都政新報
 
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新春インタビュー/モテたい女子のカリスマが説くSNS活用法/「秘訣は自分を深く知ること」/モテクリエーターゆうこす(菅本裕子さん)


  2019年1月1日朝、あなたは目覚めて最初に何を見ましたか。テレビですか。それともスマートフォンですか。起きてすぐ、スマホでLINEの「あけおめ」メッセージをチェックした人も多いかもしれません。SNSの自分のアカウントで新年のあいさつをした人もいるのでは。中には正月早々、ツイッターで浮かれた若僧を相手に「けしからん!」と〝マウンティング〟していたおじさんもいるのでしょうか。誰もが簡単にスマホを使って、情報をやりとりできる時代ですが、自分の発信力を高めるほどSNSをうまく使いこなしている人は多くありません。SNSをこれから始めようとしてちゅうちょしている人や、SNSをなかなかうまく使いこなせず〝SNS疲れ〟に陥っている人、組織のSNS担当に配属されたはいいものの、プレスリリースをコピーするだけという〝中の人〟はいませんか。今回は、〝ゆうこす〟の愛称でおなじみの「モテクリエーター」菅本裕子さんに、SNSを活用して若い女性から絶大な支持を得るインフルエンサーに飛躍した秘訣を聞いてみました。

パイが狭いと熱量は高い
 国民的アイドルグループを道半ばで脱退した後、タレント活動に挫折し、ニート生活を送っていた彼女がSNSを使って自己プロデュースを始めて、2年が過ぎました。今やSNSなどで150万人ものフォロワーを持ち、10~20代の女性を中心にインスタグラムで紹介した商品が完売するなど、カリスマ的人気を誇っています。
 肩書を聞くと、「モテクリエーターです」と笑顔を見せてくれました。中高年のおじさんには聞き慣れない言葉かもしれません。「モテクリエーター」とは?
 「女の子のモテたいという気持ちを全面的に肯定して、どうやったらモテるのかを私と一緒に試行錯誤しながら、教えるというよりも、一緒に考え、盛り上げていこうと、メイクやファッションなどを軸にして発信しています」
 アイドルの経験があるだけに、情報発信の対象は男子かと思いきや、ゆうこすと同世代の若い女性に圧倒的な支持を得ています。その秘訣は、意外なことに”ぶりっ子”でした。
 「中高生のときにスクールカースト上位の女の子はみんなサバサバしていて、ぶりっ子といえば嫌われる存在でしたよね。私も、少女漫画に出てくるような典型的なぶりっ子でした。男性に好かれ、女性に嫌われるタイプ。だけど、男女を問わず、人に愛されたいとか、好きな人に好かれたいという気持ちはあって当然だと思います。ぶりっ子のパイは狭いけれど、ネットなら、パイが狭ければ狭いほど熱量は高くなると思ったんです」

誰でもゆうこすになれる
 ゆうこすの発信力の強さを象徴するのが、ユーチューブです。「ゆうこすモテちゃんねる」の登録者数は約47万人。再生数100万回を超える動画がゾロゾロ出てきます。内容はファッションやメイクなど。特にメイク動画は、ゆうこすが”ファーストペンギン”(先駆け)でした。
 メイク動画と言っても、特別なメイク技術を教えるわけではありません。ゆうこすがお気に入りのアイテムを紹介しながらメイクしていくだけです。そんなありきたりな動画が爆発的な人気を博しました。
 「メイクって学校では習わないじゃないですか。誰も教えてくれないけれど、社会人になったらちゃんとしなきゃいけない。私は雑誌を見て覚えましたが、雑誌は写真なので分かりづらいんです。同じように悩んでいる女の子はたくさんいるから、共感を得られたんだと思います。メイクは絵映えしますよね。可愛い子になりたい、ゆうこすみたいになれるかもしれないという再現性を提示してくれます」
 スマホが普及して、10秒あれば買いたい物を買える時代です。それと比べたら、テレビは「続きはCMで」と、なかなか先を見せてくれない。動画は倍速にしたり、飛ばすこともできます。場所を選ばず、電車の中でも動画を見ることができます。若い世代でユーチューブが盛り上がっているのは、そんな理由があります。
 しかし、ゆうこすは「需要と供給のバランスが取れていない」と指摘します。動画を見るのは楽ですが、作るのは大変です。カメラで撮影し、動画を編集する。ゆうこすは独学で始めましたが、挑戦できる人は少ないといいます。だから、
ライバルが少ないのです。

