都政新報
 
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東京の未来像~有識者に聞く都の長期戦略(5)/環境市民活動巻き込んだ対策を/東京大学客員准教授 松本真由美氏


  ─長期戦略で必要な環境対策のポイントは。
 都民や民間企業を巻き込みながら取り組むことが重要。小池知事がかつて「クールビズ」を浸透させたように重点項目を絞り込んで打ち出すことが必要だ。
 ─特に重要だと思う分野は。
 地球温暖化対策や廃プラスチック削減などだ。温暖化対策では省エネと再エネの導入拡大に意欲的な目標が求められる。
 ─省エネを進める上で効果的なのは。
 建築物の省エネ改修が重要になる。例えばドイツではビルや住宅を新築する際、建物の省エネ基準を満たさないと許可が下りない。EU加盟国では、建築物の売買や賃貸借の広告で、建築物のエネルギー効率を記載する必要もある。一方、国内では省エネ基準はあっても、CО2排出量やエネルギー効率のラベリング制度といった厳しい基準は設けられていないが、その分、省エネの余地がある。建物の断熱性能を高めることで、空調設備コストを減らすことができ、排熱も抑えられる。ヒートアイランド現象も緩和できるのでは。
 ─その他には。
 地中熱の利用だ。東京スカイツリータウンや小田急沿線では地中熱ヒートポンプが使われているが、駅周辺住宅地に室外機の排熱を出さないメリットがある。国内では導入事例が少ないので初期投資が高くなるが、利活用を進めてもらいたい。
 ─需要側の対策はどうでしょう。
 海外では太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、需要側でエネルギーを需給調整する仕組みが進んでいる。米国カリフォルニア州やハワイ州、ドイツでは住宅に小型蓄電池、商用・産業用に中型・大型蓄電池を太陽光発電とセットで導入するケースが増えている。自然災害が多発する近年、レジリエンス(復旧)対策としても「地産地消」の分散型エネルギーシステムを積極的に導入すべきだ。
 ─廃プラ削減も課題です。
 国連環境計画によると、日本は1人当たりのパッケージ用プラごみの発生量が、米国に次いで世界で2番目に多い。紙の包装や植物由来のプラスチックに替えるなど、都が率先して取り組む姿勢を見せることが大事だ。オランダの「TAP」やイギリスの「Refill」といった、飲料水を補給できるスポットを探すアプリが市民活動から生まれた。日本でも「MyMizu」というアプリで、カフェや公共施設で水をマイボトルに補給できる。ペットボトル利用を削減する草の根的な活動を、自治体も連携して推進する必要がある。
 ─都で取り組める対策とは。
 学校や公共施設で石油由来のプラスチックをゼロにすることだ。小中学校の給食でも始められる。日本はペットボトル回収は欧米に比べても進んでいる。とはいえ、廃棄量も多い。使い捨て梱包材を減らすことはすぐにでも着手してほしい。
 ─40年代を見据えて必要な視点は。
 これからのまちづくりはハード整備だけでなく、地道に市民を巻き込みながら快適に暮らすことができ、環境的にも優れたまちにする視点が大切。欧州では石油由来のプラスチック使用を法規制する動きもある。未来に向けて、自治体としてブレない軸や将来像と価値観を示し、多様なステークホルダーを巻き込んでいくことが重要だ。
 

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