都政新報
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【築地移転】2010年度予算案 民・自・公で原案可決


▲予算案を可決後、ホッとした表情で報道陣の質問に答える石原知事=3月28日未明
  

築地市場の移転予算案 呉越同舟の決着
都も現在地再整備を検討


 都議会予算特別委員会は28日未明、築地市場の移転関連経費の扱いで対立していた中央卸売市場会計予算案に付帯決議を付けて、民主、自民、公明の賛成多数で可決した。民主党は、豊洲新市場予定地の用地取得費1260億円を削除する修正案を準備していたが、提案を見送り、原案可決に回った。同党の大沢昇幹事長は「修正案と同等の意味合いを持つ付帯決議がまとまり、我々の要求が盛り込まれた」と語った。しかし、会派内からは「都が現在地再整備をフェアに検討してくれるのか」と懸念する声も聞かれた。本会議の採決は、きょう30日に行われ、都青少年健全育成条例改正案を除くすべての議案が可決される見通し。



 民主党は、24日に修正案の提出を発表。これに対し、自民党は「これから都政をどうしていくのか、議会人として責任があるはず。予算執行権は知事にあり、議会にあるのは審議権と議決権だ」と話し合いを提案した。執行機関を交えた民主と自公の協議が難航し、予算特別委員会は2日間にわたって空転。締めくくり総括質疑が始まったのは、27日午後3時過ぎだった。

 水面下の協議でポイントになったのは、▽都に現在地再整備を検討させる▽予算案を可決した後、用地取得費の執行は凍結し、解除する場合に条件を付すという点だった。自民党は、知事の執行権を侵すことはできないと主張。民主党は、予算凍結解除の際にイニシアチブを握ろうと攻防が続いた。

 再開した予算特別委員会で、都は「豊洲移転が新市場整備を実現する最適な方法」という姿勢を堅持。その一方、現在地再整備を検討する組織を都庁に設置し、議会における現在地再整備の検討結果を尊重する考えを明らかにした。

 用地取得費の執行については「議会での検討結果が出され、必要性が認められるまで、予算の執行も凍結すべき」とする民主党の質問に、知事が「二元代表制の下、議会の意向を尊重したい」と答弁することで落ち着いた。

対決の舞台は新年度

 「平行線をたどってきた今までの議論が、知事の方針の大転換によってようやく交わり、新市場整備の議論は新たな局面に入った」

 締めくくり総括質疑の知事答弁を受け、民主党の和田宗春氏はこう述べて原案賛成を表明した。

 28日未明の討論で尾崎大介氏(民主)は「私たちが求めていた現在地再整備の検討が、ようやく都政の具体的な課題になった」と評価。「検討が結論ありきで、おろそかにされないよう2011年度予算も含め、関連議案に対しては賛否を留保する」と牽制した。

 自民党の鈴木隆道氏は「土壌汚染対策の有効性が実証されれば、都民や市場業者の不安は解消され、移転へのバリアは取り除かれる。出来る限り速やかに豊洲新市場の開場を」と訴えた。

 公明党の小磯善彦氏も「食の安全を担保し、都民に安心感を与え、効率的な市場機能を」と要望した。

 中央卸売市場会計は、民主、自民、公明の賛成多数で可決されたが、実態は呉越同舟。民主と自公の思惑が違うまま、玉虫色の決着で新年度に攻防の舞台を移すことになった。

 共産党は「付帯決議は現在地再整備も、豊洲の汚染土壌の安全化も、何ら保障せず、法的拘束力もない」(吉田信夫氏)と批判。

 生活者ネット・みらいの西崎光子氏は「土壌汚染対策で安全、大丈夫と繰り返す都の姿勢は、新銀行東京の時と同様だ。付帯決議の虚しさを思い起こす」と述べ、共産党の修正案にも同調せず、中央卸売市場会計予算案に反対した。築地市場の再生については「都民の消費動向や流通形態の変化をとらえ、これからの市場の規模、業務内容を構築する必要がある」と話した。

担保の実効性

 修正案を取り下げた理由について、大沢幹事長は「予算審議を通じて、知事が答弁で『重く受け止める』と。それを信じる」と語った。現在地再整備案の検討組織については「都が汗をかき、主体的に市場関係者等に働きかけ、意向を調査して合意形成していくと信じている」と話した。

 しかし、執行部が原案賛成に舵を切った27日、民主党控室では「都の検討組織は、単なるアリバイづくりになるのではないか。そうなることが予想されたのに、なぜ民主党は賛成したのかと言われる」「都は、現在地再整備をフェアに検討してくれるのか。フェアにやってくれなかった時、自分たちはカードを持っているのか」と、若手議員が党幹部に質問する姿が見られた。

