都政新報
 
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■東京都予算案特集/2019年度東京都予算案の概要(4面)/2019年度東京都予算案の概要


  東京都の2019年度予算案が1月25日に発表され、2月20日に開会する第1回定例都議会に提出される。平成から元号が変わり、新しい時代の幕開けを迎える中、これからの東京の道標ともなる19年度予算案は、「東京2020大会を推進力とし、東京が成熟都市として新たな進化を遂げ、成長を生み続けられるよう、未来に向けた道筋をつける予算」と位置付け、編成された。一般会計の予算規模は、大会競技施設の整備が佳境を迎えることなどを背景に過去最大の7兆4610億円となり、過去最多の411件の新規事業を立ち上げる一方、1208件の事業評価結果を公表し、評価の結果を通じて、約900億円の財源を確保するなど、財政の健全性に配慮した予算となっている。予算案の概要を財務局が発表した資料をもとに特集する。

◆予算編成の基本的考え方
○予算編成方針
 「東京2020大会を推進力とし、東京が成熟都市として新たな進化を遂げ、成長を生み続けられるよう、未来に向けた道筋をつける予算」と位置付け、次の点を基本に編成した。
1 局横断的な連携や、行政にはない新たな発想の活用により、「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」を実現するための戦略的な施策を積極的に展開すること

2 ワイズ・スペンディング(賢い支出)の視点により、自律的な都政改革を不断に推し進め、一層無駄の排除を徹底し、健全な財政基盤を堅持すること

3 東京2020大会の開催準備の総仕上げを着実かつ効率的に進めること

◆財政規模
 財政規模(表1)のうち、一般会計の予算規模は、前年度比5・9%増の7兆4610億円、うち政策的経費である一般歳出は、前年度比8・0%増の5兆5979億円、特別会計及び公営企業会計を含めた全会計の合計は、前年度比3・6%増の14兆9594億円。一般会計の予算規模は、東京2020大会準備の総仕上げなどに伴い、過去最大となった。
 東京の持続的成長に向けて、自律的な都政改革を不断に推し進め、より一層無駄の排除を徹底する一方、三つのシティを実現するための戦略的な施策の積極的な展開に加え、東京2020大会の開催準備を着実に進める予算配分を行った。
○歳入の状況(表2)
▽都税収入
 都税収入は前年度比5・2%増の5兆5032億円となった。
○歳出の状況(表3)
▽経常経費
 経常経費は前年度比4・9%増の4兆2709億円であり、うち給与関係費は前年度比1・6%増の1兆6104億円となった。退職手当が減となる一方、東京2020大会の開催に向けた準備の推進等に伴い職員定数が増加することなどにより、前年度比254億円の増となった。
▽投資的経費
 投資的経費は前年度比19・3%増の1兆3269億円となった。東京2020大会開催に向けた競技施設等の整備を推進するとともに、豪雨対策等の災害に強いまちづくりや、骨格幹線道路の整備等、高い効果が得られる事業に財源を重点的に配分した。
▽目的別内訳(表4)
 構成比が最も高い分野は福祉と保健(22・5%)、次いで教育と文化(22・0%)、警察と消防(16・8%)の順となる。
 限られた財源を重点的・効率的に配分し、都民生活の質の向上に努めている。
◆財政運営
○予算のポイント
 日本各地で多発する自然災害、世界の激しい都市間競争や迫りくる人口減少社会など、都政を取り巻く環境が大きく変化している中、都は、東京と日本の持続的成長に向けた取り組みを積極的に展開していく必要がある。
 次の3点を予算のポイントとし、これを軸に、セーフ・スマート・ダイバーの三つのシティの実現に向けた取り組みを推進していく。
