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都2021年度予算案/コロナ・五輪で歳出拡大/基金残高7611億円、余力縮小


  都は1月29日、2021年度予算案を発表した。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、対応に追われる中での予算編成となり、一般会計は前年度比710億円増の7兆4250億円と、過去2番目に大きい規模となった。都税収入は約4千億円の減少となり、財源は基金や都債を活用して捻出するなど、例年に比べて厳しい予算編成を迫られた。小池知事は同日の記者会見で、「一つひとつの施策をテコにして、東京が将来にわたって成長し続けられるように着実に歩みを進めたい」と述べた。=3面に「多摩・島しょ予算」、4面に「組織・定数」

■歳入
 都税収入は5兆450億円で、前年度比3996億円(7・3%)減。コロナの影響に伴う企業収益の悪化など、法人2税の減少が響いた。直近で20%超の減少となったのは、リーマンショックの影響を受けた10年度予算(29・4%減)以来。都税収入の減少は2年連続となった。
 この穴を埋めるために増やしたのが、借金に当たる「都債」の発行と貯金に当たる「基金」の取り崩しだ。都債の発行額は5876億円で、同3792億円(181・9%)と大幅に増えた。これまで培った発行余力を生かした形で、コロナ対策への充当分を除くと、リーマンショック後と同水準という。起債依存度は7・9%で同5・1ポイント増となったものの、財務局は「国の40・9%、地方全体の12・5%に比べて低い水準を維持している」と強調する。
 都債では特に、環境施策に充当する「グリーンボンド」を400億円に拡大するほか、中小企業制度融資の預託金など社会的課題の解決に充てる「ソーシャルボンド」を600億円程度発行し、政策的な意図を持った資金調達に取り組む。
 基金は計8290億円分を取り崩す。「3つのシティ」基金と財政調整基金を合わせた残高見込みは、普通会計ベースで7611億円(21年度末)。17年度には2兆7556億円を確保していたが、財政対応力は縮小する。財務局は「持続可能な財政運営の観点から、一定の残高を確保している」と説明している。
 なお、国の偏在是正措置による影響額は7608億円となり、20年度当初予算に比べると減少幅は縮小した。コロナ禍で課税ベースとなる企業収益が悪化したことが要因。

■歳出
 政策的経費を示す一般歳出は5兆6122億円で、790億円(1・4%)の増。このうち経常経費は4兆6719億円で、1879億円(4・2%)増となった。都税収入が激減して「懐」が厳しくなる中で、コロナ禍で影響を受けた経済の早期回復や五輪延期に伴う対応などが予算額を押し上げた。
 コロナ対策のうち、医療提供体制の整備や感染症対策は直近の感染状況を踏まえ、2月中旬に組む補正予算で対応する方針で、実体的な予算額は更に膨らむ。
 投資的経費は幹線道路の整備に伴う用地取得を抑えるなど、同1090億円(10・4%)減の9403億円。公債費は都債の償還を引き続き進め、168億円(4・8%)減の3323億円となった。
 「財政状況が厳しい中でバランスを確保する点で大変苦労があった」。小池知事が29日の定例記者会見で述べた通り、財政的な制約が多い中での編成となった。特に今年度は、コロナ対策で2兆円規模の補正予算を組み、その過程で基金を取り崩していたからだ。
 都幹部によると、歳出全体は前年度比で710億円の増。当初は3200億円程度増加する見通しだったが、査定で切り詰めたのだという。都税収入は元々、景気動向に左右されやすい性格があることから、同局はコロナの影響の長期化を想定し、「今後も持続可能な財政基盤を堅持することが必要」と指摘する。

■コロナ・五輪
 コロナ対策では今年度、補正予算で総額2兆円規模の事業を編成したが、21年度も引き続き、最重点の項目となった。当初予算案では、住居を失った離職者の就労支援や高齢者の介護・フレイル予防対策、出産の支援などに目配りしたのが特徴。
 このうち、「東京版ニューディール」と銘打った緊急雇用対策を講じ、非正規労働者や住居を失った離職者を始め、2万人規模の雇用創出に取り組む。就職氷河期世代を正社員採用に結び付けるトライアル就業を大幅に拡充するほか、離職者などに居住相談や就労支援を施し、安定した生活に結び付ける。
 五輪・パラリンピックについては4224億円を計上した。延期に伴う追加費用は19年度の決算剰余金や20年度の歳出精査で生み出した財源を「五輪準備基金」に積み立てて賄う。
 都の負担額は全体で約1兆4500億円。内訳は、競技会場の整備や輸送・警備など直接的な「大会経費」が7170億円。選手村の基盤整備や都市のバリアフリー、インフラ整備など「大会関連経費」が7349億円となっている。
 その他、「小池カラー」の政策では、50年までにCО2排出量を実質ゼロにする「ゼロエミッション東京」の実現に向けて、403億円を計上。走行時にCО2を排出しないゼロエミッション車(ZEV)の導入を促進するため、補助額を上乗せする。無電柱化では340億円を配分し、緊急輸送道路を含む臨港道路で推進するほか、区市町村を補助するなど、ペースアップを図る。
 

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