おじさんでもできる
 では、なぜゆうこすの人気が出たのでしょうか。インスタや動画で紹介した商品が同世代の女性の間に口コミで広がり、SNSで「ゆうこすが紹介していた」と拡散しました。ゆうこすは、秘訣をこう分析します。
 「私に共感ポイントがあったからだと思います。いくら顔が可愛くても、何も共感できない人から、これがいいですよと商品を勧められても買わないですよね。私はぶりっ子集まれと、ぶりっ子推しの共感を集めるような投稿をしたので、そもそもぶりっ子しか集まらないんです。同じ価値観を持っているひとたちが10人いれば、SNSで『ゆうこすに勧められたものを買ったよ』って書いてくれる。人を動かす一番の原動力は口コミだと思います」
 おじさんがSNSを始めても、誰も見てくれないのでは。そんな疑問にゆうこすは「おじさんでもできます」と断言しました。
 「大切なのは、自分を深く知ることです。私はニート時代にワクワクすることをずっとノートに書いていて、それを掘り下げていきました。自分が今、発信する理由を聞かれたら10秒で答えられるくらい、自分のことを知る必要があります」
 とはいえ、「ランチなう」では、よほどのイケメンか美女でなければ注目されることはありません。
 「私はぶりっ子というフィルターをかけると決めています。今、私、ランチ食べてます。そこのお店のメニューにはこういう成分が入っていて、すごくお肌に良くて、次の日もメイクのりもいいかもねと投稿すると、ぶりっ子からしても美容の観点からも、有益な情報になりますよね。自分なりのフィルターを決めて、自分の見る世界を全部情報にするくらいの気持ちが必要です」
 例えば、インスタやツイッターで用いられる「#都政新報」のようなハッシュタグにもコツがあります。
 「英語の『#fashion』って意味がないですよね。それで検索する人はいないです。誰に届けたいのかをより明確にしていくことが大切です。ターゲットをかなり細かく絞って、この人たちがどんな言葉でタグを検索するだろうかと想像を働かせます」

同じ価値観の人を集める
 SNSは匿名性が高く、炎上が怖いと思っている人も多いのではないでしょうか。最近はSNSでのちょっとした投稿をきっかけに炎上し、プライバシーまで暴かれる事件も後を絶ちません。でも、SNSで自己プロデュースしてきたゆうこすには、意外にも”炎上”騒ぎはほとんどありません。その理由はなんでしょうか。
 「とがっていること。私に何の取りえもなく、”ぶりっ子”という肩書もなく、自分の目標も軸もなかったら炎上してしまうと思います。『ぶりっ子集まれ』と人を集めて、『ぶりっ子って変だよね』って言ったらたたかれますよね。私の周りはぶりっ子好きしかいないので、炎上しないんです。同じ価値観の人しか集まらないので」
 かつてSNSは、ミクシィやフェイスブックのような仲間同士が「つながるSNS」が流行しました。でも、そこでつながり疲れた人たちは、ツイッターのような自分を物語の主人公とする個のSNSへと移行し、スマホの普及とともに爆発的に広がりました。しかし、最近はネットの攻撃的な空気や炎上を恐れ、オンラインサロンのようなクローズドなコミュニティーに人気が集まっています。
 ゆうこすが思い描くSNSの未来とは。
 「オンラインサロンがはやっていることからも分かるように、ミクシーのように小さな世界でグループを生むようなコミュニティーSNSが増えてくると思いますし、私自身、増えてほしいです。ツイッターやインスタはいつも炎上していて、実名は怖いですよね。匿名性があってつながれるあたたかいSNSが増えてきてほしいなと思います」
 かつて”売れっ子”と言えば、テレビのバラエティー番組や情報番組に引っ張りだこで、視聴者にウケのいいタレントでした。しかし、それはテレビが元気だったときの話。テレビという巨大メディアが衰退し、誰もが知りたい情報にアクセスし、情報を発信できる時代、SNSを通じて人生が変わり、多くの女性から支持され、信頼されるゆうこすの登場は、これから始まろうとしている新しい時代を象徴しているかもしれません。
 

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