都政新報
 
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【2009都議選】東京蘇生 兵どもの第2章


  

押し寄せる2大政党化の波/時代を映す鏡


 都議選は、7月3日の告示まで1カ月半に迫った。その折々の時代の空気を投影し、とりわけ今回は総選挙の前哨戦として、各党とも必勝体制で臨んでいる。「公明党の23は間違いないから、自民党が42とれば、議長を出しても64。127の過半数を維持できる」。あたかも42議席が自民党の最低目標ラインのように都政関係者の口にのぼり、42に何議席の上乗せを図れるかが話題になっている。これが第18回都議選を端的に表すエピソードだ。自民、民主の2大政党が正面からぶつかり、公明、共産、ネット、無所属などが議席死守に走っている。激戦区に焦点をあて、風向きを探る。 


 この四半世紀の都議選を振り返った時、エポックメーキングになるのは、青島知事時代の97年である。

 「マドンナ・反消費税」(89年)や「日本新党ブーム」(93年)のあおりを受け、40台前半で低迷していた自民党が54議席に復調し、50前後を安定的に取れる選挙戦略へと再構築したのは97年だ。共産党が第2党になったのもこの年であり、日本の戦後政治で長く野党第1党に君臨してきた社民党が、都議会では最後の1議席(北区・藤田十四三氏)となったのも97年選挙だった。

 社民党が都政の表舞台から消え行くのと入れ替わりに民主党が台頭。初めて都議選に挑み、39万票で12議席を獲得したのも97年である。この4年後には65万票で22議席、05年には得票数・得票率ともに公明党を追い抜き、107万票で35議席を確保するまでに党勢を伸ばした=表参照。

 そして、09年都議選。「目標は45議席。都議会で自公を過半数割れに追い込み、第1党を狙う」と田中良民主党幹事長。この宣戦布告に知事サイドはもちろんのこと、都幹部も戸惑い、固唾をのんで選挙情勢を見守っている。


組織政党の「壁」


 「国政選挙の得票数では、民主党と大差がついている。この票が都議選で出たら、大変なことになる」(西岡稔公明党都本部事務長)

 23人全員当選は固いと誰からも目されている公明党の危機感は、この一点にある。

 総選挙と都議選は、できるだけ期間を空けて行うよう再三、麻生首相に求めてきたが、今日まで総選挙は行われずにきた。同日選にならなかったとしても、都議選の前後1カ月くらいの間に衆議院解散が行われ、事実上、同日選と変わらない政治日程になった。

 社会党が45議席を獲得し、都議会第1党になった1965年を含め、過去の都議選で自民党が得票数で第2位に転落したことは、実は一度もない。ところが、最近の国政選挙では、都内の得票数で民主党がトップに立つ現象が見られ、直近の07年参議院選(比例代表)では、自民党が154万票、民主党は230万票、公明党は72万票、共産党が55万票だった。

 参議院選の投票率は57・86%。05年都議選の43・99%に比べて約14ポイントも高いため、比較の前提条件が違うが、公明党の得票数は投票率のアップダウンにかかわらず、いつも70万票台で同じだ。言い換えれば、無党派層が選挙に行き、投票率がアップすると、その分、当選ラインは上昇する。批判票の受け皿は民主党で、公明党や共産党などの組織政党は、浮動票の上積みが見込めないため、非常に苦しい戦いを強いられることを物語っている。

 「都議会では、国より30年早く与党の一角でやってきた。2大政党化、政権選択といった国政の話と、都政の問題は違う」(西岡事務長)と公明党はアピールするが、国政の雰囲気をそのまま都議選に持ち込まれたら、一つくらい取りこぼしがあるかもしれないというリスクが生まれている。

見えにくい都政

 15日現在、公認候補者数は、自民党59人、民主党50人、公明党23人、共産党34人、生活者ネット5人、社民党2人。このほか諸派では、行革110番の現職1人。無所属は21人で、この中には党内事情で公認がまだ出ていない前民主党幹事長の名取憲彦氏や、一人会派で活動してきた現職3人も含まれている。

 89年から01年までは、毎回250人前後の立候補者がいたが、05年は220人と少なかった。今回はさらに減少し、5月15日時点で195人となっている(本紙調べ)。今後、追加公認や無所属の立候補も予想されるが、それでも最終的に200人程度の少数激戦になる模様だ。

 都議選は「国政を占う先行指標」と言われ、理由として国の動向に敏感な有権者像が描かれてきた。確かにそういう側面はあるが、有権者にとって国や区市町村は、身近で分かりやすいが、都政は見えにくい存在。だから、都政の課題が都議選の大きな争点に浮上したことはないのである。また、政党の側も都政の課題で争点づくりに苦しみ、その結果、国政のテーマが有権者の投票行動に大きな影響を与える選挙になってきた。
 前回の都議選から2大政党の潮流が入り込み、都政における政権交代か、自民党の責任政治かを問う選挙ムードが漂う。これに埋没せず、小政党や無所属などが選挙戦で勝つには、都政の課題を争点として、どこまで有権者に訴えられるかにかかっている。 (このシリーズは全13回です)


 

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