都政新報
 
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都2019年度予算案/東京の持続的成長へ重点配分/一般会計過去最大の7兆4610億円


  都は25日、2019年度予算案を発表した。一般会計は前年度比4150億円(5・9%)増の7兆4610億円で、都政史上最大となった。東京五輪の準備が総仕上げを迎えることなどが要因。一方、東京の持続的成長に向け、気候変動対策や東京の稼ぐ力の強化、働き方改革の推進を柱に据えた施策に重点的に予算配分した。小池知事は同日の記者会見で、「未来を切り開くための予算」と位置付けた。    =3面、6面に関係記事

■歳 入
 都税収入は、企業収益が堅調に推移することで法人2税が伸びるのに加え、雇用環境の改善に伴い個人都民税が増えることなどから、前年度比2700億円(5・2%)増の5兆5032億円となった。過去最大だった07年度決算(5兆5095億円)に迫る水準で、都の法人2税を国に拠出し、地方に再配分する偏在是正措置(5158億円)が行われなければ07年度を上回った。
 19年度税制改正で決定した法人事業税の偏在是正による影響は1億円の減収にとどまるが、20年度は2500億円となり、平年度化する21年度は4600億円と膨らむ見通し。21年度以降は、法人住民税と合わせた偏在是正の影響額が8800億円となる。
 都債の発行額は11億円(0・5%)減の2096億円に抑えた。都債残高は7年連続の減となり、起債依存度は当初予算ベースで0・2ポイント減の2・8%。平成以降の当初予算で2%台となるのは初めてで、国の起債依存度(32・1%)や地方の平均(10・6%)と比べ、都の健全財政は際立っている。
 都財務局は「税収が好調な時だからこそ、都債の発行余力を養っておきたい。また、基金は使っていくが、残高についてはしっかりと備えておく」と話した。
 また、知事の公約である「三つのシティ」などの実現に向けた基金からの繰入金は、1466億円(32・5%)増の5969億円。2020東京大会の経費6千億円は全て五輪開催準備基金で賄う計画で、これまで不足していた377億円を契約差金などから確保して積み増す。
 19年度末の基金残高は1兆8731億円を見込むが、都財務局は「一番の虎の子である財調基金は過去に比べて(多く)確保している。税収の動向に目配りしながら財政運営をしていきたい」と話している。
■歳 出
 政策的経費を示す一般歳出は4157億円(8・0%)増の5兆5979億円で、2年連続の増。1年半後に控えた東京大会の本格的な準備が最大の要因となった。
 恒久施設の整備費など大会経費は19年度に2720億円、輸送インフラや観光振興など大会関連経費は2610億円に上る。大会経費では東京アクアティクスセンターや有明アリーナなどの整備に1211億円、関連経費は競技会場周辺のセキュリティー対策などに590億円、暑さ対策などに270億円を盛り込んだ。
 一方、災害級の暑さ対策は都などが現在も検討しているが、新たな対策を打ち出すことになれば、経費が増える恐れがある。都財務局は「(大会関連経費の総額を)8100億円と説明している以上、(超えないよう)事業を進めていく」と強調した。
 また、一般歳出のうち経常経費は2009億円(4・9%)増の4兆2709億円。主な増要因には、五輪準備で職員定数が増えたことなどに伴い、給与関係費が254億円(1・6%)増の1兆6104億円となったほか、都民が省エネ性能の高い家電を購入した際に都が商品券などと交換可能なポイントを付与する事業に45億円を計上したことなどがある。
 投資的経費は1兆3269億円で、2148億円(19・3%)の大幅増となった。区市町村の待機児童解消に向けた取り組みの支援事業(270億円)、小中学校の屋内体育館の空調設置(118億円)などが要因。
 公債費は都債の償還を進めた結果、651億円(15・1%)減の3668億円となった。
■小池カラー
 小池都政では、事業に終期を設けるなどして事業の見直し・再構築を行う事業評価を実施している。今回は1208件の事業評価を実施して過去最多の837件の見直しや再構築を行い、約900億円の財源を確保した。
 事業評価で最も大きな減となったのが、都内の中小企業が融資を受けやすくするための中小企業制度融資で、180億円の減。終期は21年度だったが、景気回復によって1~2年間の融資実績が減少していることを踏まえた。今回、事業評価で生み出された財源は、知事肝煎りの働き方改革などに振り向けた。
 一方、実行プランに盛り込まれている「三つのシティ」の取り組みは100%の予算化を図り、総額1兆7202億円を計上した。これらの取り組みを含めた新規事業は過去最多の411件(615億円)に上る。
 このうち、小池色が表れたのは気候変動対策で、知事は25日の記者会見で「都民を守る命の取り組みをソフト、ハード両面から総合的に展開する」と強調した。具体的には、環状7号線地下の調節池延伸の検討(4千万円)や新たな調節池の整備検討(2億円)、道路が狭( きょう)隘(あい)の地域で災害時の被害拡大を防止するために早期に現場に到着するチームの創設(6千万円)など、総額2228億円を措置した。
 また、東京の稼ぐ力の強化に総額704億円を計上。「東京は国際間競争に勝ち抜き、(日本の)発展を主導するために稼ぐ力を育まなければならない」と語り、官民による金融プロモーション組織の設立(7千万円)、人工知能(AI)や自動運転などが普及する社会「ソサエティー5・0」を実現するための調査(2億円)、夜間にイベントを行う区市町村などに補助するナイトライフ観光振興助成金(3億円)などの新規事業を盛り込んだ。
 今回、大学研究者からの事業提案を初めて受け、7件(1億7千万円)を予算化した。首都直下地震後に仮設住宅が不足することが見込まれ、研究会を立ち上げて都に具体的な政策提言などを行う事業には3千万円を計上。また、病院で症状が悪化した患者を転院させる際、集中治療室の機能を持つ車で搬送する仕組みづくり(3千万円)などを盛り込んだ。
 

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