都政新報
 
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小池知事に聞く/選挙公約の実現/「今もing形」/組織づくり/世界と戦う体制必要


  小池知事が就任してから3年が経過し、1期目の任期も残り1年を切った。選挙公約では待機児童や残業、満員電車、多摩格差など「7つのゼロ」の実現を掲げたが、1期目での達成は厳しい状況にある。知事はこれまでに再選に向けた姿勢を明確にはしていないが、これまでの3年間の都政運営をどう捉え、今後、どのような姿勢で「総仕上げ」の1年に臨むのか。考え方を聞いた。

 ─1期目の公約で掲げた「7つのゼロ」のうち、達成したのはペットの殺処分ゼロだけです。
 まぁ、4年間じゃないからね。
 ─それは2期目も含めてということですか。
 まず目指しているということで、アジェンダ設定ですよね。アベノミクスなんかも似たようなものでしょう(笑)。
 ─2期目での達成もあると。
 今も「ing形」で課題に取り組んでいる。
 ─公約に向けた3年間の取り組みを振り返ると。
 最初は様々な政策の見直し。そこから各種の種まき、水やり、肥料をやってつぼみ、花─というのが順序だ。順調に進んできていると思う。
 ─「都政改革」を掲げて就任しましたが、一番変わったところは。
 都政について三つ課題を挙げてきた。まず、都民ファーストの目線になろうということ。職員もすごくやる気を出してくれて、これまでの都政の延長ではなく、例えば「グレーインフラ」から「グリーンインフラ」に変えるとか、思想的な部分もシェアできるようになった。「見える化」では情報公開も進んできたし、「賢い支出」で支出の在り方もチェックし、見直してきた。職員にも積極的に取り組んでいただき、新しい都政文化は3年間でかなり築かれた。
 加えて、五輪のレガシーにもしていきたいが、職員はフレキシブル(柔軟)な働き方に変わり、幹部を始め、テレワークの試行を重ねている。今も都議会に対応する部署などは非常に残業が多いが、全体としては働き方を変え、それによって都民ファーストの都政が充実していくと、いい循環になると思う。
 ─働き方改革は確かに一歩進みましたが、レガシーにするにはさらにプッシュが必要では。
 これには意識改革が必要だ。業種にもよるが、人手不足の一つの解決策としてテレワークがある。英首相に就任したボリス・ジョンソン氏が「テレワークが基本だよ」と言っていたが、ロンドン大会を機にテレワークが定着し、それをやめると言ったら暴動が起きるというぐらいになっている。
時代の変化に/即した人材
 ─組織体制では、局長級で3カ月での異動や降格とも取れる人事もありました。
 一言で「適材適所」だ。都民のニーズや時代の変化に即した人材を選ぶということ。組織をどう機能させるか。世界の変化もさることながら、東京の役割が更に強まっていく。人口動態で言えば、一人暮らし、特に高齢者が増え、ひきこもりの「8050問題」など、これまでになかった現象が顕在化している。それにふさわしい人材を活用し、時に必要な組織変更を行うことが都政を充実させるには必要だ。
 ─人事には公平性も重要な観点ですが、それとてんびんにかけても「適材適所」だと。
 そうですね。任命権者として組織を活性化し、一人ひとりのやる気、また組織を律していくという面で総合的な判断が必要。企業でも軍隊でもあらゆる組織に言えることだと思う。組織論は古来から軍隊。都政は戦わないが、時代とは戦って、切り開いていかなければいけない。
 ─3年で組織づくりは進みましたか。
 まぁ、そうですね。3年経って一人ひとりの顔が見えて、秘められた能力、逸材であったり、そういったことにも触れて、任命権者としての情報が更に分厚くなってきて、そのことが都政にプラスに反映させられればいい。
取り残される/危機感
 ─長期計画は実現可能性にこだわらない、大風呂敷となるのですか。
 この間の社会の技術的な革新は予想を超えたものがある。分野にもよるが、「こうあるべき」というところからバックキャスティングをすべきだ。日本はある意味、律儀な「積み重ね方式」だ。私は環境相をやっていたが、世界は2050年をいつもセットに置いて、そこから驚くような目標を立てる。日本では「どこまでできるのか」「どういう根拠なのか」を議論ばかりしている間に、環境技術は今、世界でどうなっているのか。そういうことを考えるべきだと常々言っている。
 ─五輪まで残り1年で、1期目最後の1年。職員に期待することは。
 素晴らしい職員が誇りを持って頑張っている。その力を引き出すため、今回、思い切って500人を海外派遣する。それぞれの分野で世界の最先端や、世界の片隅でもいろんなヒントがある。いくつかのチームが既に海外に行き、刺激を受けて帰ってきている。
 世界の流れの中で、東京が「これまでそうだったから」というだけの延長線では取り残される危機感を持っている。組織を変更したり柔軟に生かしたり、それにふさわしい人材を活用したり、東京が世界と戦うための体制を取ることが必要だ。東京には一地方自治体を超えた役割があると思う。職員もそのプライドを持って働いているので、それにふさわしい長期戦略を描くことが必要ではないか。
 ─五輪後の、都政の姿は。
 日本、東京が直面している課題を割り出し、それに対してビジョンを描く必要がある。この機を逃し、大会が終わってから描いているようではトゥー・レイト(遅すぎる)。この機会を最大限生かし、これまでの流れもしっかり踏まえながら、新しく前進していく東京という姿を具体的に描く。8月をめどに、まずは課題を洗い出す作業から始めたい。
 ─ありがとうございました。
 

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