1 気候変動等に対する「都市力の強化」
▽豪雨対策、家庭における省エネルギー対策の推進 など
2 持続的成長に不可欠な「稼ぐ力の強化」
▽国際金融都市の実現・外国企業誘致の加速化、イノベーションの創出・生産性の向上 など
3 都市の活力の源泉である「『人』と『人』とをつなぐ」
▽ライフ・ワーク・バランスの充実 など 
 また、施策の体系は次の通りである。
◇安全・安心でにぎわいにあふれる都市―「セーフ シティ」の実現
◇日本の成長を牽引(けんいん)し世界の中で輝き続ける都市―「スマート シティ」の実現
◇誰もがいきいきと活躍できる都市―「ダイバーシティ」の実現
◇東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けた取り組み
◇多摩・島しょの振興
◇東京の持続的成長を支える最先端技術の活用
 事業評価の取り組みにおいては、新たにコスト・ベネフィットの視点を踏まえた評価を実施するなど、一層無駄の排除を徹底し、約900億円の財源を確保した。
 開催まで1年余りとなった東京2020大会については、新規恒久施設の整備や既存体育施設の改修等を着実に推進するなど、大会に向けた準備の総仕上げを行っていく。
○将来を見据えた財政運営
 都税収入が景気動向に左右されやすい不安定な財政構造の下、東京2020大会の成功に向けた準備や防災対策など膨大な財政需要に留意しつつ、日本の成長の牽引役として、都市機能の更なる強化を図り、持続的成長を目指していく必要がある。
 このため、中長期を見据えて財政体質を更に強固で弾力的なものへと進化させ、社会構造の変化に適応し得る健全な財政運営を行う必要がある。
○地方法人課税の見直し
 19年度税制改正では、暫定措置の廃止により復元予定であった法人事業税の一部が再び地方へ配分されることとなった。影響が平年度化する21年度以降、都税は1年間で3799億円の減収となり、これまでの措置による減収額と合わせると8757億円の減収となる。
 日本全体の持続的成長を実現するためには、自治体が自主的・自立的な行財政運営を行い、各々の個性や強みを発揮することが重要であり、国から地方への権限移譲を進めるとともに、役割と権限に見合う財源を一体として確保する必要がある。地方税財政制度のあるべき姿を目指し、全国の自治体と連携を図りながら、国に強く働きかけていく。
○日本各地との連携と共存共栄に向けて
 日本全体が持続的な成長を遂げていくためには、東京と地方、双方の発展が重要である。
 今求められるのは、東京と地方の連携を深化・発展させ、高め合うことで地域の活性化や諸課題の解決につなげ、共に成長していく「共存共栄」を目指すことである。日本経済全体のパイの拡大を図りながら、持続的成長の実現につなげていく。
○都財政にとって避けることのできない財政需要 東京2020大会の開催に向けて、恒久施設の整備などの大会経費6千億円と既存施設の改修などの大会関連経費8100億円を合わせ、20年度までに1・4兆円が必要となる。
 この他、防災経費、社会保障関係経費、社会資本ストックの維持・更新経費も含めた主な経費の増加額は、今後25年間で累計約16兆円に上る。
 こうした財政需要に適切に対応するとともに、日本全体の成長につながる施策に果敢に取り組むためには、より中長期的な視点に立った財政運営を行い、将来にわたって強固で弾力的な財政基盤を堅持する必要がある。
○基金の活用(表5)
 東京2020大会の開催準備などを着実に進めていくため、三つのシティ実現に向けた基金を5577億円取り崩す。
○都債の活用
 今後の財政需要を見据え、将来世代の負担を考慮して都債の発行額を抑制し、発行余力を培った。都債は前年度比0・5%減の2096億円となり、起債依存度は2・8%と低い水準を維持した。

