都政新報
 
 >  HOME  >  連載・特集
2021都議選 ゲームチェンジャー 第1部・新旧交代の帰趨(3)/本選への布石/耐え難きを耐えた4年間


  昨年9月、自民党本部にほど近いJA共済ビル(千代田区)の一室で、小池知事と自民党都連の幹部が向き合っていた。両者の表情はマスクで隠れて見えないが、雰囲気は和やかで、会合の前には雑談を交わす場面もあった。
 この会合は、国の施策・予算に対する協力要請会。以前は毎年恒例の行事だったが、実に5年ぶりの開催となり、小池都政では初めてのことだった。昨年7月の都知事選を経て、都幹部らは両者の「接近」が本物なのか、それとも見かけだけなのか、注意深く目を凝らした。
■確 執
 2016年の都知事選で敗れて以降、同党と小池知事との確執は根深い。
 「自身の学歴にうそがないことを示し、都民の信頼を回復するために、カイロ大学の卒業証書を公表すべきだ」。昨年6月の都議会で、自民が取り上げたのは、小池知事の「学歴詐称」疑惑だった。カイロ大卒業という経歴に疑問符を付ける書籍が発行され、知事周辺も「カイロの話になると知事は途端に口数が減る」と漏らしていた。
 カイロ大が「卒業証明は正式な手続きで発行された」と声明を出して幕引きとなったが、自民としては知事の資質を追及する質問で、対立が際立った。同党は18~19年は予算案にも反対している。
 ただ、都知事選に向けては、同党も揺れた。
 機先を制したのは、党本部の二階俊博幹事長だ。19年3月の時点で知事の再選を「全面的に支援する」と表明すると、党都連幹部らは不快感を隠さなかった。
 同党都連は二階氏の「了解」を取り付けて候補者の選考委員会を発足させたものの、候補者は探し出せずに「不戦敗」に終わる。党本部による事前調査で小池知事の圧勝が予測されていたこともあり、「対決回避」にかじを切る。
 前回、都民ファ躍進のあおりで敗れた前職や、最前線で小池知事と対峙(たいじ)する現職らを中心に不満は強かったが、最終的には「自主投票」に。タイミングを合わせる形で同党は20年度予算案の賛成に転じている。
 党幹部は当時、「都知事選と予算審議は別の話」と強調。知事選後には山崎一輝幹事長が「直近の民意をしっかりと受け止めなければならない」とシフトチェンジの理由を説明していた。ただ、都庁内では一連の流れを「セット」で受け止める向きは多い。
■修 復
 シフトチェンジに合わせ、都議団の執行部も汗をかいた。取り組みの一つが、公明党との関係修復だ。両党は16年の議会改革で関係がこじれて以降、連携を解消しており、個人的な人間関係も相まって、議場では公明の議席から自民に厳しいやじが飛ぶ場面もあった。
 しかし、昨年10月ごろから非公式に協議を開始。共同で五輪成功決議も行い、都議会1定では公明の「こども条例」の原案作成に当たって議会内の合意形成に尽力した。自らは黒衣に徹して「お膳立て」し、こうした積み重ねは3月、自公の選挙協力という形で結実している。
 知事に対する「個人攻撃」も封じた。3月の都議会では、小池知事がコロナの緊急事態宣言の延長要請に向けて、他県知事に事実と異なる説明をして批判を浴びた矢先だったが、ほとんど言及していない。
 「後ろから斬って来る」─同党内では今も、小池知事に対する不信感や警戒心が払拭(ふっしょく)されたわけではない。実際、菅首相のコロナ対応や五輪組織委員会の森喜朗前会長の「女性蔑視発言」に絡んで、小池知事のパフォーマンス的な言動に不快感を示す都議もいる。
 それでも、全体として「大同団結」の方針は堅持する意向だ。同党都連の高島直樹幹事長は3月、公明党との共同会見で「小池知事と共に都政の発展をしっかりやる」とした上で、「盲目的に小池知事が100%ではない。是々非々で都政発展のために両党がスクラムを組む」と強調した。
 前回選挙で都民ファに苦杯を喫し、本選をにらんだ布石を打つ同党。ある党都連の関係者は言う。「耐えがたきを耐える。とにかく選挙に勝つことだ」
 

会社概要  会社沿革  事業内容  案内図  広告案内  個人情報保護方針