都政新報
 
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東京の未来像~有識者に聞く都の長期戦略(2)/都庁変革視野を広げ働き方変えよ/合同会社KUコンサルティング代表社員高橋邦夫氏


   ─長期戦略ビジョンの論点整理の印象は。
 論点整理では2030年に向けた「都庁自らの改革」と明記されており、業務に対する意識改革が始まることに期待している。東京ではデジタル化が遅れ、例えば業者登録するにも登記簿や納税証明など紙の書類を平日に役所の窓口に持参しなければならない。煩雑な手続きでは企業が東京に来たがらなくなる。こうしたルールを変えていかなければ、東京は世界の都市とは戦えない。
 ─「定型業務の大半をAIに任せる」とありますが、どのように進めれば良いでしょう。
 まず、業務フローを見える化することだ。私が豊島区で管理職だった際、残業が多い部下に業務フローを書き出してもらい、負荷が集中している業務を他の人員や時期に振り分けたことがある。一般職員は「これしか仕事の方法がない」と思い詰めていることが少なくないため、自力で仕事の方法を改善させるのは酷。管理職が苦労や精神的なプレッシャーを酌み取らなければならない。今の職員の苦しみを軽減するためにもAIが求められている。
 ─業務効率化には民間企業のICT技術開発も盛んです。
 企業が集積する東京では大手企業だけでなく、小規模なベンチャー企業でも素晴らしい技術を持っている。長期戦略ビジョンの論点整理には、2040年代を想定したイメージとして「職員が民間企業と協働して社会課題の解決に取り組んでいる」と盛り込んでいるが、協働先を一部の大企業に限定せず、ベンチャー企業にも裾野を広げてほしい。
 ─都庁変革を進める上でのハードルは何でしょうか。
 広域自治体に共通する傾向だが、都は各局が大きな組織で、一つの局がICT化などを用いたサービス改善を図っても他局に広がりにくい。理由としては「難しいルールを抱えている」「例外のケースが多い」など自分たちの仕事を特別視している点が考えられるが、こうした考えは打ち消すべきだ。業務のスマート化もICT化も、職員が幸せになるために進めること。他局がAIやICTを導入できた理由に注目してほしい。常に視野を広げて取り組み、部門最適ではなく全体最適を目指してほしい。トップが組織の垣根を超えて指令を出し、職員の声を拾い上げながら進める仕組みも必要だ。
 ─他自治体の先進事例を教えてください。
 神奈川県鎌倉市では昨年11月から、ベンチャー企業と共同したインターネット上での行政手続きの案内と書類作成ができる実証実験を開始した。サイトにアクセスして簡単な設問に答えるだけで転入・手続きなどに必要な書類を入手できる。また、長崎県庁では執務エリアに打ち合わせスペースや集中作業スペースなど多様な働き方ができる空間を用意し、作業効率化やコミュニケーションの促進を図っている。併せて、住民対応スペースを執務スペースと別に設けて職員が出向く形にして住民サービスの強化も狙っている。
 ─都で参考にできる部分はありますか。
 都は人口や財政力が他自治体より抜きん出ているので、他自治体の成功事例をそのまま採用してもうまくいかない可能性がある。先進自治体の導入背景と効果を把握した上で妥当性を判断すべきだ。
 

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