 これに対し、党幹部は「都が約束をたがえた時は、今後、契約議案などに反対していく」「修正案を可決しても再議に付されたら廃案になり、原案もダメになる。自分たちの目的は、現在地再整備を議論のそ上に乗せることだ。都民、市場業界の理解を得て、現在地再整備の世論をどう高めていくか、勝負はこれからだ」などと説明した。都が議会で約束した検討組織の人員体制、予算規模などは、まだ何も決まっていない。

 用地取得費の執行にあたり「議会の合意」を都に認めさせたことも、非公式協議で勝ち取った成果と話す党幹部がいる。この点についても、会派内には「自公は豊洲移転なんだから、逆手に取られないか」と危惧する声が出ている。現に自民党は「時間的制約がある」として、今秋までに移転の障壁となる現在地再整備の検討を終えたい考え。かつて築地市場には米軍のクリーニング工場などがあり、地歴の文献調査も始めている。

 修正案提出で肩透かしを食らった共産党は「民主党の修正案に変わるものを(都に)実現させることは、99%無理」と言い切る。例えば、用地取得などの契約議案は、公営企業会計の場合、議会の議決を要しないため、議案として出てくることはない。


27日の予算特別委における質疑(要旨)



 和田宗春副委員長(民主) 新市場の整備を検討するに当たっては、事業者の合意形成がなされるべきだ。

 岡田至・中央卸売市場長 今年1月から水産・青果の仲卸業者を対象に個別面談を行い、一人ひとりの声に丁寧に耳を傾けている。引き続き、理解を得られるよう努力していく。

 和田氏 仮に市場機能が止まることがあれば、その責任は現在地再整備を検討さえしようとしない石原知事にある。都議会に立ち上げた「築地市場の移転・再整備に関する特別委員会」の検討結果については、知事も重く受け止めるべきだ。

 石原知事 議会として現地再整備を改めて検討した上で、業界の大多数が納得し得る案を検討することは大変結構。その結果については、真摯に受け止めたい。

 和田氏 議会はもとより、執行機関側も自らの立場で現在地再整備を検討するための組織を設けるべきだ。

 石原知事 議会で現在地再整備の検討がなされる場合には、議会の検討への協力のためにはもとより、執行機関としてこれに対応するためにも、現在地再整備を検討する組織を設ける必要もある。

 和田氏 議会での検討結果が出され、必要性が認められるまで、予算の執行も凍結すべき。新市場整備は、議会の合意を踏まえて対処すべきだ。

 石原知事 二元代表制の下では、長と議会は独立、対等の関係に立っている。相互に協力して自治体運営に当たる責任を持っている。こうした観点から、議会の合意に示された議会の意思を尊重していきたい。

 野島善司理事(自民) 豊洲移転は長い時間をかけてたどり着いた結論。予算が成立しないことで、新市場整備への道が閉ざされることは避けなければならない。本当に限られた時間だが、現在地再整備を議会として検討することもやぶさかではない。知事の考えは。

 石原知事 築地の置かれる厳しい状況を踏まえると、豊洲移転が最適な道。議会として改めて現在地再整備を検討した上で、業界がまとまる方策を検討することは結構。ただし、時間的制約があることを想定し、努力を願いたい。

 野島氏 秋には卸売の理事選挙の手続きが始まることや、用地取得の時間的制約を十分考慮した上で、早期に検討結果をまとめることが大切だ。

 岡田市場長 議会で検討する場合も、用地取得の時間的制約などを考慮し、早期に検討結果をまとめて頂きたい。

 野島氏 仮に議会で現在地再整備の検討を行うことになれば、一旦、豊洲でまとまった業界の中には「これで豊洲移転方針が崩れるのでは」という不安や失望の声が挙がるのでは。

 岡田市場長 都としては、豊洲移転が新市場整備を実現する最適な方法と考えている。この点は現在も変わらない。


【付帯決議】

 築地市場の老朽化を踏まえると、早期の新市場の開場が必要であるが、これを実現するためには、なお解決すべき課題が多いことから、予算の執行に当たっては、以下の諸点に留意すること。

1、議会として現在地再整備の可能性について、大方の事業者の合意形成に向け検討し、一定期間内に検討結果をまとめるものとする。知事は議会における検討結果を尊重すること。

2、土壌汚染対策について、効果確認実験結果を科学的に検証し有効性を確認するとともに、継続的にオープンな形で検証し、無害化された安全な状態での開場を可能とすること。

3、知事は、市場事業者それぞれの置かれている状況及び意見などを聴取し、合意形成など「新市場整備」が直面しているさまざまな状況を打開するための有効な方策を検討すること。


 

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