◆事業評価の取り組み
 限られた財源の中で都政の諸課題に的確に対応していくため、都は予算編成の一環として事業評価を実施し、一つひとつの事業の効率性・実効性を向上させる継続的な取り組み(マネジメントサイクル)を行っている。
 これまで、関係部局と連携した専門的視点からのチェック、新たな公会計手法の活用や終期を迎える事業に対する事後検証の徹底などを通じ、予算編成の過程で多面的な検証を行う取り組みとして着実にその実績を積み重ねてきた。
 今年度は新たに、事業実施に必要な経費と、それにより期待できる社会的・経済的便益とを比較検証する、コスト・ベネフィットの視点を踏まえた評価を導入するとともに、「2020年に向けた実行プラン」や「2020改革プラン」との連携を強化するなど、事業の効率性や実効性の向上に向けて、創意工夫を凝らして事業評価に取り組んだ。
 こうした取り組みにより、1208件の評価結果を公表し、837件の見直し・再構築を行うとともに、評価の結果を通じて、約900億円の財源確保につなげた。
○事業評価の種類
▽事後検証による評価
▽自律的経費評価
▽情報システム関係評価
▽監理団体への支出評価
▽報告団体への支出評価▽執行体制の見直しを伴う事業評価
▽監査結果に基づき見直しを図る事業評価
▽複数年度契約の活用を図る事業評価
▽エビデンス・ベース(客観的指標)による評価※「コスト・ベネフィットの視点を踏まえた評価」を含む
○事業評価の実施例
▽事後検証による評価
・道路照明のLED化
【現状・課題】
 LED照明は、これまで採用してきた省エネ型ランプと比べ消費電力が少なく、耐用年数が長いことに加え、環境負荷の低減が見込まれることから、道路照明のLED化を順次実施してきた。
 特に、街路灯のLED化については、技術的な制約から老朽化に伴う照明柱の更新時にのみ実施してきたが、ライフサイクルコスト等を踏まえた取り組みの更なる加速化が必要となっている。
【対応】
 技術革新により、街路灯のランプ型LEDが開発され、ライフサイクルコストに優位性が認められることから、本技術を活用した街路灯のLED化を試行実施する。
 照明柱の更新時に加え、ランプ交換時にもLED化が可能となることから、LED化の取り組みをより一層推進していく。
▽監理団体への支出評価
・事業者指定事務・事業者情報提供システムの運営
【現状・課題】
 (公財)東京都福祉保健財団では、介護保険制度におけるサービス提供主体となる事業者の指定業務を担うとともに、事業者等に関する情報を都民や区市町村に広く提供している。
 新規指定や変更届等については、その件数が例年3万件を超えていることから、業務の効率化を図る必要がある。
【対応】
 クラウド型の事業者指定台帳システムを導入することで、これまで財団が実施してきたデータ入力・ファイル作成を区市が直接入力できる業務体制へ見直す。
 本システムの導入により、財団における業務時間について約4500時間の削減が可能となり、業務効率化とコスト縮減が図られる。
▽コスト・ベネフィットの視点を踏まえた評価
・AIチャットボットサービス環境構築委託
【現状・課題】
 「24時間365日税務相談を実施してほしい」という納税者ニーズへの対応が求められており、ICT活用による社会変革を進める機運が高まる中、ICT技術を十分に活用し、納税者の利便性の向上を図っていく必要がある。
【対応】
 24時間365日税務相談を実現するため、AI技術を活用したチャットボット(文字入力による会話形式のコミュニケーションを自動的に行うプログラム)による税務相談機能の構築に向けた検証を行った。
 具体的には、チャットボット導入による利用者の問い合わせに対する検索短縮時間から便益効果を算出し、導入経費及び運用経費との比較により、事業の妥当性を検証した。
 また、いつでも手軽に問い合わせが可能となるなど、納税者の情報アクセシビリティの向上も見込まれることから、来年度よりシステム構築に着手する。
◆主要な施策
 三つのシティの実現に向けた施策の概要は以下の通り(具体的な施策
例、予算案は、表6参
照)。
1. 安全・安心でにぎわいにあふれる都市―「セーフ シティ」の実現
 都民の希望と活力の大前提となる安全・安心の確保に向けて、気候変動や災害に対する「都市力」を高める総合的な取り組みを推進。
(1)水害に強いまちづくり
 中小河川の整備などの豪雨対策のほか、土砂災害対策や津波・高潮対策を推進。
(2)災害対応力の強化
 マイ・タイムラインの作成支援・普及などの応急対応力・地域防災力の向上に資する取り組みや、震災対策の強化を推進。
(3)地震が起こっても倒れない・燃えないまちづくり
 無電柱化の推進のほか、木造住宅密集地域の不燃化・耐震化や建築物の耐震化を促進。
(4)救急活動体制の充実
 救急機動部隊の拡充やデイタイム救急隊(仮称)の創設などに取り組む。
(5)まちの安全・安心の確保
 テロ・サイバーセキュリティ対策や、防犯設備維持管理経費への補助などの身近な犯罪の防止対策等を推進。
(6)地域コミュニティの活性化
 地域の活性化に向けた取り組みのほか、空き家対策推進プロジェクトなど、良質な住環境の形成を図る。
2. 日本の成長を牽(けん)引(いん)し世界の中で輝き続ける都市―「スマート シティ」の実現
 日本経済の牽引役として、「稼ぐ力」を高めるとともに、持続可能な東京を実現するため、世界を見据えた成長戦略を果敢に展開。
(1)国際金融・経済都市の実現
 国際金融都市の実現・外国企業誘致の加速化を進め、イノベーションの創出・生産性の向上、起業・創業や海外展開等の促進、中小企業の経営安定化支援等を行うとともに、商店街の活性化支援、農林水産業の振興、市場及び市場跡地の活性化を推進。
