。
 委員 市場では、安全の確保が問題であって、液状化すると、おそらく地下水と土壌が混合攪拌されるため、汚染物質が残っていたらどうするのかという懸念のもとになるのではないか。後々を考えると、このような懸念のもとは、もし安い経費で対応できるのであれば、絶っておいたほうが良いのではないか。
 委員 地下水の浄化で完全に浄化できることが担保できればよいが、他に汚染源が存在する可能性もあるので、安全性を担保するため、緑地も対策するといえば理解してもらえるのではないか。
 地下水を環境基準以下とすることで、噴出による汚染は防ぐことができる。緑地部の液状化対策は、臨海地域の他の埋め立て地でも行われていない。それでも、高いレベルの液状化対策を行う。ここに、「安全」と胸を張るだけでは解決できない豊洲市場土壌汚染問題の難しさがある。


 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針