(2)世界に開かれた国際・観光都市の実現
 外国人旅行者等の誘致や、外国人旅行者等の受入環境の充実を図るとともに、多彩な観光資源の開発・発信を推進。
(3)交通・物流ネットワークの形成
 区部環状・多摩南北方向の道路、東京外郭環状道路を着実に整備するとともに、鉄道の連続立体交差化、鉄道ネットワークの整備促進、東京港の物流機能の強化、自転車総合対策を推進するほか、公共交通のさらなる充実と次世代交通システム等の導入を図るなど、スムーズビズの定着に資する取り組みを推進。
(4)ゼロエミッション東京の実現
 家庭や事業所等における省エネルギー対策の推進や、ゼロエミッション・ビークル(ZEV)の普及促進を図るとともに、照明のLED化や再生可能エネルギーの導入拡大、フロン排出抑制対策を推進。
(5)快適で豊かな都市環境の形成
 暑さ対策や大気環境対策、使い捨てプラスチック対策を進め、持続可能な資源利用等を促進するとともに、豊かな自然の創出・保全等に取り組む。
3. 誰もがいきいきと活躍できる都市―「ダイバーシティ」の実現
 誰もがウェルネスで、「人」と「人」とのつながりの中で希望を持って活躍でき、いつまでも安心して暮らせる都市を実現するため、大胆かつ戦略的な取り組みを展開。
(1)子供を安心して産み育てられる環境の整備
 結婚から出産、子育てまでの切れ目ない支援のほか、待機児童解消及び多様な保育サービスの充実に向けた取り組みや社会的養護等の充実を図る。
 また、幼児教育の無償化等に対応するとともに、都独自の支援策を実施。
(2)高齢者が安心して暮らせる社会の実現
 介護人材の確保・育成・定着のほか、高齢者の暮らしへの支援や住まいの整備を推進。
(3)障害者がいきいきと暮らせる社会の実現
 障害者に対する生活支援や就労促進のほか、障害福祉サービスを担う人材の定着等や医療的ケア児への対応に取り組む。
(4)医療の充実・健康づくりの推進
 受動喫煙防止対策や、がん・感染症等対策を推進するとともに、在宅医療や救急医療の充実を図る。
(5)誰もが活躍できる社会の実現
 ライフ・ワーク・バランスの充実や女性の活躍推進、高齢者の社会参加を促進し、多様なニーズに応じた雇用対策・就業支援を行うほか、旧こどもの城を取得し、活用のあり方を検討。
(6)未来を担う人材の育成
 世界を舞台に活躍する人材の育成に取り組むほか、子供を伸ばす教育や青少年の健全育成、特別支援教育を推進。
(7)誰もが優しさを感じられるまちづくり
 宿泊施設のバリアフリー化、公共施設のトイレ洋式化や女子トイレ増設等を支援するほか、心のバリアフリー等にかかる取り組みを推進。
4. 東京2020大会の成功に向けた取り組み
 大会の成功に向けて、開催準備の総仕上げを着実かつ効率的に進めるとともに、次世代へ継承するソフト・ハード両面のレガシー構築に向けた取り組みを積極的に展開。
(1)東京2020大会の開催に向けた準備
 東京2020大会を史上最高の大会とするため、競技会場の整備、セキュリティ対策、ボランティアの確保・育成など、大会本番に向けた準備の総仕上げを実施。
(2)東京2020大会を契機としたスポーツ・文化・教育の振興
 ラグビーワールドカップ2019の開催準備に取り組むとともに、障害者がスポーツに親しめる環境整備や、スポーツの振興、芸術文化の創造・発信、オリンピック・パラリンピック教育等を推進。
5. 多摩・島しょの振興
 多摩・島しょ地域の更なる魅力と活力の向上、持続的発展に向けて、地域が持つ特性や課題に対応した効果的・重層的な取り組みを推進。
(1)持続可能な暮らしやすいまちづくり
 市町村に対する総合的な財政支援など、成熟社会に対応した行政サービスを展開するとともに、活力と魅力を高めるまちづくりや地域を支える都市インフラの整備、地域の特性を踏まえた防災対策を推進。
(2)豊かな資源を生かした地域の活性化
 創業支援拠点(多摩)の設置・運営など産業の振興のほか、豊かな自然環境の保全や教育・スポーツの振興を図る。
(3)島しょにおける個性と魅力あふれる地域づくり
 島しょ地域の魅力の一層の向上・発信のほか、更なる活性化に向けた、利便性を高める環境整備等に取り組む。
6. 東京の持続的成長を支える最先端技術の活用
 東京が抱える様々な課題を克服し、持続可能な社会の構築に向けて、日進月歩で発展するICT・IoTやAIをはじめとする最先端技術の活用を推進。
(1)ICTの効果的な活用による安全・安心の確保
 ICTの効果的な活用により、「東京都防災アプリ」の充実や浸水深マップ(仮称)の作成に取り組む。
(2)革新的な技術力による産業力の強化
 生産性向上のためのIoT、AI、ロボット導入支援などによる産業の
革新や、観光の振興を図
る。
(3)最先端技術が支える未来を見据えた都市づくり
 プラスチック代替素材の活用など、環境分野における持続可能性を追求するほか、先端技術による都市機能の高度化を推進。
(4)先端技術の活用による生活の質の向上
 介護保険施設等における先端技術の活用を推進し、福祉サービスの向上や医療の充実を図る。
(5)ICT導入で誰もが活躍できる社会を実現
 テレワークの導入促進など、多様なニーズに応じた働き方の実現のほか、教育現場におけるICTの活用を推進。
(6)公共データ等の有効活用
 都が保有するデータのオープンデータ化や、ショートメッセージサービス(SMS)を活用した納税催告の導入を推進。

 

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